【9月特集 優勝か? 失速か? 阪神タイガースの秋(2)】

 2003年、阪神タイガースは18年ぶりのリーグ優勝。「カーネルサンダースの呪い」から解放され、長く続いた「阪神暗黒時代」に終わりを告げたのだった。1年おいて再びリーグ優勝を果たし、「黄金時代の到来や」と思われたのが2005年。それから10年の歳月が流れ、今、再び阪神に不吉な伝統がささやかれつつある。

「9月、10月に失速する阪神」「秋の大一番に弱い阪神」がそれだ。

 阪神の失速は、本当に「秋の風物詩」なのか。今年で創設80周年となるチームの歴史を眺めてみたのだった。

■1973年(金田正泰監督) 阪神はマジック1が点灯するも、最後の2試合(中日、巨人)に連敗。優勝を逃す。特に10月22日の、勝ったチームが優勝という巨人との最終戦(甲子園球場・観衆48000人)に0−9の大敗。あまりの不甲斐なさに怒り狂ったファン1500人がグランドへなだれ込む後味の悪い試合となるのだった。

■1992年(中村勝広監督) 2年連続最下位のチームに、亀山努と新庄剛志が新鮮な空気を吹き込んだ。だが、チームは9月を9勝8敗1分けとして首位で終えるも、10月を3勝6敗と最後に息切れ。優勝したヤクルトから2ゲーム差の2位でシーズン終了。

 実は、2000年以前の「秋の失速」はこのくらいしかない。その理由は「暗黒時代」が長く続いたことで、「秋になる前から失速していた」ケースが多かったためと思われる。暗黒時代を抜け出し、2000年代中盤に入ると、最初は「秋に強い阪神」なのだった。

■2005年(岡田彰布監督) 阪神黄金時代到来を告げるシーズン。4番に金本知憲が座り、エースは井川慶、そしてジェフ・ウィリアムス、久保田智之、藤川球児の「JFK」。8月を首位で終えるも、2位中日とのゲーム差は0.5という接戦。しかし、9月、10月に19勝6敗という圧倒的強さを見せ、最終的にはセ・リーグを独走しての優勝。

■2006年(岡田彰布監督) 8月時点で首位中日に7ゲーム差の2位も、9月、10月を22勝6敗という驚異の追い上げ。結局3.5ゲーム差で優勝は逃すもチーム力の高さを見せた。


 がしかし、翌年から阪神の「秋の様子」が怪しくなってくるのである。


■2007年(岡田彰布監督) 8月30日から9月9日にかけて、守護神・藤川の10連投で10連勝。チームは巨人との最大12ゲーム差をひっくり返して首位に立つ。しかし、9月19日から、藤川が2試合連続セーブに失敗するなどで痛恨の9連敗。結局、この9連敗が大きく響いて3位に終わる。

■2008年(岡田彰布監督) 7月終了時点では、2位巨人に9.5ゲーム差をつける独走。しかし、9月、10月に13勝16敗2分と負け越し。巨人に大逆転を食らって2位で終戦。

■2009年(真弓明信監督) 9月、10月を17勝15敗で勝ち越すも、クライマックスシリーズ(CS)進出のかかった、ヤクルトとの最後の直接対決2連戦で連敗。大一番に勝ちきれず、4位でシーズンを終えることとなった。

■2010年(真弓明信監督) 城島健司とマートンが加入し、打線に厚みが増す。9月にマジックが点灯するも、最後の2ヶ月を15勝13敗1分と勢いに乗り切れず。優勝した中日に1ゲーム差をつけられての2位に終わる。

■2013年(和田豊監督) 藤浪晋太郎が入団。藤川はメジャーへ、金本、城島が現役引退。
チームは2位でシーズン終了するも、9月、10月に10勝18敗2分と大きく負け越し。

■2014年(和田豊監督) この年も2位で終了するも、9月、10月は13勝13敗だが、9月9日からの巨人3連戦で痛恨の3連敗、その前の中日戦でも3連敗しており、この6連敗で優勝は絶望的となるのだった。

 科学的根拠はなくても、これだけの例が並べば「阪神は秋に失速する」と思わずにはいられない。しかも、CSは5回進出で4度のファーストステージ敗退(唯一の例外が2014年の勝ち上がり)。日本シリーズも6度出場の中で、日本一となったのは1985年の1回きりなのである。

 さて、今シーズンである。阪神はここまで首位を守り続けてきたが、9月の成績は4勝3敗で、ついにヤクルトと同率で並んだ(9月10日終了時)。さらに、この先の日程はかなり厳しいものとなっている。ヤクルトと3試合、3位の巨人と3試合、今季苦手としている広島と7試合も残っているのである。さらに、9月18日からは12連戦が待っている。連戦中、甲子園での試合は4試合だけ。当日移動の試合も多く、広島に大きく負け越せば4位転落もある。10年ぶりのリーグ優勝へ向かう阪神の9月、10月の戦いから目が離せないのである。

 最後に、阪神が黄金期に突入したと思われた時期に話を聞いた、古くからの阪神ファンの声を書き残しておきたい。

「弱いときは『今年こそ優勝』とお題目みたいに言うてたけど、毎年優勝やったら飽きる。夢は夢のままがええと思うんです。人間、ほとんど成功しないですやん。それとタイガースがオーバーラップするから、好きなんですわ」

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
photo by Kyodo News