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今月9日に開催されたAppleのイベントは、iPhone 6s/ 6s Plus、iPad Pro、新世代のApple TV、Apple Watchの新色など、Mac以外の製品の発表会になった。Macにはまったく触れず、Mac関連の製品は例年どおり10月にMac関連のイベントで……と、期待しているMacユーザーは多いと思う。

だが、Appleウオッチャーの間で、Appleの今年の大きなイベントはこれで最後かもという予想が広がっている。今年だけ秋のイベントが1回なのか、それともスペシャルイベントの数を絞り込もうとしているのか、後者であるという見方が多い。あらゆる製品をスペシャルイベントで披露していたら、"スペシャル"イベントのありがたみが薄れてしまう。特に重要な製品を披露する場にすることで、Appleがアピールしたい製品にユーザーや消費者の目を効果的に惹きつけられる。

そうだとしたら、ホリデーシーズン向けの唯一のビッグイベントでAppleはMacにまったく触れなかったことになる。一昔前なら考えられなかったことだ。筆者のように、AppleがApple Computerであった頃からApple製品を使っていた人たちには、AppleはMacの会社というイメージが刷り込まれている。でも、昨年のホリデーシーズン(10〜12月期)の売上高は、iPhoneが512億ドル、そしてiPadが90億ドルだったのに対して、Macは69億ドルだった。どちらを事業の中心に据えるべきかは明白だ。

AppleがMacを軽んじ始めたと言いたいのではない。10月イベントを開催しなくても、AppleはOS X El Capitanのリリースを盛り上げるだろうし、ユーザーも盛り上がるだろう。ただ、限られた秋のスペシャルイベント枠の中でアピールする製品に、AppleはMacを選ばなかった。Macを売るのではなく、iPhoneを売り、iPhoneのハロー効果をうまく利用してMacの販売につなげる。PCメーカーの中で唯一Appleが今も好調な伸びを維持している理由の1つである。

○モバイルは移動中ということではない

ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzで活躍するBenedict Evans氏が公開した「Forget about the mobile internet」という手記がしばらく前に話題になった。「もうモバイルインターネットとは言わないで」という感じである。

そう呼びかけられているのは、主に筆者のようなデスクトップからPCを使ってきて、いつまでもデスクトップがPCやインターネットという意識が捨てられない世代である。性能に余裕があり、自宅や会社の高速なインターネット接続環境を利用できるデスクトップがホンモノで、移動中などのデスクトップを使えない時や場所で我慢して使うのがモバイルである。

しかし、今では自宅にいる時でも扱いやすいスマートフォンやタブレットでインターネットを使う人が珍しくない。Evans氏は「今日のモバイルは"移動中"という意味ではない。モバイルとは、いつでも誰もがインターネットにユニバーサルにアクセスできるユビキティ(Ubiquity)のことである」と指摘している。

若い世代には、PCを持たずに100%モバイル端末でインターネットを楽しむユーザーが増えている。例えば、Ofcomが英国で行っているコミュニケーション市場調査の「インターネットに接続する最も重要なデバイスは?」という質問に対する回答において、2015年はスマートフォンがトップになった。

そうしたユーザーにとってはデスクトップではなく、モバイルがインターネットプラットフォームである。「インターネットとモバイルインターネット」ではなく、「インターネットとデスクトップインターネット」なのだ。ユーザー規模を見ると、2020年にはPCの2〜3倍のスマートフォンが使われるようになる見通しだ。Webサイト開発やコンテンツ提供、SEOのこれからのチャンスがどこにあるのかは明らかだ。

今でもモバイルをインターネットのサブシステムと見なし、デスクトップ向けのWebサイトやサービスの軽量版として提供していたらどうなるか。TeaLeafが行った調査によると、企業のモバイルサイトについて、デスクトップサイトの体験と「同等」または「上回るべき」という回答が85%だった。モバイルだから簡素版で大丈夫という意識だったら、チャンスをつかめないどころか、ひどい体験を提供しているという批判を浴びかねない。モバイルでアピールし、その成果をデスクトップに生かすことがニューノーマルになろうとしている。

(Yoichi Yamashita)