各チームとも残り30試合を切ったが、セ・リーグの優勝争いはいまだ混沌としている。阪神、ヤクルト、巨人の上位3チームが僅差でせめぎ合い、4位の広島も阪神との直接対決を7試合残しているため、チャンスは十分にある。史上稀にみる大混戦となったセ・リーグのペナントレースはどんな決着となるのだろうか。解説者7人に聞いてみた。

●野村弘樹(元横浜)

「いま一番いい野球をしているのはヤクルトです。打線は川端慎吾、山田哲人、畠山和洋の3人を筆頭にどこからでも得点できるし、投手陣もリリーフ陣の安定感はリーグトップだと思います。とにかく先発陣が6回までを2〜3点に抑えてくれれば、かなりの確率で勝利できます。ただ、残り試合、今までのような野球ができるのか不安があります。相手もエース級のピッチャーをぶつけてくるだろうし、そうなるといくら強力打線といえども簡単に得点できません。そうした展開になった時に、はたして投手陣が辛抱できるのかどうか......。優勝経験者もほとんどいないですし、これからが本当の正念場でしょうね。逆に、不気味な存在なのが広島です。前田健太、ジョンソンという二枚看板がいて、今年は福井優也も調子がいい。なにより、阪神との直接対決を多く残している。不安があるとすれば、リリーフ陣と9月終盤の12連戦。ただ、ここで勝ち越すことができればチームも乗ってくるでしょうし、ファンの後押しもある。現状は厳しいですが、可能性は十分あると思います」

●与田剛(元中日、ロッテほか。第2回と第3回WBC投手コーチ)

「9月の戦いは、投手のデキが大きく勝敗を左右します。特に、完投できる投手が揃っているチームは強い。そういう意味で、藤浪晋太郎やメッセンジャーがいる阪神がやや有利ではないでしょうか。ヤクルトは先発陣の不安が大きすぎます。完投数3はリーグ最少ですし、リリーフ陣もこの時期の連投は肉体的にも精神的にも堪えます。先発がどこまで持ちこたえられるのかが、カギになるでしょう。逆に巨人は、阪神の投手力やヤクルトの攻撃力といったセールスポイントがありません。主力打者も不振が続き、エースの菅野智之も貯金ゼロ。それなのにこの位置につけているのが不思議というか、不気味でなりません。優勝経験のある選手が揃っていますし、競った展開になれば、巨人の本当の強さが見えるかもしれません」

●山崎武司(元中日、オリックス、楽天)

「この時期、普通は『優勝に向けて加速しているな』というチームがあるのですが、今年はそれがない。最後まで順位は動くでしょう。とはいえ、残り試合を考えれば阪神がやや有利に思います。打撃成績や投手成績はよくないけど、僅差で勝てているのが大きい。ただ、絶対的な強さがあるようには見えない。マートンも例年のような安定感がないし、ゴメスも昨年ほどじゃない。投手陣もメッセンジャーと能見篤史で貯金をつくれていない。この先もこのようなゴチャゴチャした展開になると、経験豊富な巨人が上にいるかもしれない。阪神としては少しでも引き離しておきたいところでしょうね」

●金村義明(元近鉄、中日、西武)

「阪神有利と思っていましたが、甲子園でのヤクルト3連戦で藤浪晋太郎でしか勝てなかった。それに苦手の広島とまだ7試合も残っている。正直、3位もあると思います。そうなると、本命は巨人ですかね。菅野智之、マイコラス、ポレダが安定していて、チーム防御率はリーグトップ。最終的には投手力のあるチームが制すると思います。ヤクルトは、タイトルを争っている川端慎吾、山田哲人、畠山和洋の3人にバレンティンが加われば面白くなる。ただ、どのチームも決め手に欠け、一気に抜け出すようなことはないと思います」

●槇原寛己(元巨人)

「阪神はチーム打率、チーム防御率はそれほどよくありませんが、今年は競った試合で勝っている印象があります。そして阪神にとって大きいのは、藤浪晋太郎の成長でしょうね。彼が投げた試合は勝ちを計算できるし、なによりリリーフ陣を休ませることができる。9月の戦いというのは、投手力がカギになります。藤浪のように1試合を任せられる投手がいるチームが断然有利になります。巨人も菅野智之がいますが、いまひとつ波に乗り切れていません。いいピッチングはしているけど、相手を圧倒するような凄みが今年はありません。これからの菅野のピッチングにもよりますが、投手力という部分で阪神が少し上のような気がします。ヤクルトはリリーフがいいとはいえ、先発が最低でも7回を投げないと厳しいような気がします。リリーフがどこまで持つか、そこがカギになるでしょうね」

●藪恵壹(元阪神、アスレチックス、楽天ほか)

「優勝ラインを78勝とすると、阪神は残り23試合を16勝7敗、巨人は残り20試合を16勝4敗、ヤクルトは残り22試合を16勝6敗、広島は残り26試合を22勝4敗で戦わなければなりません。数字だけを見れば、阪神とヤクルトがやや有利に思えるのですが、阪神は苦手の広島とまだ7試合を残しており、ヤクルトも先発投手に不安を残している。間違いなく、残り10試合を切るまで混戦は続くと思います。ただ、ここ数試合の戦いを見ていると、巨人はちょっと厳しいかなと思いますね。離脱していたマイコラスがどんな状態で戻ってくるかにもよりますが、先発、リリーフともかつての力がありません。それに、これまでチームを支えていた阿部慎之助、村田修一、坂本勇人、長野久義に元気がない。起爆剤となる選手もいないし、4連覇どころか、Bクラスもあると思います。そうなると、優勝争いは阪神とヤクルト、そして広島の3球団に絞られるのですが、私は期待も込めて阪神を推したいです。藤浪晋太郎が成長し、他の投手への負担が減ったことがなにより大きい。一方、ヤクルトは先発陣が弱く、広島はリリーフ陣が不安定。投手力の差で阪神に分があるように思います」

●野口寿浩(元ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜)

「優勝マジックが出るのは、残り数試合になってからだと思います。ただ、阪神だけはもしかしたら早めにマジックが点灯するかもしれません。藤浪晋太郎、メッセンジャー、能見篤史、岩田稔と力のある先発陣が揃い、打線も福留孝介、ゴメス、マートンと実績のある選手が並んでいる。その中でもカギを握るのがゴメスでしょうね。いま調子はよくありませんが、彼が復調してくれば打線につながりができ、得点力もアップする。そうすれば一気に抜け出すかもしれません。ヤクルトは投手陣に不安を残しますが、攻撃力は間違いなくリーグトップ。とにかく打ち勝つ展開に持ち込めれば、勝機は出てくるかもしれません」

 どの解説者も最後まで混戦が続くと予想した。はたして最後に笑うのは、投手力の阪神か、攻撃力のヤクルトか、経験力の巨人か、それともファンの大歓声に後押しされた広島が勢いに乗るのか。目が離せない戦いは最後まで続きそうだ。

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya