芍薬甘草湯は顆粒タイプのほか、手軽なドリンクタイプもある

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運動中や運動後はもちろん、寝ているときにも急に足がつってしまった経験がある人は多いのではないだろうか。

「こむら返り」と言われるこの症状、起きてしまったら痛みに耐えながら必死でストレッチをするしか対処法はないように思えるが、実はある漢方薬を飲むことで素早く解消できる。

暑い時期に起きやすい

「こむら返り」の「こむら」とはふくらはぎのことで、ふくらはぎに起きる筋肉の痙攣(けいれん)を指す名称だ。経験者なら症状は言われるまでもないかもしれないが、筋肉が硬く収縮して膨らみ、強い痛みが数秒〜数分続く。

こむら返りがなぜ起きるのか、そのメカニズムは確定されていない。2010年に米ノース・ダコタ州立大学の研究者らが米国整形外科学会スポーツ医学会誌「Sports Health: A Multidisciplinary Approach」で発表した研究報告によると、筋肉の神経の過剰な反応や、大量の発汗による電解質異常、脱水などが発症要因になると推測されている。

アスリートや運動量の多い若い人に特有の症状にも思えるが、大阪医科大学が2010年に実施した調査では、中高齢者も老化によって筋肉そのものが硬くなるという結果が報告されている。これによって血流が低下することで筋痙攣が起きやすくなり、こむら返りも起きやすくなる可能性は十分にある。

また、こむら返りが起きやすい時期もある。6〜8月の夏場や残暑が残る9月ころだ。夏は暑さで発汗が多くなり、脱水状態になりやすいだけでなく、クーラーで足は冷え血行不良になりがちなため、9月は急激な気温の変化でこの時期多くなるのだ。

ふくらはぎのこむら返りの一般的な対処法は、つま先を持ち、アキレス腱を伸ばすように強制的に引っ張ってこむら返りが起きた筋肉を伸ばすというもの。痛みは生じるが、早い回復が期待できる。予防にはストレッチや患部を温める温浴、それに指圧なども有効だ。

医薬品を利用するなら湿布薬や鎮痛剤が思い浮かぶが、最近では、ある漢方薬が医療現場でよく用いられるようになってきている。『芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)』だ。漢方医学専門医で漢方薬や鍼灸治療に詳しい北里大学東洋医学総合研究所の伊藤剛医師は言う。

「足がつる原因である筋肉の痙攣そのものに効くのが芍薬甘草湯です。主な作用は筋弛緩作用で、手足や腰などの骨格筋だけでなく、腸など内臓の平滑筋にも効くため、腹痛などにも用いられます。中高齢者は老化に伴って筋肉が強ばり、筋内の血流が滞りがちになるため筋痙攣が起こり易くなりますが、こうしたこむら返りにも即効性があり効果的です」

なぜ効くのかはまだよくわかっていない

2000年に湘南クリニックや横浜第一病院、北里大学が共同でおこなった調査では、機械に血液を通し、血液中の老廃物や不純物を除去する血液透析を受けている患者の透析中にこむら返りがよく起きるため、芍薬甘草湯を投与したところ、22回のうち20回は、2〜3分でこむら返りが解消されたという。

高い即効性を持つ芍薬甘草湯だが、どうして早く効くのかはまだよくわかっていない。伊藤医師によると、腸管に届く前に口腔内、食道、胃などで作用する可能性が考えられるが、研究はこれからの段階だという。とはいえ、特殊な薬というわけではなく、薬局やドラッグストアで製薬メーカー各社の芍薬甘草湯を購入できる。

ただし、頻繁にこむら返りが起きる人は注意が必要だ。

「こむら返りは様々な原因が考えられます。神経疾患や閉塞性動脈硬化症などが原因で起こることもあり、単なる筋痙攣とは限らない場合もあります。自己判断で済まさず、まずは医療機関で診断を受けたほうがよいでしょう」(伊藤医師)

[監修:伊藤剛 北里大学東洋医学総合研究所漢方診療部部長・鍼灸診療部部長]

参考論文
ノース・ダコタ州立大学
Exercise-Associated Muscle Cramps: Causes, Treatment, and Prevention.
DOI: 10.1177/1941738109357299 PMID: 23015948

大阪医科大学
Aging changes in muscle mass of Japanese.
DOI: 10.3143/geriatrics.47.5 PMID: 20339206

湘南クリニック、横浜第一病院、北里大学
慢性血液透析患者の筋痙攣に対する芍薬甘草湯の劇的な効果
泌尿器外科 Vol.13 P221

(Aging Style)