好調をアピールした原口は、後半途中から右SBで試用された。ハリルホジッチ監督の采配にゴールを奪うための工夫が窺えた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 中立地開催とはいえホーム並みの声援を受けたアフガニスタンは、完全にペナルティエリア内に引きこもったカンボジアと比べれば、積極的な守備をしてきた。

サッカーダイジェスト特派記者の採点&寸評

 
 例えばカンボジアは、右サイドで本田圭佑と酒井宏樹が連係すれば、局面の数的不利を受け入れて中央に人を割くことを優先したが、アフガニスタンはMFからボール保持者に食いついて来たので、日本が効率的に揺さぶればスペースが生まれた。特に斜めの動きにはついて来られず、再三日本はボックス内でもフリーの選手を作ることができた。
 
 象徴的なのが4点目のシーンで、香川真司が山口蛍にスルーパスを送った後は、受け手の山口以外にも、得点者の岡崎慎司、本田、さらにファーサイドで原口元気と4人がフリーだった。もちろん暑さやイレギュラーなバウンドが多発するピッチ条件は、テンポの良いパス回しを難しくした。
 
 しかし反面このレベルの試合では、むしろアウェーのほうがゴールを奪いやすいことを証明した。極端に低水準なジャッジもアジア2次予選ならではのものだったが、FK獲得を奨励していたヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとっては、ファウル誘発がことごとく成功したという点で原口の起用が成功した。
 
 ようやくハリルホジッチ監督も、少しずつ落ち着いてアジアの事情を理解しつつあるのかもしれない。終盤には酒井宏に代えて宇佐美貴史を送り込むと、代わりに原口を右SBで使ったが、今後はこうして現実に即した戦い方をひねり出していく可能性はある。
 
 2次予選では継続的な攻撃を受ける想定は要らない。今回思いついた原口のSBでの試用は、自身が右からクロスを上げてきた経験がほぼ皆無だったために失敗に終わった。一方で攻撃的資質が高く、キックの精度を持つ森重真人の押し上げやミドルシュート狙いは効果を見せた。2次予選に限れば、テーマは守備ではなくゴール奪取なのだ。
 
 相手がペナルティエリア内に人を集めてくるなら、逆にバイタルエリアが空く可能性が高まるので、ボランチもボール奪取力より攻撃的な打開策を優先していい。カンボジア戦での山口のミドルシュートの精度を見れば柴崎岳の起用が得策だし、左SBも同サイドから切り返し抜きにクロスを送れる太田宏介のような人材を用意するべきだろう。
 もっともハリルホジッチ監督の命題は、ワールドカップで結果を出すことだ。いくらアジア2次予選で大量点を奪っても、それが必ずしもチームの強化につながらないことは、すでに前任のザック時代に証明されている。今回の連戦ではスタメンがひとりしか変わらず、大量リードの展開でも、交代もマンネリ気味で手際も良くなかった。練習時間が確保できないことを嘆く指揮官は、コンビネーション熟成のためにスタメンを固め少しずつ別の組み合わせを探っていく心算なのだろう。
 
 だがロシア大会本番までに残された3年間で、2次予選はどんなに大胆な実験も可能な数少ないチャンスだ。逆に欧州組が軸を成す中心選手たちにとっては、何も得るものがないどころか、失うものだけが膨らむリスクも抱えている。
 
 早急に技術委員会は、指揮官との綿密な話し合いを行ない、ロシア・ワールドカップまでのロードマップを書き換えるべきだ。2次予選で本当に試すべきなのは、3年後に主力を脅かす可能性のある人材で、個人的には五輪代表の強化の場に充てるのが理想だと思う。
 
 現状で欧州組の最大の強化策は、所属チームで試合に出続けることだ。一方で技術委員会が考えるべきなのは、それを追いかける国内組との断層を、これ以上広げずに効果的な代謝を進めていくためのプランだと思う。
 
文:加部 究(スポーツライター)