厳選!2歳馬情報局(2015年版)
◆第16回:ラベンダーヴァレイ

 現役時代に活躍した名馬が、引退後に父や母となって、活躍馬を輩出することは珍しくない。片や、現役時代に際立った活躍ができなかった馬でも、父や母となってから名馬を輩出することがある。まさにそれは"競馬の不思議"であり、醍醐味と言えるだろう。

 そんな"競馬の不思議"を体現する繁殖牝馬がいる。クロウキャニオン(牝/父フレンチデピュティ)だ。

 クロウキャニオンは、2004年9月にデビュー。2005年6月まで現役としてレースに参戦していたが、その間に挙げた白星は、わずかにひとつ。決して満足いくほどの活躍は見せられなかった。

 だが、引退して繁殖牝馬となると、一転して脚光を浴びることとなった。彼女の産んだ子が、目覚ましい活躍を見せたのである。

 クロウキャニオンの子は、これまでに6頭がデビューし、すでに2頭が重賞ウィナーとなっている。その一頭は、2008年生まれのボレアス(牡7歳/父ディープインパクト)。同馬は、2011年のGIIIレパードS(新潟・ダート1800m)で重賞制覇を遂げた。さらに、地方交流GIのジャパンダートダービー(大井・ダート2000m)でも2着に入るなど、ダート戦線で能力を見せている。

 もう一頭の重賞ウィナーは、2010年生まれのカミノタサハラ(牡/父ディープインパクト)。こちらは、2013年のGII弥生賞(中山・芝2000m)を制して、一躍クラシック候補に名乗りを挙げた。そして、クラシック本番となったGI皐月賞(中山・芝2000m)でも、4着と奮闘した。

 重賞勝ち馬はこの2頭だが、それ以外の子たちも、多くがオープンクラスで活躍している。2009年生まれのマウントシャスタ(牡6歳/父ディープインパクト)は、2012年のGIII毎日杯(阪神・芝1800m)で2着と好走。その後、3歳時に挑んだ宝塚記念(阪神・芝2200m)では、古馬相手に5着と健闘した。

 また、2011年生まれのベルキャニオン(牡4歳/父ディープインパクト)は、2014年のGIII共同通信杯(東京・芝1800m)で2着。ダービートライアルのプリンシパルS(東京・芝2000m)を勝って、日本ダービー(8着。東京・芝2400m)へと駒を進めた。クロウキャニオンの子たちは、そのほとんどが重賞戦線で上位争いを演じてきたのである。

 となると、今年デビューする彼女の子にも、当然注目が集まる。偉大な母を持つその馬の名は、ラベンダーヴァレイ(牝2歳/父ディープインパクト)。クロウキャニオンにとって、7番目の子となる。

 ラベンダーヴァレイの育成が行なわれたのは、ノーザンファーム早来(北海道)。同馬を担当した野崎孝仁氏は、春の取材の時点で、血統に違わぬ資質を感じていたという。

「血統的にも期待していますし、実際に乗ってみても質の良さを感じますね。走っているときも、背中がブレず、スピードが豊かです。平均点が高いという印象で、楽しみな馬ですね。育成においても、順調にメニューをこなしてくれました」

 育成の動きからも、今後が楽しみになるラベンダーヴァレイ。なお、同馬の馬体や性格については、こんな特徴があるようだ。野崎氏が続ける。

「馬体は小柄ですが、それでもよくここまで成長してくれたと思います。育成を始めたときは、かなり小さかったですからね。性格面については、わがままなお嬢様という感じです(笑)」

 ラベンダーヴァレイは、すでに栗東トレセンの藤原英昭厩舎に入厩。精力的な調教を行なっており、デビューへの態勢は整いつつあるようだ。

 繁殖牝馬となって、たぐい稀(まれ)な輝きを放っているクロウキャニオン。ラベンダーヴァレイは、その母の新たな活躍産駒となれるのか。そして、いまだ兄姉が届いていないGIタイトルを手にすることができるのか。多くのファンが注目する"お嬢様"への期待は膨らむばかりだ。

河合力●文 text by Kawai Chikara