クリスティアーノ・ロナウド【写真:Getty Images】

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6得点も支配率、パス本数では下回ったマドリー

 リーガエスパニョーラ第3節、レアル・マドリーはアウェイでエスパニョールと対戦して6-0と快勝。開幕2試合ノーゴールで「スランプ」とされていたクリスティアーノ・ロナウドは5ゴール1アシスト。周囲の喧騒を黙らせる結果を出した。

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 リーガ開幕から2戦、ポルトガル代表も合わせて計5試合583分間ノーゴールという状況を地元メディアに「スランプ」とされたクリスティアーノ・ロナウド。

 しかし、そういった周囲の喧騒を黙らせるための時間は20分を必要としなかった。

 コルネジャ・エル・プラット第3節、試合開始早々にボールを持ったのはホームのエスパニョールだったが、6分に先制点を決めたのはクリスティアーノ・ロナウド。モドリッチからのロングパスで抜け出して今季リーグ戦初得点を挙げた。

 その後は16分にベイルが得たPKを決めて2-0、20分にはベイルのクロスに合わせてハットトリック、27分にはベンゼマのゴールをアシストして4-0、61分にもベイルのアシストで決めて5-0、さらに80分にも決めて6-0。

 1試合で5ゴール1アシストを叩き出し、全6得点に絡む圧巻の活躍を披露した。

 この試合のスタッツを見ると、シュート数はエスパニョールの14本に対してマドリーは15本、チャンスメイク数は10回:10回、1対1の勝利数も16回:16回のタイ、さらに支配率ではエスパニョールが57.6%とマドリーを上回る数字を残した。

 それでも結果はマドリーが6-0で圧勝。通常、大量点を奪う試合では支配率が勝利チームに偏る傾向があるが、この試合では逆。つまり、この試合はマドリーのカウンターが機能した展開ということ。それは得点シーンを見ても明らかだった。

 そして、そのカウンターの中でこそ力を発揮できるのがクリスティアーノ・ロナウドである。

少ないボールタッチで効率の良さを発揮したロナウド

 終生のライバル、バルセロナのリオネル・メッシとともに年間50ゴールも不可能ではない常人離れしたゴールゲッターだが、メッシはポゼッションで力を発揮する選手。この2人は全く真逆のタイプといえる。

 それは、2人の武器でもあるドリブルのスタイルからも見て取れる。メッシが技術を駆使してキープしながら相手DFを切り裂くのに対して、ロナウドは爆発的なスプリント能力を駆使して直線的に突破するタイプ。

 ロナウドのようなスピードとパワーがあり、より多くのスペースがあってこそ輝ける選手にとっては敵陣に相手を押し込んでプレーするよりも素早い縦への攻撃の方がやりやすいだろう。

 例えば、5-0で勝利した前節ベティス戦。この試合では、マドリーが68.1%の支配率を記録し、パス本数でも556本:219本と大きく上回った。

 その中でロナウドは57回のボールタッチで39本のパス。6本のシュート、3本のクロス、1回のチャンスメイクを記録したが無得点。コンディションの悪さも重なり、得点を決めたベイル、ベンゼマ、ハメスの3人から遅れを取っていた。

 そして代表戦による中断が明けたこのエスパニョール戦では、前述のようにチームは支配率で下回り、パス本数でもホームチームの418本に対して379本と若干ながら劣っていた。

 ロナウドも41回のボールタッチで29本のパスと前節を下回る数字。それでもシュート数は7本、クロスは3本、チャンスメイクは3回を記録。そして7本のシュートで5得点を挙げ、3度のチャンスメイクで1つのアシストと、“効率の良さ”を発揮した。

昨季、低支配率の6試合で9得点を挙げる

 さらに昨シーズンの戦いを振り返ってみても、「カウンターアタッカー、クリスティアーノ・ロナウド」はデータに表れていた。

 昨シーズン、マドリーが支配率で下回ったのはリーガとCLを合わせた全50試合中6試合。

 その内訳は、14年10月25日ホームのバルセロナ戦46%(2-0勝)、11月8日ホームのラージョ戦46%(5-1勝)、12月6日ホームのセルタ戦48%(3-0勝)、15年3月10日ホームのシャルケ戦47%(3-4負)、3月22日アウェイのバルセロナ戦49%(1-2負)、4月8日アウェイのラージョ戦47%(2-0勝)だった。

 バルセロナはまだしもラージョを相手に2試合とも支配率で下回ったのは意外だが、ロナウドはこの6試合で順に1得点、1得点2アシスト、3得点、2得点、1得点、1得点1アシストの計9得点3アシストを記録。1試合平均得点は1.5点となり、支配率で上回ったその他の41試合の平均得点1.2点を上回った。

 もちろん、カウンター=低い支配率というわけではなく、ロナウド自身も支配率で大きく上回った試合で複数得点を挙げることも多々ある。一方で支配率の高いチームでも試合の中でカウンターを繰り出すシーンも存在する。

 また、ロナウドはメッシあるいはイブラヒモビッチのように組み立てにも絡むタイプではないため、場合によっては孤立する場面もある。よりアシスト役の存在が重要となるタイプともいえる。

ベイルとの関係性が重要に

 マドリーの中盤の陣容を見ると、モドリッチ、クロース、コバチッチ、カゼミーロの4人。このうち、守備に特徴を持つ選手がカゼミーロだけという状況には批判的な意見もあるが、モドリッチ、クロース、コバチッチと世界トップクラスのパスセンスを持つ3人のうち2人が組めば、より多くのボールをロナウドに配給できる。

 そういった意味では、この陣容は攻撃的なスターをかき集めたというだけでなく、ある程度ビジョンを持って獲得したことがわかる。

 さらに重要なのは、今季からトップ下として起用されるベイル。開幕前からロナウドとベイルの確執が伝えられ、ベイルは精神科への通院を余儀なくされているとの報道もあるが、このエスパニョール戦では2アシストに加えてPKを奪取。ロナウドの5得点中3得点を生み出した。

 周囲が献身的な姿勢で支えることこそ、ロナウドの爆発的な得点力を引き出すための第一条件なのだろう。

 マドリーもロナウドも巨大すぎるが故にネガティブな報道をされるのは避けて通れないが、選手の長所を引き出すことに定評のあるベニテス監督の下での今季は明るい兆しがあると言えるだろう。

 もっとも、それもシーズンの最後にビックイアーを掲げていなければ今季で終わってしまうことだが…。

text by 海老沢純一