映画『猫侍 南の島へ行く』女優猫・あなご 撮影:源克己

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コワモテ侍の斑目久太郎とツンデレ白猫・玉之丞の異色のコンビが観る者を魅了する大人気動物癒し系時代劇の劇場版第2弾『猫侍 南の島へ行く』(9月5日公開)が登場!

かわいすぎる!『猫侍』あなご撮りおろし写真ギャラリー(38枚)

今作ではなんと、南の島に漂着してしまった彼らが先住民と海賊とのバトルに巻き込まれて最大のピンチに。さらには玉之丞の恋も描かれるアクション・アドベンチャーになっている。

そして、そこには猫と楽しく旅をするためのヒントがいっぱい!

そのあたりのポイントを、ドラマと映画のすべてで猫たちをサポートしたZOO動物プロの動物トレーナー・北村まゆみさんに撮影時の実際のエピソードを絡めながら教えてもらいました。

猫を飛行機に乗せていいのか、ちょっと心配ではありました

今回の映画のタイトルを聞いて、猫好きの人なら誰もがまず“えっ、南の島? そんなところに連れてって大丈夫なの? どうやって輸送したの?”と思ったに違いない。

筆者もそんな素朴な疑問からぶつけてみました。

「いや〜最初は島どころか外国の本当の南の島で撮りたいという話だったんですよ(笑)。

でも、外国になると猫の場合は検疫が大変だし、玉之丞を演じたあなごは17歳(人間に換算すると80歳以上)と高齢だから、それは難しいという話になって八丈島で撮影することになったんです」

いやいや、八丈島は確かに日本だけど、船だと11時間もかかる場所じゃないか。

「そうなんですよ。11時間も狭いケージに入れることになるので、移動直前になって急遽飛行機に変えてもらったんです。

飛行機にもいろいろな動物を乗せてはいるけど、猫の場合は気圧や音がどんな影響を及ぼすのか分からなかったのでちょっと心配ではありました。

ただ、心配していてもきりがないし、実際乗せてみないと分からないこともあるわけで。結果、あなごの場合は何の問題もなくて、全然平気でしたね」

ちなみに、私たちが猫を飛行機に乗せる場合はどんなことに気をつけたらいいのだろう?

「できれば、なるべく小さ目のケージに入れてあげた方がいいと思います。

親心でトイレつきの大きなケージに入れてあげる人もいますが、中には気圧の変化などでパニックを起こしてしまう猫もいて、ケージが広いと暴れたときのダメージが大きくなる恐れがあると思うんですね。

国内だったら長くでも3時間ぐらいのフライトだし、それぐらいなら猫の場合はおトイレに行かなくても大丈夫。

おしっこをしてしまってもいいように、吸収性の高いシーツなどを敷いといてあげればよりいいと思います」

そして島に上陸。

旅に出れば、当然、予想もしてなかったトラブルも

映画では高波が打ちつけている海辺の岩穴の中に隠れている玉之丞を久太郎が見つけるところから物語が大きく動き出すが、あなごはよくあの状況に耐えられたものだ。

「最初は“ゴツゴツと飛び出した岩の上にあなごを置くのはどう?”って監督に言われたんですけど、“いや、無理ですね。あなごが飛んでっちゃいますよ!”と言って(笑)。

それぐらい、あそこはものすごく風も強かったし、車が真っ白になっちゃうぐらい潮も酷くて。それで、ちょうど風がさえぎられるあの岩穴に入れることになったんですけど、あとは“ここから動いちゃダメですよ”って言うことぐらいしかできなかった。

でも、あなごも、いまはここにいなければいけないんだというのが、何となく分かっていたような気がしますね」

八丈島での撮影のほとんどは屋外で、ジャングルのような植物園でもロケが行われたため、当初は“あなごが逃げたらアウトだよね?”という不安にもなったが、現場慣れした彼女は暴走することはなかったという。

「あなごの場合は特別ですね。猫は空間の記憶に左右されるので、知らない場所に行ったときのストレスが大きいんですよ。

逆にここは来たことがある、ここは大丈夫という記憶が残っていれば全然問題なくて、今回も日光の江戸村に撮影で1年半ぶりに行ったんですけど、ここは知っているというリアクションで。

