日本ではまだまだ少ない減量手術 shutterstock.com

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2型糖尿病に対する減量手術の効果は、これまで複数の研究で報告されているが、今回、その効果は薬物療法に優り、しかも長期にわたる管理に有用な可能性が新しい研究で示された。

 この研究は、英ロンドン大学キングスカレッジのFrancesco Rubino氏らが、53人の肥満を合併した2型糖尿病患者を対象に行ったもので、対象を(1)胃バイパス手術群と(2)胆膵路転換手術群、(3)標準的な薬物療法群の3群にランダムに割り付けて臨床転帰を5年間追跡した。

 その結果、2つの減量手術群に割り付けられた38人中19人で糖尿病寛解が5年後も維持されていたが、薬物療法を受けた15人では寛解維持例は1例も認められなかった。

 また、糖尿病の完全寛解に至ったかどうかにかかわらず、2つの減量手術群では薬物療法群に比べて血糖値が低い傾向がみられた。同様に、両手術群では糖尿病や心疾患治療薬の服用量が少なく、心筋梗塞や脳卒中、腎疾患などの糖尿病関連合併症リスクも小さいことがわかった。

 なお、両手術群で死亡例はなく、長期にわたる合併症もみられなかったという。この知見は、「Lancet」9月5日号に掲載された。

 Rubino氏は、「減量手術の臨床的な意義は、インスリンや他の糖尿病治療薬の必要量を大きく低減できたことにあり、これは2型糖尿病治療における減量手術の費用対効果が優れていることを意味する」と指摘している。

論文や報告の多い減量手術の優位性

 今回と同様の結果は過去にも報告されている。「JAMA Surgery」に2015年7月号掲載の研究では、減量手術が食事療法や運動療法単独よりも肥満合併2型糖尿病の管理に優れていることが示された。また、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に2014年掲載の研究では、減量手術を受けた肥満患者では2型糖尿病発症リスクが低下すると報告されている。

 遡って2012年のNew England Journal of MedicineにはBMIが35以上の高度肥満の2型糖尿病患者60人を対象に、薬物療法と減量手術の血糖コントロール改善効果を無作為化試験で比較した結果、2年後の糖尿病寛解率は薬物療法群が0%だったのに対し、胃バイパス術群では75%、胆膵路転換手術群で95%とする研究か掲載されている。
Mingrone G et al.Bariatric Surgery versus Conventional Medical Therapy for Type 2 Diabetes.March 26, 2012 (10.1056/NEJMoa1200111).

 しかし、Rubino氏は、今回の研究について、「減量手術の効果が長期間にわたって維持できることを示した初めてのもの」と強調。米クリーブランドクリニック(オハイオ州)のPhilip Schauer氏(本研究には参加していない)も、「糖尿病治療において、減量手術と薬物療法の効果を検討した初のランダム化比較試験だという点で意義がある研究だ」と述べている。

 なお、減量手術群では薬物療法群より減量幅が大きかったが、この減量幅だけでは糖尿病寛解の予測はできなかったことから、Rubino氏は、「減量手術のベネフィットは減量効果だけによるものではないことを示唆している」としている。

医療経済的な視点の導入も不可欠

 一方で、侵襲的な手術にはリスクが伴い、その費用は2万〜2万5,000ドル(約240〜300万円)と推定される(米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所:NIDDK調べ)。こうした事実を踏まえてもなお、減量手術は長期にわたる糖尿病管理に有用な可能性が示されたことから、Schauer氏は「糖尿病治療の選択肢として肥満手術を積極的に検討すべきだ」と述べている。

 男性の16.2%、女性の9.2%が糖尿病有病者(2013年国民健康・栄養調査)であるわが国にとっても、大規模な調査や研究によって検証するに値するテーマではないのか。
(文=編集部)