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抜け毛や薄毛に悩みだすと、毎日の意識が頭髪にいきがちとなり、その人のQOLにも大きな支障が出かねない。では一体、どうすればよいのだろうか。

本稿ではメンズヘルスクリニック東京の院長で、精神科医でもある小林一広医師の解説をもとに、髪の毛が生えてくるメカニズムや、頭髪とストレスの関係について紹介する。

○髪が薄くなる原因は"髪の飛び級"

まず、髪の毛が生えてくるメカニズムについて知っておこう。

髪の毛は、皮膚の中に入り込んで外からは見えない「毛根」と、皮膚の外に出ている「毛幹」に大別できる。毛根の下部には「毛球」と呼ばれる部分があり、その底に髪の毛の生産拠点である「毛乳頭」がある。

毛球には髪の毛を成長させる「毛母細胞」が詰まっており、この毛母細胞が毛細血管から酸素や糖質などの栄養素を吸収する。毛母細胞は24時間ずっと細胞分裂を行っている。2個に細胞分裂すると、1個が次の細胞分裂に備えてその場にとどまり、もう1個が髪の毛になるという仕組みだ。

そして、新たに生えてきた髪の毛を含め、すべての髪の毛は「成長期」「退行期」「休止期」という「ヘアサイクル」を経て、再び成長期へと戻っていく。抜け毛が多い人は、このサイクルに問題があると小林医師は話す。

「一般的に髪の寿命(ヘアサイクル)は5〜6年ほどなので、毛髪を小学校に見立ててみましょう。頭には1年生から6年生に相当する髪の毛が均等に生えています。『6年生の髪の毛』が卒業する形で抜け落ちると、新1年生に相当する髪の毛が生えてきて、全体の毛髪量はある程度一定に保たれます。ところが、中には2年生からいきなり5年生になるように、『飛び級』をしてしまう髪の毛もいるんですね」。

髪の毛が太く長く育つためには成長期が長いほどよいが、「飛び級」によって成長期が短いヘアサイクルが続くと、次第に髪が細く短くなってしまう。男性型脱毛症(AGA)の場合、円形脱毛症のようにしばらく髪が生えてこないことはなく、きちんと髪は生えてくる。だが、その髪が太く長く育たずに、細く短くなる。そして次のヘアサイクルを経て、さらに細く短くなり、最後には産毛のようになってしまうというわけだ。

○ストレスが髪に影響を及ぼす明確な根拠はない

このヘアサイクルによる薄毛は加齢に伴うもので、悩む年代には個人差があると小林医師は話す。また、ストレスの影響については、「ないとは言えませんが、エビデンス(科学的根拠)はありません」と解説する。

「ストレスによって身体にいろいろな影響が出ることは、生理学的に言えます。例えば免疫力が落ちるとか、自律神経がアンバランスな状態に陥ってしまうとかですが、それらがどのように髪に悪影響を与えるかを証明したエビデンスがないのです。ただ、やはりそれらの症状が起きると、頭皮への血流が滞るとか代謝バランスが落ちるなど、髪に何かしらの影響は及ぼしているのではないでしょうか」。

加えて小林医師は、「何をもって『ストレス』とするかは非常に難しい」と断ったうえで、「ストレスにさらされた期間が何年も続けば、AGAを促進させる可能性はあるでしょうね」と話す。

○「薄毛」の医学的定義はない

ストレスが薄毛や抜け毛につながる可能性もあるし、その逆もしかり。頭髪が徐々に後退していくことをストレスと感じれば、さらに発毛に悪影響を及ぼす可能性も出てくるだけに、まさに「負のスパイラル」だ。

ただ、そもそも論として、「薄毛」という言葉の医学的定義はない。薄毛とは、「当人がどのように感じるか」という極めてあいまいで主観的な指標なのだ。小林医師の下にも、一般的に見れば十分髪の毛がある人たちが「薄毛で困っています」と訪れるという。

なるべく自らの毛髪を気にしないようにして、どうしても気になってしまったら、専門医に相談のうえで治療にあたるようにしよう。

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○記事監修: 小林一広(こばやし かずひろ)

医療法人社団ウェルエイジングメンズヘルスクリニック東京院長。精神保健指定医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク理事、特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー理事。北里大学医学部卒業後、同大学病院でメンタルヘルスケア中心の医療に従事。1999年新宿に城西クリニックを開院。精神科医として皮膚科医、形成外科医と共に心身両面からの頭髪治療に力を注ぐ。2014年東京・丸の内に移転し、メンズヘルスクリニック東京と名称を変え、男性の外見と内面を医療によってサポートするクリニックを立ちあげる。

(栗田智久)