9月にも実施される可能性のある米国の利上げによって、株式市場にはどんな影響があるのか。これまで国内小型株中心の運用で「R&Iファンド大賞」を4年連続で受賞した「ひふみ投信」の運用責任者・藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者)は、「内需の大型株の値動きに注意すべきだ」という。以下、藤野氏が解説する。

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 いま日本株を取り巻く環境に大きな転換が起き始めている。アベノミクスを機に2012年末から日本株は大きな上昇を見せてきたが、ここにきて肝心の安倍内閣の支持率が低下。高い支持率を背景に数々の政策を打ち出してきたアベノミクスも危うさが漂い始めている。

 海外に目を向けると、ギリシャ問題は落ち着きを見せているものの、中国市場の混乱は収まらず、米国の利上げも控えて、しばらくはポジティブな材料も出てこないだろう。

 それら国内外の要因を考えていくと、当面は日本株も指数全体が大きく上がる状況ではないと見ている。

 特に厳しいと見られるのが、円安を追い風にこれまで相場を牽引してきた外需の大型株だ。為替もここまで円安に振れてくると、さすがにここからの一段安は考えにくい。何より中国の景気減速で需要が弱まっている自動車や機械、建設機械などのセクターは懸念材料が山積みとなっている。

 一方で内需はどうかというと、設備投資は更新需要で堅調、消費もさほど悪くない。まして国内景気が傾こうものなら、補正予算や日銀の追加金融緩和「黒田バズーカ第3弾」まで予想されるため、今後も堅調と見ていいだろう。

 ただ、内需の大型株にはある大きな問題が潜んでおり、この先、注意が必要となりそうだ。内需の大型株に何が起ころうとしているのか。順を追って説明したい。

 これまで世界的な低金利が続くなか、債券主体で運用する国内外の債券ファンドマネージャーは、金利だけではパフォーマンスを上げられなくなり、債券に類似するような高配当で値動きの小さい株式に目を向けるようになった。自分たちの主戦場ではない株式市場にこぞって参戦してきたのだ。

 このような価格変動リスクを抑える投資手法を「最小分散投資」というが、それによって世界中で食品や薬品といった、いわゆるディフェンシブ銘柄に買いが集中。彼らの資金量は株式ファンドをはるかに上回るため、国内ではそれまで目立った値動きのなかったエーザイやアステラス製薬などの薬品株、JTやキッコーマンなどの食品株が大きく上昇した。特に今年前半は、とてもディフェンシブとはいえないほど派手な値動きを見せてきた。

 問題は、ここから先である。本来、債券市場を主戦場にしてきた彼らは、金利が上昇すれば債券に回帰して、最小分散投資から手を引く可能性が高い。そのきっかけとなるのが、米国の利上げにほかならない。米国の金利が上昇してくれば、全世界の債券ファンドマネージャーがこれまでさんざん買い上げてきたディフェンシブ銘柄を投げ売りし、暴落の恐れすら出てくるのである。

 すでにその兆候は6月くらいから見え始めており、いざ米利上げが実施されれば、一気に株価が急落する可能性もあるので、くれぐれも注意しておきたい。

※マネーポスト2015年秋号