株式会社テイクオフHPより

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 本サイトでも先刻から報じているように、安倍晋三首相が本日9月4日、『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)に生出演した。『ミヤネ屋』は「安倍首相×宮根誠司 "特別"国会開幕」などと銘打っていたが、内容は完全に安倍政権の広報、安倍首相応援番組といっていいものだった。その一部始終を詳しくお伝えしよう。

 スタジオに安倍首相が登場したのは15時すぎで、約40分間の生出演となったが、その前から番組では長い時間を割き、キャスターの宮根誠司がコメンテーターらとともに安保法制についてパネルで解説。法案の論点をかいつまんで説明したのだが、これがあきらかに、前もって安倍首相をフォローするためのものだった。

 たとえば、安保法制が憲法違反であるという指摘については、コメンテーターの日本テレビ報道記者・青山和弘が、「憲法改正するのが筋道ですが、日本国憲法は非常に憲法改正手続きのハードルが高いんですね」と言い、宮根誠司が「他の国ってけっこう憲法を変えていたりするんですよね」と"解釈改憲は仕方がない"という印象付けを行った。

 さらに、6月4日の衆議院憲法審査会において、与党が推薦した憲法学者・長谷部恭男早稲田大教授が「法的安定性を揺るがす」「憲法違反だ」と明言したことについて、宮根と青山は、まるでとるに足らない話かのように、笑いながらこんなコメントをしたのだった。

宮根「でも、これ、違憲論者を参考人呼んだってなってますけど、これは青山さん、単なるキャスティングミスですよね」
青山「そうですね。完全なキャスティングミスです、政府側からすれば」

 報道されているように、ほとんどの憲法学者が"安保法制は違憲"と断言している。しかし『ミヤネ屋』はそれをスルーし、政府のただのケアレスミスとして片付けたのである。

 このように、放送冒頭から番組は万全のバックアップ体制を敷いていたわけだが、首相が出演すると、今度は見ているこちらが恥ずかしくなるほどの"安倍大ヨイショ"を始めたのだ。

 まず最初に、宮根から「なぜうちの番組を選ばれたのですか?」と聞かれた安倍首相は、「(元防衛大臣の)森本敏さんにですね、ぜひこの番組に出てちゃんと説明するようにと言われたのです」と朗らかに返答。緊張感の欠片もないスタートだ。

 その後、安倍首相はこれまでのテレビ出演や国会での答弁とほぼ同じようなとっくに破綻した主張をだらだらと喋りはじめるのだが、なんの批判も追及もしない。

 むしろ、宮根をはじめコメンテーターの青山和弘、春川正明、手嶋龍一らは、安倍首相の言いたいことを先回りするような質問をし、安倍首相が答えるとわざわざフォローをするというような状況だった。

「よく言われてるのが憲法改正してやったほうがあっさり行くんじゃないのって話があるんですが、やっぱりこれ海外情勢が激変しているなかで、やっぱり時間かけられないというのがあるんですかね」

 そして、安倍が砂川事件の最高裁判決を持ち出すと、宮根はこう相づちをうったのだ。

「改正というよりも憲法の中に(集団的自衛権を使って国民を)守らなくてはいけないということが入ってるんですね」

 もっとひどいのは、青山和弘だ。「違憲か合憲かよりも、この安全保障環境の変化にどう対応するか」と擁護し、表向きは安倍が口にできない中国の脅威を代弁したのだ。

「中国、北朝鮮の脅威について、どこまで説得力ある説明ができるかにかかっているのに、外交上の配慮があってできないところに、もどかしさがある、なかなか行き違いがある」

 また、読売テレビ解説委員の春川正明は学生の話をもちだしながら、

「総理、いろんなところでいろんな話をきいて、学生たちと喋っていても、総理のおっしゃるように抑止力として法整備必要だなって言う人が多いんですよね。でもそれとともに聞かれるのが、『安倍さんがどこまでもいってしまうんじゃないか心配だ』と」
「(70年談話についても)学生が『先生、安倍さんこのままいくと怖いですよ』というんです。私は何が怖いの?と聞いたんです」

 すると、安倍首相は満面の笑みを浮かべながら、「よく"暴走"と言われるんですけど、"暴走"して私がどこにいくんですか? 私はそれが聞きたいんです。いったい"暴走"して私が何をするんですか?」と返すのだった。そしてすぐさま、宮根が徴兵制の話題を持ち出し、安倍首相の「徴兵制はありえない」という話を引き出してフォローする。もはや通販番組並みのシナリオがあるとしか思えないタイコ持ちぶりだった。

 いや、『ミヤネ屋』がPRしたのは安保法制だけではない。元NHKワシントン支局長で外交ジャーナリストの手嶋龍一にいたっては、唐突に安倍首相が70年談話を「自分で書いた」という"想像"を披露。こう安倍首相を大絶賛したのだ。

「一般にはですね、あれは役人が書いたと誤解されているのですが、僕らジャーナリストからみますと、あの文面はほとんど総理お一人でお書きになったんです。しかも、アメリカの上下両院の演説がありましたが、あれ、泣いている上院議員もいましたよね。あれはお一人で書いたとお認めですか」

 これには安倍首相の表情もご満悦。なんなのだろうか、この茶番劇は......。

 そして、最後は宮根が笑いながら「いつもおいしいところでご飯食べてはる。誰が(食事を)選んではるんですか」とおどけたかと思えば、安倍首相も「いっしょに今度(ご飯)行きますか。大阪で」とモーションをかける。本サイトでも何度も指摘してきたように、メディアと権力者との会食なんていうのは、本来、やってはならないことなのに、宮根もスタジオのスタッフもなごやかそうに笑うだけ。

 しかし、こうした太鼓持ちぶりも考えてみれば当然なのかもしれない。実は、番組終盤に、青山和弘の口から読売グループの本音がぽろりと漏れた。

 宮根から「これからわれわれは国会審議をどうやって見ていったらいいでしょうか」と締めの一言をふられた青山はこう答えたのである。

「たとえばこのあとこの法案が廃案にされては困りますので、うまくこう、巻き込んでいく。その努力の姿を見ていく必要がありますよね」

 ようするに、最初から『ミヤネ屋』は、"国民からなかなか理解が得られない安保法制を懸命に説明する安倍首相をポジティブに演出しよう""安保法案を無事に成立させよう"という思惑だったのだろう。

 はたして、"公正中立"であるべきテレビ局がこんな番組を放映していいのだろうか。

 安倍政権はことあるごとにテレビ局に対して放送法をチラつかせて圧力をかけているが、本当に放送法に違反しているのは、今回の『ミヤネ屋』のような政権礼賛番組だろう。国民はこの番組をBPOの審査対象にすべく運動を展開すべきではないだろうか。
(小杉みすず)