9月6日、ワールドカップバレー女子大会、日本対中国の最終戦が名古屋市ガイシホールで行なわれた。日本は1−3で中国に敗れ、7勝4敗の勝ち点22で5位に終わった。この試合で勝ち点2位のセルビアを上回り、3大会ぶり4度目の優勝を決めた中国のかつてのエース郎平監督は「日本は強く素晴らしいチームで、多くの観客のみなさんのバレーを愛する情熱が伝わってくる良い環境でした。私たちにはさらに大きな目標があります。来年はリオ五輪で、また日本とエキサイティングな試合を繰り広げたいと思います」とコメントして会見場を去っていった。

 日本開催というホームの利がありながら、「2位以内に入ってリオ五輪の切符を獲得する」という目標には届かなかった。なぜ、このような結果になったのか。

 眞鍋政義監督は、FIVB(国際バレーボール連盟)のデータ指標と全日本女子チームが使っている指標では、まったく異なることを断ったうえで、「4つの世界一(サーブ、サーブレシーブ、ディグ〈スパイクレシーブ〉、ミスの少なさ)を目指してやってきましたが、ディフェンスは1番ではない。また、ミスの少なさに関して言えば、強豪相手には被ブロックが多く、これが敗因となった」と振り返った。

 敗れた試合で相手に与えたブロック得点はロシア戦が14、セルビア戦が21、米国戦が16、中国戦では11。確かにこれでは、いくら相手のスパイクを拾っても、得点につなげられない。

 被ブロックを減らすために、どうしたらいいかと聞かれ、主将・木村沙織は「ブロックのどちらが空いているかをよく見て、ブロックが2枚3枚ついているときは無理して打ちにいかずリバウンドをとるなど、いかに我慢して、ブロックされないかですね」と回答。

 この大会で新人らしからぬ働きを見せ、攻守ともに中核を担った古賀紗理那は「ブロックを見て打つこともそうですし、スパイクを打つ選手以外の選手が、フォローに入ったり、どこが空いているということを教えたり、スパイカーが安心して打てるように気をつけること」を挙げた。

 このこと自体はもちろん間違ってはいない。しかし、身長が高くとも格下のチームには決まっていたスパイクが、シャットされるのには理由がある。一つには、強豪国はトスがどこに上がるかを見てからブロックに跳ぶ「リードブロック」と呼ばれるブロックシステムを採っていることがある。これをいかにかいくぐるかというところで、上位国はみな腐心しているが、日本は対応しきれていないのだ。全日本はここ数年「速い」バレーに取り組んでいる。リードブロックは、あらかじめ予測して跳ぶブロックよりは、どうしてもタイミングが遅くなる。ブロックが完成する前に打ち切ってしまおうという考え方で、昨年世界選手権女王となったアメリカもこの戦術である。

 ただ、この戦術はどうしてもトスの精度が問題になってくる。セッターの古藤千鶴は「アメリカや中国も速いトスなんですけど、スパイカーの身長が高いので、ヒットポイントがたくさんあるから、トスの精度はそこまで高くしなくてもいいけれど、日本は身長が低いので、ジャストのポイントに上げなければいけない」とし、古藤自身ももう1人のセッター宮下遥も、その精度を上げなければならないと課題を挙げた。

 速いバレー自体は、日本に敗れた相手国が口をそろえて「日本のスピードについていけなかった」とコメントしていることからも、間違ってはいないのだろう。だが、今大会序盤の2試合は、今年度のワールドグランプリでメインでトスを上げ続けた古藤が先発し、その後は宮下がスタメンに変わった。木村が「今季ずっと古藤さんでコンビを合わせてきて、大会途中で(宮下)遥に変わったところで、少し戸惑った部分はありました」と言うように、今大会が始まるまで宮下の調子が上がらず、セッターを固定できなかったのは痛かった。

 また、両セッターとも、特にレセプション(サーブレシーブ)が崩されるとトスが低くなる傾向があり、スパイカーの打ち切れるコースがなくなって、ブロックにかかるケースが多く見られた。山口舞に「トスが低くなるのは、チームとしての約束事なのですか」と聞いてみたところ、苦笑まじりに「いえ、レセプションが崩れたときやラリー中なんかは、確かに2人とも低くなりますね。チームとして低くしているわけではありません」と答えてくれた。トスの速さと高さは悩ましい問題で、過去に同じく速いトスが身上だった男子の北京五輪代表の宇佐美大輔に「速いトスか高いトスってどちらか一択なのですか? 速くて高いトスではいけないの?」とたずねたときに「それができればいいんだけどね」とため息をつかれた。ブロックが完成する前に、とトスを速めれば速めるほど、低くなってしまうのはジレンマといえよう。

 もう一つは、他の強豪国に比べて攻撃枚数が少ないことだ。特にレセプション(サーブレシーブ)が崩されたときやラリー中などは、スパイクを打つための助走に入っている選手が1人しかおらず、はたで見ていても、どこにトスが上がるのかがわかってしまい、ブロックに2枚、3枚とつかれてしまう。

 五輪で男女のチームを率いて、銀メダルを獲得したアリー・セリンジャーが、以前別件で取材した際に「リードブロックへの対抗策を知っているかい? それはできるだけ多くのアタッカーが同時に助走に入り、ブロッカーに的を絞らせないことだ。今は後衛のミドルブロッカー(MB)にはリベロが交代で入るが、本当なら後衛にいるMBもバックアタックに入ればベストだ。これ以上の方法は、今はない」と言っていた。ブロックの空いている方を見て打つのは、もちろん、スパイカーがやらねばならないことだが、実際には打たない選手のとるべき行動も、「打つ人のフォローをする、声をかける」だけではなく、ブロックの分散のために動くことも必要なのではないだろうか。

「オリンピックの切符は獲れなかったけれど、今まで準備してきたことは間違いではなかったと、わかった大会でした。自分のデキとしては、良い試合もあり、悪かった試合もあり、安定してチームを引っ張れたかどうかわからないですけれど、このチームは本当にチーム力があって、和がいつもあるチームでした。今は終わったばかりでOQT(オリンピック最終予選)のことは何も考えられません」と木村主将は涙ぐんだ。

 来年5月にはアジア大陸予選を兼ねたオリンピック最終予選が行なわれ、日本はここで出場権獲得を狙うことになる。予選に出るのはアジア4、欧州2、南米1、北中米カリブ海1。日本はアジア勢で1位となるか、これ以外の7チーム中3位に入ることが切符獲得の条件となる。実は、ワールドカップ最終戦で日本が中国に勝つと、中国の順位がアメリカを下回り、今大会での切符を逃し、OQTで日本と枠を争うはめに陥るところだった。日本がOQTでオリンピックの出場権を獲るためには、今大会で強豪中国に切符を獲ってもらい、OQTには回ってこない方が有利になる。今大会で得られた収穫をもとに、5月には必ず出場権を獲得し、リオでのメダルを期待したい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari