ヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

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 新たな指揮官の下で試行錯誤を続ける日本代表は、ようやく「結果」を出した。これまで6月のW杯予選シンガポール戦の無得点に始まり、悪い流れが続いていたが、カンボジアに3-0で勝利して最低限の成果を挙げた。

 だがチームに笑顔は少ない。それは当然で、ボール支配率70%近い数字で34本のシュートを浴びせながらわずか3得点は満足いくものではないだろう。

 この試合に向けてヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「ラスト16m(=ペナルティエリア内)での仕掛け」と「ミドルシュート」の重要性を繰り返し強調していた。確かに手元で数えていた限りでは15回近く遠目からのシュートを狙い、実際2得点はミドルシュートから生まれた。

 一方「ラスト16m」には課題を多く残した。香川真司や武藤嘉紀がドリブルやワンツーパスで仕掛けてペナルティエリア内に侵入しても、次の選択肢は消極的なパスになる場面が散見された。42分、左サイドを深くえぐった武藤の折り返しに香川がGKの目の前で謎のパスを選択したのが最たる例だ。本人も言う通り「あってはいけないミス」である。

 右サイドから攻撃を組み立てた本田は勝てたことを評価すべきとしながら、「もう少し点が取れたと思うし、取り方に関してもチャンスの作り方に関しても当然まだまだだなというのが試合をやってみての率直な感想」と振り返る。

 そして監督から強く指摘された「ミドルシュート」も「それが昔から言われている日本代表の課題のひとつであるのは間違いない」としたが、その指示ばかりに気を取られることに「サッカーは何でも新しいものに取り組めばいいというものではないので、新しいものに取り組めば、前にできていたことができなくなるのがサッカー」と警鐘を鳴らす。

 確かにカンボジア戦では攻撃に柔軟性がなかった。相手に引かれていたとはいえ、サイドからじっくりチャンスをうかがうばかりで、アルベルト・ザッケローニ政権下で見せたような少ないタッチでのコンビネーションなど、細かい動きの崩しは数えるほど。ミドルシュートも“なんとなく言われたから打っている”だけのようなものも多い。

 キャプテンの長谷部誠はゴールへの意識の高まりを感じていたが、「やっぱりゴールの数は少ないですし、どうしてもこれだけ引かれると一人一人が考える時間が長くなってしまう」と新たな課題を指摘した。つまり本田が言う通り「チャンスの作り方がうまくない」のだ。

「サイドで2対2になる場面は結構あったんですけど、そこでのアイデアはもう少し必要だったと思う。そこでのボールタッチの数が多かったというか、考えて考えてプレーしている。あの辺でダイレクトだったり、ワンツーだったり、そういうのが入ると結構崩せた部分もあった。それをもう少し増やさないといけない」

 長谷部が語る理想形は以前のパスワークを重視していた日本代表の姿のような気がしてならない。過去のやり方に慣れた選手たちは、ハリルホジッチ監督のマインドを注入されて迷いが生じているのではないだろうか。

 依然アイデア不足で課題を抱えたままの日本代表。本田の言葉を借りれば「勝った時にこそ厳しく、何で3点しか取れなかったのかを見ていくべき」だろう。

text by 編集部