■福田正博フォーメーション進化論

 日本代表は9月8日にW杯アジア2次予選の第3戦となるアフガニスタン戦を迎える(日本時間8日・21時25分キックオフ)。

 この試合はイランの首都テヘランで開催されるが、アフガニスタンの隣国ということもあって、多くのアフガン・サポーターが詰めかけると思われる。中立地とはいえ、アウェーの中東であることに変わりはないので楽観視はできない。

 それでも、日本が多くの時間で相手を押し込むことが予想される。アフガニスタンがどういう戦術で臨むかは蓋を開けてみないとわからないが、シンガポール戦やカンボジア戦と同様、ゴール前に人数をかけて守りを固める相手をいかに崩すかが重要になってくるだろう。

 守備を固める相手を崩すために、よく「サイドを使う」と言われる。では、何のためにサイドを使うのか? それは、相手守備陣を中央から引っ張りだし、相手DFをボールウォッチャーにして守備ブロックを崩し、味方のFWが中央付近でゴールを決めるためだ。

 もちろん、単調なサイド攻撃を仕掛けるだけでは相手を崩し切ることはできない。カンボジア戦で何度もクロスを上げて、ゴール前に岡崎慎司と武藤嘉紀がつめていたが、数に勝る相手DFの厳しいマークにあい、なかなか得点につながらなかった。

 そのため、2列目、3列目からゴール前に飛び込んでくる3人目、4人目の動きが必要になる。相手DFにとって視野の外から飛び込まれるとマークしづらく、パスの出し手にとっては選択肢が増える。

 一方、シンガポール戦は中央からの攻撃偏重で無得点に終わったが、中央を使うことが悪いわけではない。中央からシュートを撃つことができればそれがベストだ。なぜなら、シュートコースがもっとも多くなるのがゴール前中央だからだ。サイドになればなるほどシュートの角度は狭くなる。だからこそ、守備側はゴール前の中央を固め、相手をサイドに追い出すことができればシュートアングルを限定できるので失点のリスクは減る。

 ゴール前の中央を固めている相手に対して、単純にサイドを使って攻撃を仕掛けても効果は薄い。そこでポイントになるのが、ゴール前を固める相手の意識を、中央への縦パスでさらに真ん中へ向けさせることだ。当然、相手DFの人数が多い状況でゴール前に縦パスを入れれば、受け手のFWがボールを奪われる可能性もあるが、その位置でボールを奪われても失点のリスクは低い。得点に直結しなくても、それを繰り返すことで、相手守備陣はより中央に集結する。

 たとえば、バルセロナは右からはメッシ、左からはネイマールがサイドから中央へドリブル突破を狙い、相手の守備ブロックがほぼゴールエリアの幅になるぐらい中央に押しこんでいく。ドリブル突破だけではなく、イニエスタら中盤からFWスアレスへの縦パスも、相手守備陣を中央に寄せるプレーになる。

 その結果、ペナルティエリアのサイドにスペースができるので、その時にサイドから攻撃を仕掛ける。つまり、バルセロナのサイド攻撃は「パスの出し手がペナルティエリアに入ることができるサイド攻撃」になっている。だからこそ、サイド攻撃の効果が倍増する。ゴールエリアのすぐ外のサイドのスペースをイニエスタやラキティッチ、あるいは左右のサイドバックが使う。このとき、敵がサイドをケアしてくる場合は、中央にスペースができるので、中央にいるスアレスや前線のメッシ、ネイマールが中央を狙って攻撃を仕掛ける。

 それに比べると、カンボジア戦の日本のサイド攻撃はペナルティエリア外からのクロスがほとんどだった。また、中央へのドリブル突破や、ボランチからワントップの岡崎慎司に縦パスが入るシーンは少なかった。そのため、サイドからの攻撃が有効なものになりにくかったといえる。

 また、今の日本代表は、ボールを保持したら毎回ゴールを狙おうと必死になり過ぎて緩急がないように感じる。もちろん、ゴールを狙うのは重要だが、得点を生み出すためには「伏線」が必要で、まず中央への縦パスを見せておいて、そのあとにサイドに展開する、あるいはその逆など、「駆け引き」も大切なことだ。

 過去の日本代表では、遠藤保仁がそうした駆け引きの部分を担っていたと思うが、現在の代表には遠藤のような存在がいない。本田がその役割を担おうとしているのかもしれないが、それによって本田の持ち味であるシュートへの高い意識が損なわれているように映る。彼の良さを生かし、日本代表の攻撃をより効果的にするために、ボランチはパスを左右に散らすだけではなく、狙いを持って縦パスを出して、攻撃のタクトを振ってもらいたい。その点について、私自身は攻撃を組み立てる能力がある柴崎岳に期待している。

 そして、戦局に応じた駆け引きを実践するには、先発メンバーを入れ替えることもひとつの手段だろう。たとえば、1トップにゴール前でのポストプレーが持ち味のFWを起用する手もある。先日、ハリルホジッチ監督のインタビューをしたときに、今回ケガで招集できなかった大迫勇也のほか、興梠慎三にそうした役割を期待しているようだったが、私としては豊田陽平にも今後チャンスを与えてほしいと思っている。

 さらに、守備に人数を割く相手に対してパスだけで崩すのは限界があるため、両サイドにドリブラーを入れる手もある。DFの人数が多くてもペナルティエリア内に強引に侵入していくドリブラーは相手にとって脅威となるうえ、今の日本には宇佐美貴史や原口元気というドリブルが武器のアタッカーがいるだけに、彼らを先発で起用してもいいのではないか。実際、カンボジア戦では宇佐美と原口が投入されてから、日本代表の攻撃は活性化していた。

 柴崎や宇佐美ら、W杯ブラジル大会後に台頭してきた若手が、溌剌としたプレーで日本をゴールラッシュに導くことが、日本中のファンが求めていることではないだろうか。

 ハリルホジッチ監督には今回のアフガニスタン戦や10月のシリア戦、さらにはそれ以降も続く試合で、そうした若手の積極起用をしながら日本代表を勝利に導いてもらいたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro