『言論江湖』「ブログ時評」という論理破たん(下)
2005年03月28日15時10分 / 提供:PJ
前置きが長くなってしまったが、朝日新聞社社員、団藤保晴氏の「ブログ時評」について、言及していきたい。論点は、ジャーナリズムにおける独立性、歴史認識、事実認識――の3点に関する団藤氏の論理破たんについてである。
ジャーナリストとしての独立性の論理破たん
ジャーナリストが取材対象からの独立を維持することは、ジャーナリズムの原則というべきものである。中立性ではなく、独立性が担保されてこそ、ジャーナリストが権力の監視を可能にし、声無き市民の代弁に撤することができる。
団藤氏は『世界』の「ブログ時評 on SEKAI」の原稿で、ライブドアのPJニュースの対比として、神奈川新聞の無料会員制コミュニティーサイト「カナロコ」を絶賛した。これついて、団藤氏のジャーナリストとしての独立性に疑問を抱かざるを得ない。
ネット上で団藤氏は「全国紙の記者」と称しているが、この全国紙とは朝日新聞を指す。そもそも、団藤氏がネット・ジャーナリストを自称するならば、「全国紙の記者」といった肩書きを公表する必要はない。
また、神奈川新聞社は、朝日新聞社から役員の派遣を受け入れるなど、いわば朝日新聞社の系列会社だ。些細なことではあるが、朝日新聞社社員である団藤氏が、その所属や役職を明らかにせず、朝日新聞との関係が深い神奈川新聞の行動を賞賛し、しかも、ライブドア批判に利用するとは、彼のジャーナリストとしての独立性認識の欠陥を指摘せざるを得ない。
神奈川新聞という既存の報道機関が行うエポックメーキングな「カナロコ」という試みは、豊かな市民社会を目指したものであり、筆者としても心からエールを送りたい。朝日新聞関係者によって、正体不明のまま「提灯持ち」風の原稿を書かれたのでは、「カナロコ」のせっかくの試みに傷が付きかねない。
ジャーナリズム史認識での論理破たん
朝日新聞社社員の団藤氏が、ライブドアという企業の出自自体に欠陥があり、ライブドアのPJニュースについて「マネーゲームの野望、その一翼を担うニュース部門」として断定する態度には、国内ジャーナリズム史への認識不足がにじみ出ている。
朝日新聞は明治期の1879年に大阪の商業新聞として出発した。当時は政治的な言論を中心とした「大新聞」が活躍していた時代でもあった。だが、社会運動などの盛り上がりを抑圧するためにも、新聞紙法(1909年)などによる明治政府の言論弾圧が以前よりもさらに強まった。このために、国内報道機関が自らの主義主張を抑えた、消極的な意味での「客観報道」というものに包摂されていった系譜がある。
朝日新聞も、その編集方針として「報道中心主義」と「公平無私」を掲げた。また、第二次世界大戦前には、言論機関の統制を目的に設置された内閣情報局による偏狭なナショナリズムに、朝日新聞を含めた国内マスメディアは飲み込まれていった。この状況下で、多くの国内メディア企業経営者が、保身や商業的利益のために、権力に迎合していった問題点が指摘されている。
戦後になり、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の民主化政策によって、国内ジャーナリズムは蘇生したのである。そして、戦後日本の資本主義経済が発展してきた中で、経営的な視座を欠き、自律的にジャーナリズム理念のみを遂行する国内報道機関など皆無といってよい。
ライブドアの商業主義的な出自を「欠陥」だとして、ジャーナリズムへの参加資格が無いと忠告する、朝日新聞社社員の団藤氏には、いささか歴史と現実の社会認識への危うさを感じる。
事実認識への論理破たん
常に事実確認を行い、記事の正確性を担保するのがジャーナリストの鉄則だ。団藤氏のブログ時評で、ライブドアのPJニュースの経営計画について、「韓国の『オーマイニュース』が念頭にあるらしい」「ブログの1%、何千人かは来る、との皮算用らしい」などと語っているが、事実誤認も甚だしい。PJニュースを担当する筆者が、こんな計画をした覚えは無い。
政治意識だけを取り上げても、韓国人と日本人の間には大きな隔たりがあることはいうまでもない。外国のビジネスモデルをそのまま国内に持ち込んで成功したケースは珍しい。また、ブロガーだけを対象にしたパブリック・ジャーナリズムなど、公共性の観点からしてもジャーナリズムに成り得ない。そもそも、団藤氏が指摘する無謀な計画など、計画しようが無いのである。
直接取材を惜しみ、原典への事実確認を怠り、ネット上の情報などを鵜呑みにして言論を展開する団藤氏は、もはやジャーナリストの範疇にない。【了】
*この原稿はPJ個人の見解であり、ライブドアの見解ではありません*
「ブログ時評」という論理破たん(上)
「ブログ時評」という論理破たん(中)
言論江湖
ジャーナリストとしての独立性の論理破たん
ジャーナリストが取材対象からの独立を維持することは、ジャーナリズムの原則というべきものである。中立性ではなく、独立性が担保されてこそ、ジャーナリストが権力の監視を可能にし、声無き市民の代弁に撤することができる。
団藤氏は『世界』の「ブログ時評 on SEKAI」の原稿で、ライブドアのPJニュースの対比として、神奈川新聞の無料会員制コミュニティーサイト「カナロコ」を絶賛した。これついて、団藤氏のジャーナリストとしての独立性に疑問を抱かざるを得ない。
ネット上で団藤氏は「全国紙の記者」と称しているが、この全国紙とは朝日新聞を指す。そもそも、団藤氏がネット・ジャーナリストを自称するならば、「全国紙の記者」といった肩書きを公表する必要はない。
また、神奈川新聞社は、朝日新聞社から役員の派遣を受け入れるなど、いわば朝日新聞社の系列会社だ。些細なことではあるが、朝日新聞社社員である団藤氏が、その所属や役職を明らかにせず、朝日新聞との関係が深い神奈川新聞の行動を賞賛し、しかも、ライブドア批判に利用するとは、彼のジャーナリストとしての独立性認識の欠陥を指摘せざるを得ない。
神奈川新聞という既存の報道機関が行うエポックメーキングな「カナロコ」という試みは、豊かな市民社会を目指したものであり、筆者としても心からエールを送りたい。朝日新聞関係者によって、正体不明のまま「提灯持ち」風の原稿を書かれたのでは、「カナロコ」のせっかくの試みに傷が付きかねない。
ジャーナリズム史認識での論理破たん
朝日新聞社社員の団藤氏が、ライブドアという企業の出自自体に欠陥があり、ライブドアのPJニュースについて「マネーゲームの野望、その一翼を担うニュース部門」として断定する態度には、国内ジャーナリズム史への認識不足がにじみ出ている。
朝日新聞は明治期の1879年に大阪の商業新聞として出発した。当時は政治的な言論を中心とした「大新聞」が活躍していた時代でもあった。だが、社会運動などの盛り上がりを抑圧するためにも、新聞紙法(1909年)などによる明治政府の言論弾圧が以前よりもさらに強まった。このために、国内報道機関が自らの主義主張を抑えた、消極的な意味での「客観報道」というものに包摂されていった系譜がある。
朝日新聞も、その編集方針として「報道中心主義」と「公平無私」を掲げた。また、第二次世界大戦前には、言論機関の統制を目的に設置された内閣情報局による偏狭なナショナリズムに、朝日新聞を含めた国内マスメディアは飲み込まれていった。この状況下で、多くの国内メディア企業経営者が、保身や商業的利益のために、権力に迎合していった問題点が指摘されている。
戦後になり、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の民主化政策によって、国内ジャーナリズムは蘇生したのである。そして、戦後日本の資本主義経済が発展してきた中で、経営的な視座を欠き、自律的にジャーナリズム理念のみを遂行する国内報道機関など皆無といってよい。
ライブドアの商業主義的な出自を「欠陥」だとして、ジャーナリズムへの参加資格が無いと忠告する、朝日新聞社社員の団藤氏には、いささか歴史と現実の社会認識への危うさを感じる。
事実認識への論理破たん
常に事実確認を行い、記事の正確性を担保するのがジャーナリストの鉄則だ。団藤氏のブログ時評で、ライブドアのPJニュースの経営計画について、「韓国の『オーマイニュース』が念頭にあるらしい」「ブログの1%、何千人かは来る、との皮算用らしい」などと語っているが、事実誤認も甚だしい。PJニュースを担当する筆者が、こんな計画をした覚えは無い。
政治意識だけを取り上げても、韓国人と日本人の間には大きな隔たりがあることはいうまでもない。外国のビジネスモデルをそのまま国内に持ち込んで成功したケースは珍しい。また、ブロガーだけを対象にしたパブリック・ジャーナリズムなど、公共性の観点からしてもジャーナリズムに成り得ない。そもそも、団藤氏が指摘する無謀な計画など、計画しようが無いのである。
直接取材を惜しみ、原典への事実確認を怠り、ネット上の情報などを鵜呑みにして言論を展開する団藤氏は、もはやジャーナリストの範疇にない。【了】
*この原稿はPJ個人の見解であり、ライブドアの見解ではありません*
「ブログ時評」という論理破たん(上)
「ブログ時評」という論理破たん(中)
言論江湖
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
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