ヤクルトの真中満監督は春のキャンプで「最下位脱出ではなく、優勝を目指します」と宣言した。その言葉通り、開幕から順調なスタートを切り、9月に入っても阪神、巨人とともに激しい首位争いを演じている。昨年の最下位から一転、快進撃を続けている理由は何なのか? 指揮官を直撃した。

―― 現在、ヤクルトは2位につけていますが、今シーズンは何度か首位にも立ちました。

「選手たちは開幕から粘り強く頑張ってくれています。ただ、本当に優勝を目指すとなると、他球団よりも先発投手陣が弱い。春先はいい感じでスタートしてくれましたが、故障者が出たり、調子の上がらない投手がいたりで、クオリティスタート(QS)はリーグ6位と苦しい状況にあります。この先発陣の頑張りが、優勝するにはいちばん大事な部分となります」

―― 3、4月は貯金2で終えましたが、5月は9連敗もあり、一時は最下位に転落しました。

「連敗を乗り越えれば盛り返せるイメージがあったので、悲観的にはならなかったです。土壇場で勝ちをひっくり返されるような試合はなく、むしろ負けるべくして負けた試合がほとんどで、その中で選手たちはやるべきことができていたと思います。そういう意味で、今シーズンは『取れる試合を落とさない』ことができている。その結果が、今の成績につながっていると思います」

―― 取れる試合を落とさない。その一番の要因は何ですか?

「中継ぎ投手の踏ん張りですね。秋吉亮、松岡健一、ロマン、オンドルセク、バーネットたちが試合を壊さず、いい継投を見せてくれています。特に、バーネットを抑えに固定できたことが大きいですね。彼はここ2年、成績がよくなく、今年こそという気持ちが強かったのでしょう。いま思えば、春のキャンプで仕上がりが最も早かったのがバーネットでした。キャンプの段階ですでに150キロを投げていましたから(笑)」

―― 今年は守りのよさも目立っています。ここまで守備率はリーグトップ、失策数もリーグ最少です。

「逆転本塁打を打たれたとしても、選手たちは『失点はここで食い止めよう』と集中力を切らさずに守ってくれています。最少失点に抑えていれば、終盤の逆転につながることもある。昨年のようにプチッと切れて失点を重ねると、そこで試合は終わってしまいますから」

―― そして何と言ってもヤクルトの武器は"強力打線"です。現在、チーム打率と得点はリーグトップ。オールスター明けから2番・川端慎吾、3番・山田哲人、4番・畠山和洋の並びになり、それぞれがタイトル争いをするなど、すごい打線になっています。

「現状ではこれが最善なのかなと。僕としては、川端、山田、畠山の3人と勝負してほしいわけなんです。たとえば、『川端を歩かせて次の打者で勝負』という選択肢がないようにしたい。山田にしても4番に畠山がいることで相手は勝負しないといけないだろうし、畠山も次に雄平が控えているから勝負を迫られる。そういう考えで3人を並べました。ただ、これで確定だとは思っていません。その時のチーム状況に順応して、これからも変えることがあるかもしれません」

―― 川端選手は、監督が理想とする"攻撃的2番打者"を実現しているように見えます。犠打数もリーグ最少です。

「送りバントが嫌いなわけじゃないんですよ(笑)。ただ、チームが序盤に2〜3点失うことが多い中で、アウトをひとつ与えて送りバントで1点を取りにいく必要があるのかなと。そういう意味で、2番に川端を入れて攻めていくことが、今のチームの投打のバランスを考えると最適なのかなと考えています」

―― この先、バレンティン選手が復帰して、6番あたりに座るようなことになれば、さらに恐ろしい打線になりそうです。

「そういう計算はしていません。戻ってきてくれたらラッキーという感じです(笑)」

―― 先程、先発投手陣に不安があると言われていましたが、小川泰弘投手は復調の兆しがあります。

「そうですね。投球テンポなど、自分なりに改善してピッチングが変化しましたよね。8月26日の巨人戦でも、ピンチはあったけど落ち着いていましたし、ここに来て長いイニングを投げてくれるようになりました。ようやくエースらしいピッチングになってきましたね」

―― これからペナントレースは佳境に入っていきますが、ほとんどの選手が優勝争いを経験していません。

「自分たちが崩れなければ、最後まで優勝争いをできるという手応えはあります。ただ怖いのは、選手たちが緊張感や責任感から普段のプレーができなくなることですね。そこを心配して、選手への声のかけ方には気をつけています。厳しく言ったほうがモチベーションの上がる選手。放っておいたほうがいい選手。前向きな話をしたほうがいい選手。性格は人それぞれですから。監督としては1年目ですが、選手との付き合いは長いので、そのあたりは把握しているつもりです」

―― 監督ご自身は、いつも通りにできていますか。

「内心はドキドキしていますけど、表向きはどっしり構えられていると思います(笑)。もちろん優勝を目指していますが、ウチはチャレンジャーですから。巨人や阪神、広島と違って、期待が高かったチームではありません。全員でミーティングした時もそのことを話したんです。『オレたちはチャレンジャーなんだから、思い切り戦おう』と。僕自身もそれを話したことで吹っ切れました(笑)」

―― 春のキャンプでは選手たちに"自主性"を求めていました。公式戦に入って、その成果は出ていますか。

「自主性に任せるということは、自分で考えて練習をするということで、実はいちばんきついことなんです。でも、効果は出ていると思います。自分たちで考えて、自分たちで試合をつくっていますよね。たとえば、川端や山田はポジショニングも自分たちで考えているし、捕手の中村悠平も内外野の選手に自らポジショニングの指示を出している。それこそが自主性ですよね。だから、とっさの判断が必要な時でも落ち着いてプレーできている。与えられたメニューだけの練習をしていると、どうしてもコーチからの指示を待ってしまいます。そういう意味で、この1年、選手たちはすごく成長したと思います」

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya