今季2勝目 もう過大評価とはいわせない(撮影:岩本芳弘)

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何が起こるかわからないのがゴルフだと言うけれど、米ツアーがプレーオフシリーズに突入してからは、本当にいろんなことが起こり続けている。
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あれほど絶好調だったジョーダン・スピースが2週連続予選落ちを喫したことは誰にとっても驚きだったが、一番衝撃を受けていたのは、言うまでもなくスピース自身。早くも巷で出回り始めたスランプ説を必死に打ち消すかのように「ショットが悪かったわけじゃない。打った手ごたえは以前と変わらない。ちょっとしたメンタル面のエラーだ」。期せずして得た「しばしのオフ」の間に、そのメンタル面をどう整理し、どう対処したらいいかを考えると言っていた。
スピースの言葉は、かつて勝てそうで勝てなかったとき、リッキー・ファウラーが何度も口にしていたのと、そっくりのフレーズだった。デビューと同時に大きな注目を浴びながら惜敗を繰り返したファウラーは、そのたびに「僕の技術が劣っていたわけではない。不調だったわけでもない。メンタルの問題。ほんの少し勝ち急いでしまっただけ」と悔しそうに言っていた。
その後、2012年のウエルスファーゴ選手権で初優勝を挙げた。昨年はメジャー4大会すべてで優勝争いに絡む奮闘ぶりを見せたが、すべて惜敗。そのせいで今年の春ごろには「最も過大評価されている選手」の1位に選ばれるという屈辱的な出来事もあった。
だが、屈辱の1位に選ばれた直後にプレーヤーズ選手権を制し、口さがない人々を実力と結果で黙らせた。そんな経緯がファウラーの自信を高め、メンタル面を強くしたのだろう。今週のプレーオフ第2戦、ドイツ銀行選手権を制したファウラーの逆転優勝は、まさにメンタル面の強さを生かして得た見事な勝利だった。
最終日。首位のヘンリック・ステンソンと1打差の2位から挑んだファウラーはどんなときも冷静だった。
「一時はヘンリックから3打も差を付けられていた。でも、リーダーボードを見たら、伸ばしている選手とそうでもない選手分かれていることに気が付いた。いっそのこと、ヘンリックと僕の最終組を他選手たちから完全に引き離し、この大会を『僕ら2人の大会』に変えて、ヘンリックと僕の一騎打ちに持ち込めたらグレートだよねって話をキャディとした。そして、その通りにすることができた」
ファウラーは虎視眈々とそのためのチャンスを狙い、転機が訪れたのが11番だった。
「僕がバーディ、ヘンリックがボギーで1打差になったあのとき、ついに優勝できるポジションに付けたなと感じた。残りの7ホールは一騎打ち。2人とも、なかなかミスをしなかったけど、16番のヘンリックの(池に落とした)ミスが、すべてだった」
淡々と振り返るファウラーの言葉は、まるで、あらかじめ用意してあった台本を後からみんなに読んで聞かせている感さえあった。思い描いた通りの展開を可能にしたのは、ファウラーの冷静さが終始、保たれていたからこそ。強く揺るぎなく成長したメンタル面の賜物だ。
「楽しい1日だった。優勝という頂点に戻った気分は最高だよ」
その最高の気分を「みんなで分かち合いたいから」というファウラーの粋な計らいで、メディアセンターのダイニングにはファウラーからのシャンパンの差し入れがあった。優勝会見を終えたファウラーは、わざわざ記者席まで足を運び、速報記事に忙しい世界のメディアの邪魔をしてはいけないと思ったのか、やや遠慮がちに、こんなスピーチ。
「みんな忙しそうだから一言だけ。仕事が終わったらシャンパンを飲んでください。今日はうれしい。みんな、ありがとう」
珍しい光景に記者たちの大半は原稿を書く手を止め、スマホを取り出してファウラーの写真を撮った。一緒に記念写真を撮るメディアも多く、フェアウラー人気はコースでもメディアセンター内でも高いことをあらためて知らされた。
ゴルフ界の若きスターは、ローリー・マキロイやジョーダン・スピース、ジェイソン・デイだけじゃない。
リッキー・ファウラー、ここにあり――。彼の勝利は、そう言っていた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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