■ラグビーワールドカップ2015観戦ガイド(3)

 9月18日にイングランドで開幕するラグビーワールドカップ(W杯)2015の決勝戦は、10月31日にロンドンのトゥイッケナム・スタジアムで行なわれる。「ラグビーの聖地」と呼ばれるスタジアムで頂点を極めた国・地域に与えられるのが、優勝トロフィーの「ウェブ・エリス・カップ」だ。予選を勝ち抜いて本大会に出場する20チームのなかで、このトロフィーを掲げるチームはどこなのか。

 優勝候補の筆頭はやはり、前回大会で2度目のW杯制覇を遂げた「オールブラックス」ことニュージーランド代表だろう。ブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』のオッズでは、断トツ1位の2.2倍。名将グラハム・ヘンリーが勇退し、アシスタントコーチのスティーブ・ハンセンが新たな指揮官になっても、その強さは変わらない。この4年間の成績は、47試合を戦って42勝2分3敗。ほぼ強豪としか対戦していないのに、9割近い勝率を誇っている。

 今大会のオールブラックスのメンバーを見ても、まったく隙が見当たらない。中軸には前回大会の優勝経験者がずらりと顔を揃え、総キャップ数は1484にものぼる。「世界最高峰のボールハンター」として知られるテストマッチ最多キャップホルダーのFL(フランカー)リッチー・マコウ主将を筆頭に、テストマッチ最多得点記録を更新中のSO(スタンドオフ)ダン・カーター、身長2メートルを超えるハードワーカーのLO(ロック)ブロディー・レタリック、総合力で完成の域に達しているNo.8(ナンバーエイト)キアラン・リードと、ワールドラグビー(前・国際ラグビー評議会)の年間最優秀選手賞を受賞した選手が4人もいるのだ。

 ただ、不安な点がないわけではない。まずは過去7大会のW杯優勝チームと開催地、そしてニュージーランド代表の成績を見てほしい。

開催年/優勝チーム(開催地)/ニュージーランド代表の成績
第1回@1987年/ニュージーランド代表(ニュージーランド&オーストラリア)/優勝
第2回@1991年/オーストラリア代表(イングランドetc.)/3位
第3回@1995年/南アフリカ代表(南アフリカ)/準優勝
第4回@1999年/オーストラリア代表(ウェールズetc.)/4位
第5回@2003年/イングランド代表(オーストラリア)/3位
第6回@2007年/南アフリカ代表(フランスetc.)/ベスト8
第7回@2011年/ニュージーランド代表(ニュージーランド)/優勝

 このように、ヨーロッパで開催されたW杯でオールブラックスは1度も決勝に駒を進めていない。完全なる「内弁慶」なのだ。

 優勝候補の筆頭だけに、予選プールCは難なく突破するだろう。ただ、一発勝負となる準々決勝がターニングポイントとなりそうだ。予選プールDを2位で突破すると予想されるフランス代表かアイルランド代表、彼ら欧州勢との対戦がひとつ目の山場となる。

 もちろん、ハンセン・ヘッドコーチ(HC)も前回大会の優勝メンバーだけに頼っているわけではない。W杯メンバーを選出するにあたり、バックスリー(※)にはWTB(ウイング)チャールズ・ピウタウ、FB(フルバック)コーリー・ジェーンと実績のある選手を選ばず、今年7月まで0キャップだった2選手を大抜擢した。今年のスーパーラグビーのトライ王で、ハイランダーズの優勝に貢献したWTBワイサケ・ナホロと、準優勝したハリケーンズのWTBネヘ・ミルナースガッターである。

※バックスリー=WTBとFBを合わせた総称。

 勢いのある彼らが初の大舞台で活躍すれば、過去のジンクスを跳ね返せるかもしれない。「内弁慶」を克服できれば、オールブラックスは史上初の「W杯2連覇」という栄光を手にすることになる。

 一方、開催国のイングランド代表はどうなのか――。ブックメーカーのオッズでは、2番人気の5.5倍の数字が付けられている。

 前回大会、イングランド代表は準々決勝でフランス代表に敗れた。キックの名手であり、2003年大会で優勝したときの立役者だったSOジョニー・ウィルキンソンは2011年に引退。そこで2012年から指揮を執るスチュアート・ランカスターHCは、選手を一新して若手を積極的に起用してきた。

 今回のイングランド代表のW杯メンバーを見てみると、平均年齢は約26歳、平均キャップ数も25前後、前回大会の経験者はわずか5人となった。過去のW杯優勝チームよりも低い数字のため、イングランド国内では若さと経験のなさを不安視する声もある。だが一方、指揮官には「メンバーを固定して戦ってきた」という大きな強みがある。

 FW陣は、激しいプレーでチームを牽引するFLクリス・ロブショウ主将を筆頭に、機動力のある左PR(プロップ)ジョー・マーラー、リコーでもプレーした経験を持つベテランFLジェームス・ハスケル、そして22歳ながら突破能力の高いNo.8ビリー・ヴニポラと、個性的なメンツばかりだ。BK陣も、判断力に長けたSH(スクラムハーフ)ベン・ヤングスと、ウィルキンソンの後継者と呼ばれるSOジョージ・フォード、さらにバックスリーにはWTBジョニー・メイ、アンソニー・ワトソン、FBマイク・ブラウンと、強さと速さを兼ね備えたランナーたちが揃う。

 母国で優勝するための第一関門は、オーストラリア代表、ウェールズ代表、フィジー代表と強豪国が集まった予選プールAを1位で突破することだろう。もし2位で通過することになると、予選プールBを首位で突破しそうな南アフリカ代表と準々決勝で当たることになるからだ。

 一方、1位で通過できれば、決勝までの7試合中6試合を、「ラグビーの聖地」トゥイッケナム・スタジアムで戦うことができる。はたしてイングランド代表は、地元ファンの熱狂的な声援を武器に頂点まで駆け上がることができるだろうか。

 もちろん、上記の2チームだけでなく、「ウェブ・エリス・カップ」を掲げそうなチームは他にもある。W杯優勝経験のあるオーストラリア代表や南アフリカ代表、最近好調のアイルランド代表、前回大会で準優勝したフランス代表など、今大会も予選プールから激しい戦いとなるだろう。

 あくまでオッズ通りにいけば、という前提だが、「総黒に銀のシダ」のニュージーランド代表と、「純白に赤のバラ」のイングランド代表が決勝戦の大本命。10月31日、両者は顔を合わせることになるのだろうか。8回目の「楕円球の祭典」でどんな結末が待っているのか、楽しみでならない。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji