【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

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 「うちの本棚」、今回ご紹介するのは一条ゆかり幻の長篇『5(ファイブ)愛のルール』です。広告業界を舞台にしたドロドロの恋愛ドラマだったのですが、連載途中で打ち切りとなったもの。28年後、ようやく単行本化されました。

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5愛のルール

 『デザイナー』でどろどろの恋愛人間ドラマを描ききった一条が、次に取り上げたのが広告業界。広告代理店を舞台に、企業の裏側などを描いていく物語が、この『5(ファイブ)愛のルール』だった。はずなのだが、第一部終了のまま、単行本化されることもなく、幻の作品となり、連載をリアルタイムで読んでいたファンの間で伝説と化しながら、時折イラスト集などにカラーイラストが掲載されたり、作品リストにそのタイトルが記載されたりする以外、いったいどのような作品なのかわからなかった。ボクも知人から「『5(ファイブ)愛のルール』っていう作品があって、面白かったんだけど、単行本になってない」と、噂だけ聞かされていたので、いったいどんな作品なのだろうかと、悶々としていたひとりである。が、連載終了後28年を経過して、ついに文庫判で単行本化された。またあとがきでは連載打ち切りの経緯や未執筆の構想部分についても言及されて、ファンもようやく納得ができただろう。

 連載打ち切りの理由は、ひと言で言って掲載誌である「りぼん」の対称読者と作品内容のギャップで、未完であることから単行本化を見送り封印されてしまったわけだが、読者の人気も高く、文庫本での初単行本化はちょっとした事件だと思ったのだが、28年という年月は長すぎたのか、世間的な話題にはならなかった印象がある。いや、もしかしたらひっそりと、文庫本で刊行してしまおうというのが作者の意図であったのかもしれない。
 また、連載当時それほど知られていなかった広告業界を舞台にするということで、一条は協力者として、秋吉 薫という人物を迎えている。ちょっと聞き覚えのないこの人物、あとがきによると漫画原作者の牛 次郎氏の別名で、当時少年マンガの原作で知られていた牛をそのままクレジットするのは「りぼん」にはふさわしくないと判断した一条が、別名でのクレジットを要請したとのことである。

 デザイン学校を卒業したばかりで、小さな広告会社に勤める麻保。しかし仕事はお茶汲みや雑用ばかりでやりがいのある仕事はまだしたことがない。そんなとき、歌手を目指す姉の理恵を通じて知り合った大手広告会社の鷹見に、その才能を買われ、会社を辞め鷹見のアシスタントとなる。理恵もモデルとしてCMに出演するなど姉妹揃って成功への道を歩み始めるのだが、理恵は鷹見の恋人になりたいと努力するものの、鷹見には大手広告会社の社長令嬢であり、人気モデルのユリアという婚約者がいる。また麻保も鷹見に自分では気づかないまま心惹かれている。鷹見の片腕でカメラマンの立原はそんな彼女たちを冷静に見ながらも麻保に心を寄せている。
 タイトルの『5愛のルール』は広告における「5Iのルール」に引っかけたものだが、さらに5人の登場人物の愛の物語ともなっている。
 3人の女性に想われる鷹見はまた別の女性に心を奪われていて、さらには両親の復讐を胸に秘めてもいる。
 ストーリーは上記のように恋愛模様に彩られてはいるが、印象として広告業界を描いていて、大手広告会社から独立した鷹見の辣腕を中心に広告の世界でのサクセスストーリーと見ることができる。化粧品会社のCMで成功した理恵は売れっ子となり、歌手デビューまでするというのはいまの業界でも見慣れた光景かもしれない。
 そして鷹見を巡って理恵とユリアが火花を散らし、麻保は心を痛め、一条お得意のドロドロな展開へと進んでいく…。

 第一部終了という形で連載を終了しているわけだが、あとがきにもあるように一条自身は続きをすぐにでも描くつもりでいたためか、後を引く部分が多い。大まかな構想はあとがきで公開されているが、作品として完結させてほしかったというのはファンにはあるだろう。

『くうちゅう・しばい』は一条の日常を垣間見られる半ノンフィクションな作品で、少女漫画家のぼやきが伝わってくる。一条にかぎらず漫画家や作家には共通したものかもしれない。

初出:5(ファイブ)愛のルール/集英社「りぼん」1975年5月号〜12月号、くうちゅう・しばい/集英社「りぼん」1980年9月大増刊号

書 名/5(ファイブ)愛のルール
著者名/一条ゆかり
出版元/集英社
判 型/文庫判
定 価/571円(税抜き)
シリーズ名/集英社文庫(コミック版)
初版発行日/2003年8月13日
収録作品/5(ファイブ)愛のルール、くうちゅう・しばい、あとがき

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/