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九州大学はこのほど、マウスをモデル動物として妊娠前糖尿病が胎児に先天性心疾患を引き起こすメカニズムを解明したと発表した。

同成果は同大学大学院医学研究院の目野主税 教授、蜂須賀正紘 医師らの研究グループによるもので、9月8日に「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。

これまでの研究から、妊娠前糖尿病が胎児・新生児に対し、臓器形態の左右非対称性の異常である内蔵錯位を伴う先天性心疾患の発症リスクを増大させることが知られている。臓器の左右非対称性は、胚発生初期に形成される左右軸によって確立されることから、今回の研究ではマウス糖尿病モデルおよび全胚培養によって糖尿病が左右軸・心臓形成に与える影響を解析した。

解析の結果、糖尿病雌マウスでは、最初の左右非対象形態形成である心臓ルーピングなどの左右性が逆転した胚が出現し、臓器の左右情報に関わるPitx2という遺伝子の胚左側の発現が消失していた。Pitx2発現消失は、左側臓器形態の右側化および先天性心疾患につながることが知られている。

さらに、左右軸異常に至るメカニズムを解析するため、グルコースを高濃度に添加した培養液で高血糖状態のマウス胚を発生させた結果、この高グルコース胚では、左右軸情報が生み出されるノードという構造におけるNodalという遺伝子の活性が激減していた。NodalはPitx2を誘導する遺伝子であるため、その活性が抑制されることが、左右軸形成異常に至る原因であることがわかった。また、Nodalなどの発現を誘導するNotchシグナルも抑制されていたことから、高グルコースは左右軸形成期のNotchシグナルを抑制し、これが妊娠前糖尿病における先天性心疾患を伴う内蔵錯位発症の一因になっている可能性があると考えられるという。

同研究グループは「本研究から、ヒトにおいても血糖値の逸脱が一過的であっても先天性心疾患が発生する可能性が示唆されます。また、妊娠前糖尿病では様々な種類の先天異常の発症リスクが高まることが知られていますが、その原因の多くは不明のままです。本研究の知見が、他の局面における高血糖の作用を解明する糸口となり、妊娠前糖尿病における先天異常の予防につながることが期待されます」とコメントしている。