それぐらいの、のびのび加減でしたよ(笑)」

旅に出れば、当然、予想もしてなかったトラブルに巻き込まれることもある。

劇中では久太郎のもとからLiLiCoの演じる女海賊のお蓮が玉之丞を奪うシーンや、海賊の大男が玉之丞を空高く持ち上げて久太郎をハラハラさせるシーンなどが登場するが、あなごの場合はそのどちらも脅えることなく演じきった。

「あなごは本当に誰に抱かれても大丈夫なんです。

あれが(動きのあるシーンを担当した歳の若い)さくらだったらビョ〜ンって飛び出したかもしれない。

長身の海賊が片手であなごを持ち上げたときだけは、不安定な態勢だったし、北村さんたちが“返せ―!”って詰め寄る普通じゃない状況だったから逃げ出すかもしれないという不安がちょっとありましたけど、久太郎役の北村一輝さんが奪い取ってしまえば、私は安心で。あなごもすっかり身を任せてましたよ」

ただ一度だけ、あなごが北村の腕から逃げてしまうアクシデントがあった。

「島で家を建てている久太郎が、片手に持っていた南国の葉っぱを下ろしたときに、もう片方の手で抱えられていたあなごがビョ〜ンって飛び出したんです。

しかも、けっこう引きの画だったから、少し離れたところで見ていた私たちは“うわっ、あなごいま飛びましたよね! どうしましょう?”ってなって(笑)。

北村さんが葉っぱを下ろすときに少し前傾の姿勢になったから、自分も降りていいと思ったんでしょうね。でも、結局は岩と岩の隙間に入っていて、じっとしてました。」

あなごも『猫侍』の撮影で女優としてすごく成長

まあ、そんな例外はあったとしても、あなごが北村に絶大な信頼を寄せているのは確か。久しぶり再会したときもちゃんと覚えていたのだろうか?

「覚えてましたね。ただ、猫は犬みたいに再会を喜んでにニャ〜!って泣いたりはしないんですよ。

北村さんのことは大好きなんですけど、逆に彼の気持ちを弄ぶかのように“あなたは私のこと好きなんでしょ”というツンデレな態度をするから、見ていて笑っちゃうんですよね(笑)」

そのパワーバランスは久太郎と玉之丞そのままだが、その唯一無二の関係性が『猫侍』という異色のシリーズを成立させたといっても過言ではない。

「猫はなかなか言うことを聞いてくれないから、海外の映画でも猫が絡む映画は意外と少ないんですよ。

それに、あなごも『猫侍』の撮影で女優としてすごく成長したと思います。

それこそ、最初のドラマで主演に抜擢されたときは、脱走を何回もしている子でしたし、じっとしていることもできなかったから、あなごに何ができるの?って感じで。

だから、最初のドラマと映画ではあなごと若いさくらと年配のさくらの3匹体制で臨んだんです」

そんなあなごがなぜ女優らしい行動をとれるようにったのだろうか?

「北村一輝さんの存在が、やっぱりあなごの安心感に繋がったと思います。

北村さんがちょっと気難しいツンデレな猫のことを好きになってくれたわけですけど、彼のその“好き”という気持ちがあなごにも通じたとしか思えないですね。

それこそ、最初のころは久太郎と玉之丞が向かい合って座るシーンですらできるかどうか心配だったけど、それがどんどん大丈夫になり、いまや一緒に食事をするまでになりましたから。この歳でこんなに変わるんだって、私たちがいちばんビックリしていますよ」

本作ではふたり(?)の心はすっかり通い合っているようで、久太郎が島でのサバイバルに疲れた玉之丞の前足を持って体操をさせる微笑ましいシーンも登場する。

「あれは、私が猫たちに普段やっていることなんです。

動物のツボは人間と本当に一緒なので、眉間の皮をつまんであげたり、手足を動かしてほぐしてあげたりするんですよ。

それを見ていた北村さんが“取り入れよう“”って言い出したんですけど、あれは思いきってやってもらった方が絵的に面白いし、猫も安心するんですよね。

ストレッチじゃないですけど、猫って気分転換するときに身体を伸ばしますよね。だから、知らない場所に行って縮こまっている猫には、ああいうマッサージやストレッチをやってあげるといいと思います」

猫はイヤなものはイヤ。あなごとジャックの相性は最悪だった

だが、いい出会いもあればその逆があるのも世の常。あなごの場合は奇しくも、劇中で玉之丞が恋におちるヤムヤム役の黒猫・ジャックがその最悪の相手だった。

「ジャックは『ねこばん』(10)にも出ているし、映画版の『くろねこルーシー』(12)では男の子なんですけど、お母さん役をやっていて、実はドラマの『昼顔』(14)でも北村さんと共演しているんです。

『昼顔』の現場でジャックのことを“この子、いい子だね〜”って言っていたから、あのときに白猫と黒猫を共演させたら面白いのでは? というアイデアを思いつかれたのかもしれませんね。

でも、二匹の相性がとにかく最悪で。猫はイヤなものはイヤなんですよ。

特にあなごはほかの猫を受け入れないし、いろいろな猫と一緒に生活をしているジャックもなぜかあなごのことは好きじゃなくて……。

私はあなごから最初に手が出ると思っていたんですけど、ものの見事にジャックから手が出ましたね(笑)」

その、あまりにも一瞬の出来事には映画を観ているこちらも絶句する。

「あれは“やらせてみろ!”って言われてもできないですよ。

それに、あそこは本来ラブラブじゃなきゃいけないシーンだったんですけど、無理を承知で二匹を一緒に置いたら、案の定ああなって(笑)。

しかも、あれはリアルスピードですからね。ジャックがパパパパパンってすごいスピードであなごにパンチを繰り出し、ダッシュで逃げたから、これじゃダメだ〜ってことで、結末が変わっちゃったんですけど、面白さは出たかな〜と思っています(笑)」

愛猫の”最高に可愛い表情”を撮る秘訣

最悪な状況でさえもプラスに転化させるなんて、さすがはプロ。そんな北村さんに、最後に旅先で愛猫の最高に可愛い表情を撮るにはどんなことを気をつけたらいいのか教えてもらった。

「まずはその場所に馴染ませることですね。みなさんがSNSにアップしている猫の面白い動画の多くも、たぶん自宅で撮ったものですよね。

逆に、あなごたちのように演技を求められる猫は、初めての場所でそれをやらなければいけないんだけど、そんな状況ではなかなかリラックスした表情は撮れないですよ。

だから、まずはいろいろなところに連れていかれることに慣れさせる段階が必要なんです」

なるほど! それでは、猫がリラックスしているかどうかはどうやって見極めるのだろう?

「リラックスしているかどうかの目安は、ごはんを食べるかどうかで分かります。

緊張していたら食べないです。猫って食べているときと排泄しているときがいちばん外敵に狙われやすいから、最も気持ちが張りつめているんですよね。

なので、好物を見せれば、まだ食べる余裕があるのか、食べられないぐらい緊張しているのを量るバロメーターになるんです。

それに、子猫なら猫じゃらしに反応して素直に動くけれど、5、6ヶ月もするとキャラクターも出来上がってくるから、緊張しやすい子は猫じゃらしを見る余裕もないし、ごはんも食べなくなる。

それがいい表情を引き出すのは難しい子だなという判断になります。

そういう子には、頭を撫でてあげたり、“大丈夫、大丈夫”って話しかけてあげたりして、安心感を与えるようにはしてますけどね」

猫のいい表情を撮ろうとして、絶対やってはいけないこと

それでは逆に、いい表情を撮ろうとしてやりがちなことで、絶対にやってはいけないことは?

「不用意に大きな音を立てるのはやめた方がいいですね。

音を立てると、確かに見ることは見るんです。

でも、同じ手は二度は使えません。例えば、音を立てて目線をこちらに向かせて、フラッシュを焚いて撮りました。

そうすると、見たら光って、それがすごくイヤだったという記憶として強く残ってしまう。

猫の場合はネガティブの記憶になる傾向が強いですからね。

これが犬の場合だと、例えば音の鳴った方を見ました。フラッシュが焚かれました。

でも、ごほうびをもらったので、ああ、楽しかったという終わり方ができるんですよ(笑)」

なるほど、なるほど。映画を観たら、もっといろいろな発見があるに違いない。

9月1日に発売されたコミック版『猫侍ぱんち〜白猫騒動』(少年画報社/580円〈+税〉)も読んで、可愛い玉之丞=あなごに癒されながら、猫との快適な旅を楽しんでみては?