開幕3連勝でバイエルンを抑え首位に立つドルトムントが、1分2敗のハノーファーへ乗り込んだ一戦は4−2で決着。ドルトムントは連勝を4に伸ばした。

 そう聞けば、ドルトムントの完勝を想像したくなるが、現実は違った。ホームのハノーファーが戦術と勢いで序盤はドルトムントを圧倒した。「1点入るまでは理想的な展開だった」と、酒井宏樹が胸を張ったほどだ。

 一方、香川真司は「確かに嫌な感じはした」と明かす。だが、そのまま崩れてしまわないのが、今季公式戦9戦全勝の自信だろう。前半のうちに逆転。後半、一旦は追いつかれたものの再び引き離した。「勝てたことが一番」と香川は素直に安堵の気持ちを語った。

 ハノーファーはドルトムントに合わせて4−3−3の布陣で中央を固めた。ドルトムントの攻撃は中央からいっては跳ね返された。そしてハノーファーのカウンターは、この日復帰した清武弘嗣を中心としたもので、攻め込んだドルトムントの裏を狙い続けた。前半18分の先制点は、清武が中盤で巧みに相手をかわして出した長いスルーパスから生まれた。

 酒井は清武の存在感を「ゲームを作れる選手が入って、1本のパスで点が入るっていうこともあり得る」と表現した。ハノーファーのフロンツェック監督も「(普段は個人には言及しないが)復帰した清武については特に触れておきたい。あのパスで彼の質の高さを見せてくれた」と、称えた。スピードだけのカウンターにならない、清武の技術と判断。今季から背番号10を背負う気概がこの日のチームを支えた。

 だがドルトムントは先制されても攻撃の手を緩めなかった。中がダメならサイドと、時間とともに攻め方を見つけ出す。「3ボランチ気味で僕たちをはめてきたので、普段と違うのかなという感じはしたんですけど、両サイドバックが高い位置を取って、サイドの選手を生かす動きを意識しました」と、香川が説明する。

 前半終了間際の逆転ゴール。中央のミキタリアンが右サイドを駆け上がるギンターに展開。ギンターは相手が7人で守るペナルティエリアを確認すると、ペナルティエリア前のミキタリアンに戻す。ワンバウンドしたボールを、ミキタリアンはダイレクトで強烈なシュート。香川の説明通りに得点が決まっている。

 ドルトムントの攻撃陣の印象が昨季までとは違うと、酒井は語る。

「やっぱり攻撃に厚みがありますからね。セカンドボールに対して、常に2人でカバーリングしている。そこで拾って2次攻撃、3次攻撃につなげる。あとはシンジ君とギュンドアン。その2人がいつも空くようにボールポゼッションしているので、なかなかつかみきれなかった」

 後半の2得点は、ともに香川が起点になった。酒井が「ずっとビデオで研究してきた」と言う、香川が左サイドから斜めに入れるパスから生まれたチャンス。3点目は相手のオウンゴールを誘い、4点目は相手ディフェンスのハンドでPKを得た。

「あれ(斜めに入れるパス)がこういう相手にはチャンスになると思っていたので。前半から開いていろと言われていたし、うまく得点につながった。自信になる」と、香川はしてやったりという表情だ。

 もちろん、攻めのパターンはこれだけではない。「ここ2試合、ああいった形で得点を取れているから、相手も研究してくるとは思う。次はレーバークーゼンですし、欧州リーグはさみますけど、しっかりプランを練って練習したい。同サイドで崩せるコンビネーション、意識でやっていかないと」(香川)

 香川は試合終了間際に退いたが、トゥヘル監督からはハイタッチや抱擁の代わりに、軽いキックを見舞われた。

「よくやったっていう(意味)。信頼を感じますし、しっかり応えたい」と香川は笑った。取材後は珍しく取材エリアに座り込み、モニターを眺めるなど、リラックスした表情で清武と酒井を待った。2人がやって来ると、しばらく談笑していた。

 かつての自分を取り戻し、さらに一歩、その先へ成長できる。今の香川はそんな自信に満ちているように見えた。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko