シュート数の割にゴールの数が少ない印象だが、藤田氏はそれよりもむしろ、国内組の突き上げのなさに危機感を覚えるという。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選のカンボジア戦で、日本は一方的な内容で3-0の勝利を収めた。元日本代表の藤田俊哉氏は、このゲームをどう評価するのだろうか。
 
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 試合前から日本のワンサイドゲームになることは想像できていたけど、これほどのシュートを浴びせることになるだろうとは正直思っていなかった。
 
 90分間でシュート34本。たくさんシュートを打ったんだなって感心する。単純計算しても、約2分に1本のペースでシュートを打ったのかな。実際のプレー時間は70分ぐらいだろうから、おそらく1分50秒に1本の割合でシュートシーンを迎えていることになる。
 
 あえて、カンボジアのGKの質については触れないけれど、シュート数に対して3回しかゴールネットを揺らせなかったのは少し物足りない数字だったかもしれない。だからといって、それで「日本は決定力不足だ」と言ってしまうのは、僕はちょっと違うんじゃないかなって感じている。
 
 この試合で日本は、ミドルレンジから本田圭佑、吉田麻也が積極的にシュートを放ち、しっかりゴールをこじ開けた。引いた相手に対しては、サイドの揺さぶりとミドルシュートが効果的であることは世界共通のキーワードだから。そこは評価すべき点だと思うし、そもそも、代表チームの決定力に満足している国なんてないのだから。
 
 だからビッグクラブはつねに優秀なストライカーの獲得を狙っている。世界的にも希少価値が高いからこそ、どのポジションよりも年棒が高いんだ。
 
 決定力不足というのは、万国共通でずっと永遠のテーマだと思っていい。もちろんメディアやサポーターからは、どんどんゴールを求める声を上げていけばいい。
 それよりも、日本代表の戦いを見るうえで最も大事なテーマは、なにはともあれ「ポジション争いの停滞」だよ。
 
 今回のカンボジア戦に限らず、これからもアジアを戦ううえで、日本のワンサイドゲームになることが多くなる。ましてやまだ2次予選なんだ。対戦相手の顔ぶれを改めて見ても、最終的にはトップ通過を果たして最終予選へと進むのはもはや決定事項だろう。
 
 選手を見るうえでのポイントは「日本の勝利に対して、選手たちはどれだけチームに貢献できたか?」。チームを見るうえでのポイントは「ワンサイドゲームの展開のなかで、どのように攻撃の形を作り出していくか?」だろう。
 
 守備面に関しては今回のカンボジア戦しかり、まったくもって評価対象とならない。選手11人はそれぞれ、攻撃面に関してどれだけの貢献度を示すことができたかどうかが、評価基準のバロメーターになるだろう。
 
 その意味で今回のカンボジア戦を総評すれば、3ゴールを奪った本田、吉田、おまけで香川は及第点をクリアしていたと言えるだろう。
 
 MVPは文句なしに本田だね。決して綺麗なシュートだったとは言えないけれど、停滞ムードを払拭する先制ゴールを決めたんだから評価に値する。前回のシンガポール戦では、ゴールの女神に嫌われ続けた結果、ドローという結果に終わったけれど、今回はゴールをこじ開けることができたんだから、チームとしても一歩前進したと言えるだろうしね。
 
 そして勝点3を取るための大事なゴールを奪ったのが本田だった。それがなにより、彼が「エース」であることを証明している。決してストライカーではないにもかかわらず、代表通算30ゴールにたどり着いたのは本当に凄い数字だよ。
 欲を言えば、その本田を押しのけようとする選手がなかなか出てこないのが寂しいよね。本田が中村俊輔からエースの座を奪ったのが2010年のことだから、もう5年も本田を脅かす存在が出てきていない。3年後のワールドカップも本田が不動の存在になっているのだとしたら……。
 
 やはり才能を考えれば、本来その地位を奪わなければいけないのは宇佐美だろう。でもその宇佐美が、7月以降公式戦でゴールを奪えず、今回のカンボジア戦でもベンチスタートだったのは、日本サッカー界の進歩という点で考えれば、非常に残念なことだった。
 
 本田をはじめとした海外組のプレーを見ても、まったく「焦り」は見られなかったよね? それは裏返せば、レギュラーポジションを脅かすほどの選手が台頭していないことを意味している。
 
 日本代表に戻ってきたら、ポジションはあるのだろうか――。
 この試合でゴールを奪わなければ次はないかもしれない――。
 
 そんな不安を抱えながら海外組がプレーするようになったら、日本代表に本物の「競争力」が生まれてくるんじゃないかな。
 
 そういった意味では、返す返すも東アジアカップの結果が残念でたまらない。あの大会で国内組と呼ばれる選手たちがしっかり結果を残していれば、彼ら自身も自信を持てたはずだし、カンボジア戦のスタメンにもおそらくもっと国内組の選手が名を連ねていたはずだろう。
 
 9月8日のアフガニスタン戦も、おそらく日本のワンサイドゲームで勝利するはずだけど、アウェーゲームは良い面だけでなく、悪い面も含めて選手の“質”がはっきりと映し出される。そうしたなかで、海外組にプレッシャーを与えるほどのインパクトを残せる選手は出てくるのか。
 
 それがアフガニスタン戦の最大の“焦点”だろう。