朝ドラ「まれ」((NHK 月〜土 朝8時〜)9月14日(月)放送。第25週「秒読みコンクールケーキ」第145話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出: 一木正恵


145話は、こんな話


大悟(小日向文世)が能登にやって来た。陶子(柊子)から話を聞いて、希のケーキがどんなものなのかその目で確かめに来たのだ。

今日の、大悟


ここのところ、月曜日から飛ばしていた「まれ」。25週は、大悟がやってきてぴりっと緊張! ではじまり、能登の食で歓待される大悟、希や圭太(山崎賢人)にいろいろ語る大悟・・・とこれでもかと大悟回。
大悟は、希が昆布でケーキをつくったことに触発されたらしく、台所を借りて食材研究をしはじめます。希が子供の発想からアイデアをインスパイアされたと知ると子供にまでアプローチしていくどん欲さも。
大悟が魅力的なのは、自身の飽くなき探究心に徹底的に正直である一方で、希のことも心配していること。「自分のケーキを世界に問い続けろ」とはっぱをかけます。徹(大泉洋)の不在のことまで気にかけています。
お父さんのことを聞くと、すぐに話をコンクールに変えましたが、彼は、徹の「世界一になれ」という言葉を店に来たとき見ています(これ、台本にあるのか、演出なのか気になります)。よって、大悟のぶっきらぼうな物言いのなかに、いろんな気持ちが混ざっていることがわかる。こういう場面は気持ちが沸き立ちますね。

この大悟の希に対する深い情を理解しているのは文(田中裕子)。「ありがとえ」とひと言だけ、あとは肩を乱暴に強くたたきます。でもそれで充分伝わってきます。
もしかしたら、希のことだけではなくて、元治(田中泯)の塩に対する理解にも感謝していたのかもしれません。いずれにしても本質のわかる人間として大悟は描かれています。大悟を見てると、世界って外に拡大していくってことよりも、内面深くダイブしていくことのように思えるのです。

彼の内面を見つめると、彼もまた、あれもこれもどっちも抱えています。仕事一筋かと思いきや情熱的な恋愛も結婚も経験していて。「まれ」には希を筆頭にそういう人物ばかりたくさん出てくるのですけれど、小日向文世のその表現は格別です。例えば、あれとこれとそれを、コンビニで売っている個装パッケージのチョコのように、ミルクチョコ、ビターチョコ、アーモンドチョコみたいにわかりやすくひとつずつ分けて提示してしまうと、あれもこれもとどれを選ぶか迷ってしまうし、欲張って三種類買ってはみたものの、さほど変わらないざっくりした味わいで物足りない。ところが、ひとつの中にミルクとビターとアーモンドが混ざっているような贅沢チョコみたいに、口の中でいろんな味が顔を出すような演技を小日向はしています。小日向は、北野武監督映画「アウトレイジ」で、ずっとへらへらしていたひとが最後の最後で豹変する役をやって観客の度肝を抜きましたが、そういう一粒で何度も美味しい俳優なんですよね。

酸いも甘いも噛み分けて・・・じゃないですが、酸いも甘いも混ざっていることそこが「豊か」であり「世界」だって思わされるんです。田中裕子の文にもそれがあります。
土屋太鳳は、希がそこまで統合されていない未熟さを、欲望を意識的に切り分けることで表現しているんですね。
ここまでずっと、分裂させてきた欲望や感情が、この12回でいよいよぐぐーっと収束されていくのでしょうか。
まったり見えて実は、非常に重要なことが描かれている145話。一木正恵演出は丁寧にじっくり見せ、長く続いた物語をいよいよ終わらせていく覚悟を感じました。

今日の、つっこ「まれ」1


「(希の)貧乏臭いセンスもそのまんま」と大悟。
え、やっぱり、貧乏臭いんだ・・・お店に並んでたケーキ、貧乏臭くなかった気がするんだけれど・・・

今日の、つっこ「まれ」2


マキが東京に旅立つ時、長年着ていた仕事着を脱いで畳む。ちゃんと洗って返せーと思ったりもしますが、「いってきます」「いってらっしゃい」の感覚だから、これでいいのかな。

今日の、つっこ「まれ」3


元治、結局、塩田、引退してないんだ・・・。
(木俣冬)

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いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))