予想外の方法で地球を攻撃


自転車に乗った主人公の少年サムが住宅地を走っている。街に新しいゲームセンターができたんだ! 親友ウィルを誘って遊びにいこう。こいつは太っちょだけど愉快なやつだ。ふたり並んで自転車をぶっ飛ばす。コインはたっぷりある。

バックに流れる音楽はチープトリックの『サレンダー』。最高にゴキゲンなロックンロールだ!

ゲームの腕前なら世界一を自負するサムは、NASA主催のゲーム大会に出場する。あらゆるゲームでハイスコアを叩き出し、順調に勝ち進んでいく。決勝戦のゲームは『ドンキーコング』。対戦相手としてあらわれたのは、自称ファイアーブラスター(火炎噴射男)こと、エディだ。しかし、努力の甲斐なくサムは敗北した。サングラスの奥で勝ち誇った笑みを浮かべるエディ。

ビデオゲームの勇者たちの戦いを記録したビデオはロケットに積み込まれ、人類の偉大な文化資料として宇宙へと打ち上げられた。だが、このことが33年後の地球に重大な危機をもたらすことになる──。


映画『ピクセル』は、2015年に突如として地球に飛来してきた異星人との戦いを描いた物語だ。これまでにも『宇宙戦争』『インディペンデンスデイ』『ロサンゼルス決戦』『スカイライン ─征服─』『バトルシップ』など、地球侵略を題材にした映画は数多く作られてきた。それらに登場する異星人や彼らの使いこなす兵器はどれもグロテスクで、途轍もなく大きく、暴力的だ。

ところが、『ピクセル』の異星人は予想外の方法で地球を攻撃してくる。予告編を見た方はすでにご存知だろう、80年代に世界中でヒットしたビデオゲームの『ギャラガ』だ。ゲームで表現されていたあの動きのままに、昆虫型の戦闘機が波状攻撃を仕掛けてくる。他にも『パックマン』『アルカノイド』『センチピード』『ドンキーコング』という見慣れたゲームが続々登場する。


ロケットに納められていたゲームの映像を地球人からの宣戦布告だと勘違いした異星人は、様々なゲームキャラクターの姿を借りて人類に襲いかかる。敵キャラクターに接触されると、高層ビルだろうが自動車だろうが、みんなキューブの屑となって砕け散る。歴史的建造物だってひとたまりもない。まさに侵略者。まさに『スペースインベーダー』。これは地球の危機だ!


さあ、そこで登場するのが、かつてのゲーム戦士たちだ。冴えない中年オヤジとなったサムは女房に逃げられ、家電の修理業で日々の暮らしをつないでいたが、ゲームの腕を買われて政府の異星人迎撃チームに駆り出されてしまうのだ。

軍の精鋭チームでさえも歯が立たない敵を、サムたちは軽々と撃破してゆく。ゲームの攻略法を知り尽くしていれば、異星人など恐るるに足らず! サムと同じく、ゲームに熱中していた過去のあるゲーセン野郎には、なんとも胸熱でたまらない展開だ。

岩谷徹さん登場!


昔、得意だったゲームの腕前など、大人になったらなんの役にも立たない。そう思って落ち込んでいたサムが、地球を救うために『ドンキーコング』の舞台に飛び込んでいく。過去の英雄は埃をかぶった置物じゃない。かつてはゲームのヒーローだった者が、本物のヒーローになる瞬間だ!


この映画に出てくるのは、80年代のアメリカで大ヒットしたゲームばかりだ。だけど、その大半は日本製のものだったりする。それがまたがなんとも言えず誇らしい。『パックマン』においては、その生みの親である元ナムコの岩谷徹さん(演じているのはデニス・アキヤマという日系俳優)まで登場するのが痛快だ。


世の中にはゲームなんぞにまるで興味のない人もいるだろう。その一方で、ゲームを愛してやまない者もいる。エンドロールを見つめながら、ぼくは心の中で「ああ、ゲームが好きでよかった!」と、何度も叫んでいた。
(とみさわ昭仁)