ツーリングの「困った」を解消するデバイスが誕生:尾道しまなみ海道を舞台に行われた「旅するハッカソン」

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8月29〜30日の両日、広島県尾道市で広島県主催のハッカソンイベント「旅するハッカソン」が開催されました。広島県が主催するハッカソンイベントで、ITエンジニアやデザイナー等のコラボレーションにより新しい製品やサービスを生み出そうというもの。

昨年開催の「レッドハッカソンひろしま」に続いて2回目です。前回はアプリ(サービス)の開発でしたが、今回はハードウェアも要素に加え、「これまでにないツーリズム体験」を作ります。Engadget鷹木編集長も審査員として参加しました。この「旅するハッカソン」のイベントレポートをお届けします。

やって来ました、尾道!



尾道市というと、大林宣彦監督の尾道三部作ですね。『時をかける少女』が実写かアニメかで世代がわかってしまうというトラップ(?)がありますが、坂、古い街並み、海、猫、とても情緒のある街です。

みなさんはどんなイメージを持っていますか?

実は、尾道市はサイクリストが集う場所として有名な場所です。尾道市と愛媛県今治市との間を結ぶ「しまなみ海道」は、海を眺めながら自転車で走ることができる、全長80kmのサイクリングロード。そう、この「旅するハッカソン」のテーマはツーリズム体験のハック(自転車、自転車の乗るとき・こと・人にまつわる課題解決)です。

ハッカソン、スタート


29日朝10時、38名でハッカソンスタート。

ファシリテーターの羽渕彰博さん(ハッカソン芸人・ハブチン)

参加者は、主に広島県各地や岐阜県、大阪などから。東京から来ている人もいました。レッドハッカソンひろしまに続いて2回目の参加という人もいるし、他のハッカソンで優勝経験があるという人も。大阪からヒッチハイクで、当日の朝、尾道に辿り着いたというバックパッカーもいます。大学生、社会人、年齢もほどよくバラついている印象です。

テーマがツーリズム体験ということもあり、前乗り組は前日28日にしまなみ海道をサイクリングしてきたそうです(つまり、一部"ライドソン"済み)。

自分を「◯◯芸人」に当てはめ自己紹介

自転車のさまざまなシーンを切り取った写真でイメジネーションをふくらませる

5人くらいでグループを作り、でアイデアを出していく

アイデアピッチは壁に張り出したアイデアから投票で上位8名+「どうしてもピッチしたい!」という2名で

コミュニケーションしながら、これから2日間一緒に作っていくチームを作っていきます。

チームができたら、とにかく作るのみ! わからないことがあれば、メンターの先生たちやチーム外から召喚するという形で進みます。

2日目も朝から作業。

このあたりから、なんとなくモノを作っているんだなという形が見えてきます。

機能的にもできてきたチームも、形が見えてきつつまだまだなところも。さあ、どうでしょうか。いよいよ、発表です!



審査の基準は「パッション」「プロダクト」「ユーザー体験」


今回、参加者の投票とメンターの先生方の投票があります。審査基準は、パッション、プロダクト、ユーザー体験。全部で7作品。チームは6チームだったのですが、急遽ハブチンもハッカソンに参加し、合わせて7作品がエントリーしました。さて、どんなものができたのでしょうか。

すべての作品がツーリング体験という課題をもとに、新しい体験を作ろうと考えられ、制限時間ギリギリまで作り込まれたものだったのですが、ここでは「なるほど、これはあったら便利(だけど作るの大変そうだな......)」的なものがプロダクトの形になっていたもの(つまり個人的に"グッと来たもの"ですね)をピックアップして、紹介します。

サイクリングデートをうまくフォローしてくれるデバイスサービス。後続の彼女が遅れてきたら、LEDで知らせてくれるというもの(チームあぎょうかぎょうの「恋するツーリング」)

自転車の車輪の回転数を取得し、すごくこいでいるときは(たいへんな道だと思われるので)盛り上がる音楽で気持ちを上げてくれるというもの​(オマカセDJチーム、作品名も「オマカセDJ」)。自転車を担ぐというデモが秀逸!

ナビ情報をメガネ型デバイスで通知してくれるサービス。JINS MEMEを使うことを想定したものだが、当日JINS MEME自体は使えなかったので、シンプルな機能を電子工作でデモ(チーム佐藤「At Grance Navi」)

審査員の先生方もそれぞれの仕上がりに納得の様子。もちろん、ときどきツッコミもあり(写真は、左・大阪大学大学院工学研究科准教授 金谷一朗さん、右・広島大学大学院工学研究院准教授 栗田雄一さん)

審査の結果、最優秀賞はチーム一楽「ツーリングシェアコンシェルジュ」。

グループでのツーリングのコミュニケーションを助けるデバイスサービスです。ヘルメットに付けたデバイスとスマートフォンと連携し、距離が離れたらアラームや通知を送るというもの。メッセージも送信可能です。スマートフォンのアプリだけでなく、ヘルメット側のデバイスにLEDで通知を表示するので、運転中でも大丈夫です。

たとえば、みんなでサイクリングしようといっても、グループの中にはサイクリングに慣れていない人も、あるいは体力的に厳しいという人もいたりします。遅れてきている人は大丈夫かな、このスピードで走り続けていいかなと、先頭をリードする側は後続が気がかり。そんなときに「もうちょっと待って」と言えたり、トラブルにスムーズにフォローできる仕組みがあれば、と考えたそうです。これは、ハッカソン前日のライドソンで見えた課題でした。

審査委員長の鷹木さんからは、実際にサイクリストの課題を解決するものだという点、デバイスもアプリも短期間にここまでリッチに仕上げているという点、さらにメンバーのいきごみが評価のポイントとして上がっていました。

こうしたハードウェア要素を加えた開発イベントでは、チームビルディングにおいて、プランナー、デザイナー、ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニアのバランスが重要です。実際、ものを作りましょうとなったとき、エンジニアがいない、ハードに詳しい人がいないなど、スキルが偏っていると作りたいものもなかなか作れない、なんてことになってしまうことも......。わかっていても、うまくいかないものなのですが。

また、チームに分かれたら、何を作るのか、このあとどういうアクションが必要になるのかなどを相談し、タイムスケジュールを考えながら進めていくことが必須です。今回のように、連続して2日間という日程では本当に時間がありません。初日終了後の懇親会で「残り時間のカウントダウンは始まっている!」と鷹木編集長。その言葉に鼓舞されたメンバーの多くが、宿に帰ってからも集まって夜遅くまでアイデアのブラッシュアップをしていたそうです。

今回のハッカソンでは、最優秀賞の受賞チームを含め、みなさんこの短期間に、ツーリズム体験を課題としてとらえ、新しいデバイスサービスを見事に作り上げました。​本当におつかれさまでした!

最後に、前回に引き続き、今回もこのハッカソンを進めてきた広島県商工労働局イノベーション推進チームの山崎弘学さんから「これからもこうした動きを続けたい、参加されたみなさんとの交流、今後の活動をフォローしていきたい」とお話がありました。

広島県商工労働局イノベーション推進チーム 山崎弘学さん

夏休みの最後を飾るイベントはこうして幕を閉じました。

まだまだ、メンバーで開発を続けていきそうな勢いです。

大内孝子(おおうち・たかこ):フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。