2015年シーズンのNFLがいよいよ幕を開ける。今シーズンも例年に違(たが)わず混戦が予想されているが、最後に栄冠を掴めるかどうかのカギを握っているのは、特別な能力・才能を持つ「ディファレンス・メイカー(違いを生む選手)」の存在ではないだろうか。

 他の選手と一線を画するディファレンス・メイカーたちは、「究極のチームスポーツ」と呼ばれるアメリカンフットボールの世界でも、勝負を分ける重要な「個」として注目度は高い。今シーズン、注目されている「ディファレンス・メイカー」を紹介しよう。

 まず、最初に名を挙げねばならないのは、グリーンベイ・パッカーズでQB(クォーターバック)を務めるアーロン・ロジャースだろう。パス攻撃全盛の時代になって数年が経ち、スーパーボウル王者に4度輝いたトム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツ)や、シーズンMVP通算5度受賞のペイトン・マニング(デンバー・ブロンコス)など、錚々たるメンツがひしめき合うポジションだが、QBとしてのトータル能力においてロジャースが最高の選手であることは、ほとんど疑いの余地がない。

 強肩、パスの正確さ、パスラッシュをかいくぐる機動力、そして冷静さ......。ロジャースはQBに必要な要素をすべて兼ね備えている。そのなかでも特筆すべきは、リリースの速さだろう。パスターゲットにロックオンするやいなや、小さなモーションからすかさず鋭いパスを投げ込む技術は、NFLで最も優れた武器とさえ言われている。

 2013年にペイトン・マニングが樹立したNFLシーズン記録「パス獲得5477ヤード」「55TD(タッチダウン)パス」という数字はとてつもなく高いものだが、これらを脅かす存在がいるとしたら、ロジャースを置いて他にない。ロジャースのベストパスターゲットであるWR(ワイドレシーバー)ジョーディ・ネルソンが故障によりシーズン全休となってしまったが、ロジャースの技量があれば優勝争いに大きく影響することはない。今シーズンも間違いなく、MVP候補の筆頭である。

 そしてもうひとり、QBで「ディファレンス・メイカー」を挙げるならば、インディアナポリス・コルツのアンドリュー・ラックだろう。今シーズンは彼にとって、飛躍の年となるかもしれない。昨シーズンは自己最高のパス獲得4761ヤードをマークしたが、シーズン中盤まではマニングの年間パス獲得記録を破るペースだった。プロ入りから3年で順調に成長を遂げてきたラックは、スーパーボウルとMVPを狙える位置にいる。

 ラックの魅力は、QBとしてのスキルもさることながら、類いまれなリーダーシップにある。今シーズンはRB(ランニングバック)フランク・ゴアとWRアンドレ・ジョンソンという、ふたり合わせてプロボウル選出12回のベテラン勢が加入した。ラックのリーダーとしての力量なら、彼らの能力を最大限に引き出してくれるに違いない。

一方、QBからパスを受けるレシーバーにも、超人的な能力を持つ「ディファレンス・メイカー」がいる。

 そのなかでも今シーズン、最も注目したいのがダラス・カウボーイズのWRデズ・ブライアントだ。今年でプロ6年目となるブライアントは、2012年にシーズンレシーブ獲得ヤード(1964ヤード)でNFL記録を樹立したカルビン・ジョンソン(デトロイト・ライオンズ)を差し置いて、「リーグ最高のWR」との評価を受けつつある。

 188センチ・100キロという体躯を誇りながら、圧倒的なスピードと高い捕球能力を兼備し、ディフェンスがふたりいてもパスキャッチしてしまうため、相手チームにとっては厄介極まりない存在だ。NFL識者は、「1対1なら、彼はオープンになっているのと同じだ」と語っている。昨シーズンはリーグトップの16TDをマークしたが、今シーズンは2007年にランディ・モス(当時ニューイングランド・ペイトリオッツ)が樹立したシーズンTDレシーブ記録(23TD)を脅かす可能性も十分にあるだろう。

 また、ピッツバーグ・スティーラーズのWRアントニオ・ブラウンも、ブライアントと並んで「現役最高のレシーバーのひとり」と呼ばれている。だが、彼のプレースタイルはブライアントとは異なる。178センチ・84キロと、大型化が進むWRのなかでは小柄な部類だ。しかしながら、抜群のスピードと俊敏さを生かし、どれだけ優れた守備バック陣がマッチアップしても、パス捕球のスペースを作り出してしまう。しかも、パス捕球後に相手タックルをかいくぐる能力も、極めて高い。

 昨シーズン、ブラウンはリーグ1位のパスレシーブ獲得1698ヤードをマークした。これは、シーズン記録としては史上第6位。歴代1位のカルビン・ジョンソンがマークした1964ヤードはとてつもない数字だが、伝統的な守備型のチームから攻撃型のチームへと変貌しつつあるスティーラーズのオフェンスシステムならば、昨シーズンの数字を超えてくるのではないだろうか。

 そしてRBのポジションでは、ミネソタ・バイキングスのエイドリアン・ピーターソンに注目したい。今年3月にピーターソンは、RBの選手としては衰えの見え始める30歳となった。だが、希代のRBが老け込むにはまだ早い。大きな故障もなく全試合に出場できれば、2012年に達成したラン2000ヤード、そして1984年にエリック・ディッカーソン(当時ロサンゼルス・ラムズ)が樹立したNFLレコードの2105ヤード超えも視野に入ってくる。

 そして最後は、ディフェンスの選手で触れなければならない「ディファレンス・メイカー」がいる。ヒューストン・テキサンズでDE(ディフェンスエンド)を務めるJ.J.・ワットだ。優れたパスラッシャーが顔をそろえる近年のNFLのなかで、ワットの爆発力は頭ひとつ抜きん出ている。

 昨シーズン、ワットのサック数は20.5個。2012年にも20.5サックを記録しており、1シーズンで20サック以上を2度もマークしたのは史上初の快挙である。NFL選手の投票によって決まる「トップ100人」ランキングでは、堂々の1位に選ばれている。

 また、昨シーズンのMVP投票でも2位にランクイン。もし今シーズン、ワットがシーズンMVPに選ばれれば、1971年のアラン・ペイジ(当時ミネソタ・バイキングス/DT※)と、1986年のローレンス・テイラー(当時ニューヨーク・ジャイアンツ/LB※)に次ぐ、守備選手として史上3人目の快挙となる。2001年にマイケル・ストレイハン(当時ニューヨーク・ジャイアンツ/DE)が樹立したシーズンサック記録(22.5個)に迫れば、歴代MVPリストに名を連ねる可能性も大いに出てくるだろう。

※DT=ディフェンスタックル、LB=ラインバッカー

 NFLを彩るスター軍団のなかでも、ひと際輝きを放つ「ディファレンス・メイカー」たち。スーパーボウルまでこれから約5ヶ月――。誰が最後の舞台に残っているのか、今シーズンも目が離せない。

永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka