持ち味のドリブルに加え、質の高いオフザボールの動きを見せた原口。日本の武器になる可能性を示した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 ほぼ1日をかけて日本からイランへと渡航した移動の疲労、時差、それに標高1200メートルという高地対策――私もこのスタジアムで試合をした経験があるが、1000メートルを越えるとどうしても息が上がってくるので、慣れるための準備が必要だ――など、まさにアジアの難しさが凝縮されたような厳しいコンディションのなかでの戦いだったと思う。

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 それにカンボジア戦で3点取ったとはいえ、最近の日本代表チームを覆っていたなんとも言えない暗い雰囲気を考えれば、大量6ゴールを奪って、無失点で終えられたという結果には、「おめでとう」と言いたい。良い勝利だったとは思う。
 
 それでも、この試合がチームの強化につながるかどうかと言えば、また別問題である。この点については後述したい。
 
 もちろん、もっとゴールを奪えていたはずだとも言える内容だったかもしれないが、映像からはなかなか感じ取れないコンディション面などを考慮すれば、贅沢なことは言えないだろう。
 
 なにより6ゴールの口火を香川が切ったことで、彼自身も、チームも、なにかが吹っ切れたようだった。密集地帯でのターンの上手さと鋭さ、そこからの思い切りの良いショットという特長を出して、しっかり結果に結び付けた。
 
 そして、そのゴールの起点となった原口は、日本の新しい武器にも成りうる――という可能性を示してくれた。
 
 これまでは短い出場時間しかもらえず、なかなか持ち味を出せずに苦しんできた。今回はハリルホジッチ体制下で左ウイングとして初先発し、持ち味のドリブル突破からまだ元気な8人がかりで固める相手守備陣を翻弄し、突破口を切り開いた。
 
 先制点の場面で、原口は中央へのカットインのドリブルからクサビのパスを香川にあずけ、そのままグッと前へフリーランニングしてマークを引き付けておとりになり、香川のシュートコースを空けた。
 
 そういったドリブルとフリーランニングを織り交ぜた“自分が活きる動き+おとりになるプレー”で、ここ最近単調だった日本の攻撃に変化を与えた。その「仕掛ける」という局面での積極的な姿勢があったからこそ、試合は動いたのだ。
 
 もちろん原口本人はゴールを奪えなかっただけに、十分アピールできたとは感じていないかもしれない。守備面では多少なりとも課題は感じられた。
 
 それでも、相手はその突破についていけず、かなり守りにくくしていた。チームに良い流れを呼び込むキッカケを作ったのは原口だった。
 
 香川と途中出場した宇佐美の「感性」が共鳴し合っていることも感じた。本田の6点目は、ふたりのとてもスムーズな崩しから生まれたものであった。
 
 そこに香川―原口という新たなラインも可能性を感じさせたのだ。左サイドの攻撃がこうして機能していけば、長友のオーバーラップも効果を増すだろう。
 
 そういった意味でも、今回の左からの崩しは収穫に挙げられる、かもしれない(このレベルの相手だけに、『収穫だ』と断言できないのは歯痒いところではある……)。
 
 課題を挙げるならば、サイドからの崩しだ。原口の突破がひとつアクセントになっていたものの、もっとバリエーションを増やせるはずだ。
 
 まず、カンボジア戦で露見した課題は修正されていた。
 
 最近は徹底してクロスを放って、なんとかこじ開けようとする強引さが見受けられた。ただし今回は、両ウイングの本田と原口が相手DFをしっかり引き付けて走り、その空いたスペースを両SBの酒井宏と長友が突いていた。
 
 そこへCBの森重と吉田から、狙いを持ったフィードが放たれていたのだ。そこは、チームとしての狙いであり、これまでの反省が活かされていたように感じる。
 
 とはいえ、本田や原口がグッと中央へ入って、ペナルティエリアの角あたりでボールを受け、その背後を越えて行ったSBを活かすというシーンは限られた。
 
 そのSBと本田らが連係で崩したり、マイナスのクロスをボランチの長谷部や山口が狙ったり、さらにそこから人数をかけて打開したり……いろいろなパターンが考えられるだけに、そのあたりの崩し方のディテールにもこだわってほしかった。やはり、引いた相手にはワイドからの崩しがポイントになる。そのパターンはさらに充実させたい。
 
 6ゴールを奪ったために影に隠れてしまっている感じだが、サイド攻撃の修正を意図してできていたのは特筆すべき点であり(その狙ったサイド攻撃がボディブロのようには効いていた)、一方で、まだまだ物足りなかった点(もうひと工夫が足りない。バリエーションが不足している)があることも指摘しておきたい。
 
 その意味では、後半途中からの原口の右SB起用はどうなのかなぁ……とは思った。
 
 あのポジションはDFとしての負担がほとんどかかっていなかったので、右サイドからの攻撃をさらに連続させて畳み掛けたいという狙いはあったのかもしれない。
 
 とはいえ、あの起用法はあまり参考にはならないだろう。今回の大差がついた試合で「采配」と呼べるものはなかったと見ていい。
 
  さて、ワールドカップ・アジア最終予選への突破条件は8グループの各組1位と、2位の成績上位4チームである。
 
 次戦は10月8日、日本に勝点2差を付けて首位に立つシリアと中立地のオマーン(アウェー)で対戦する。日本はこのまま行けばグループ2位でも突破できそうだが……予断を許さない状況ではある。1位突破を現実的にするためには、次のシリア戦でなんとしてでも勝利を収めたい。
 
 とはいえ、シリアは他の2チームよりも格段にレベルが高くて手強い。簡単には勝てない相手である。万が一、敗れるようなことがあれば……、最終予選に向けて大きなダメージをも負いかねない。このステージでの大一番にはなるのは間違いない。
 
 いずれにせよ、久々に痺れる試合になるのではないか。
 
 無理をする必要のないシリアはしっかりと守備を固め、虎視眈々と前線の高さと強さやカウンターの破壊力を活かそうとしてくるだろう。そこを日本はどのように攻略すべきか。
 
 しかし――である。
 
「強化」という面で考えると、ジレンマを感じずにいられない。
 
 私は南米選手権(コパ・アメリカ)やEURO予選のTV解説をさせてもらってきた。
 
 現在、EURO予選では、昨年のブラジル・ワールドカップでベスト4に進出したオランダが大苦戦を強いられている。
 
 グループAは8節を終えた段階で、1位アイスランド/勝点19、2位チェコ/同19、3位トルコ/同12、そして4位オランダ/同10である(以下、ラトビア、カザフスタンと続く)。
 
 日本がアフガニスタンと試合をした3日前、オランダはトルコに0-3で敗れているのだ。
 
 それは、あくまでひとつの例に過ぎない。
 
 すわなち、ヨーロッパでは、ハイレベルな争いが繰り広げられている。切磋琢磨し合い、凌ぎを削り合い、常に危機感を抱き、チームの強化を図っている。
 
 一方、今回の日本―アフガニスタン戦を観ながら、ふと思うことがあった。
 
 ワールドカップ本大会出場(予選突破)という大義ばかり追うなかで次第にないがしろになっていく、日本代表の強化についてこそ、しっかり考えなければいけないのではないか――と。
 
 もちろん、日程面などでの難しさはあるだろう。ただワールドカップ予選とはいえ、日本がアフガニスタンに勝ったからと言って、強くなったとは言えない。それが、世界の尺度で見た場合の現実なのではないか。
 
 ヨーロッパの強いチームほど質の高い試合をこなし、日本はアジアで決してレベルが高いとは言えない相手との試合を繰り返している。
 
 これでは、列強国との差が縮まっていくはずがない。
 
 この状況では、さあ、ロシア・ワールドカップだという時に、まず、勝負にならないだろう。ブラジル大会の二の舞になりかねない。
 
 より、具体的な提案をしたい。
 
 親善試合をするために、日本がヨーロッパなどへ出て行くしかない。それはもはや、明白であると言える。
 
 EURO予選は10月、プレーオフは11月で終わる。本大会は来年6月から7月までフランスで開催される。
 
 ヨーロッパでもワールドカップ予選が始まるが、EURO前後などには力のあるチームと戦うチャンスはある。予選で敗れたとはいえ実力国も数多くいる。また、ヨーロッパに渡って、南米やアフリカの代表国と対戦することもできる。
 
 ヨーロッパにこだわらず、アメリカやメキシコなどとの今の実力差を知る機会を作っても良いはずだ。
 
 近年、日本も何度かそういったマッチメイクをしてきているだけに、そのスタンスをスタンダードにしていくべきではないか。
 
 もちろん、時には日本で試合することも大切に違いない。それでも、基本はアウェーで強豪国と対戦する機会を優先する――という姿勢を打ち出す時に来ていると思う。
 
 日本が外へ出て行かなければ、真の強化にはつながらない。
 
 香川と岡崎の2ゴール、本田も、森重も決めて、アフガニスタンに大勝を飾った――。
 
 今回結果を残した選手たちは、本当によくやったと思う。ただし、日本協会のスタッフは、この大勝に浮かれていてはいけない。
 
 彼らをより逞しく成長させるためには、先を見据えて、これまでにはなかったような、強化策を打ち出していくことが求められる。