今後、ハリルホジッチ監督は香川の持ち味を引き出せるのか。この10番を中心としたチーム作りをする手もあるだろう。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 どこか眠気を誘う、まったりとした試合だった。

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 そうなった原因のひとつは、ジャブさえ繰り出そうとしなかったカンボジア代表の消極的なスタンスにあった。失点しても自陣に引いたままのアウェーチームからは、ギラギラとした戦意がまるで感じられなかった。
 
 一方で、そんなカンボジアを相手に3ゴールしか奪えなかった日本の戦い方にも、もちろん問題はあった。
 
 本田が試合後に「チャンスの作り方があまり上手くない。決定的にフリーになったのはシンジの場面(42分)くらいかな」とコメントしたように、圧倒的に攻め込みながらも最終局面で詰めの甘さを露呈した点がなによりいただけなかった。
 
 実際に日本の3ゴールを振り返っても、1点目が本田のミドル、2点目が吉田のこれまたミドル、そして3点目が敵のミスに乗じての香川の一発と、エリア内で完璧に崩しての得点はなかった。
 
 当然ながらサッカーに芸術点はないので、完璧に崩す必要はなくゴールさえ奪えばそれでいい。ただ、この日の日本はチャンスの作り方に加えてシュートも、吉田のミドルを除いて上手くなかった。
 
 ちなみに、ハリルホジッチ監督曰く「アクシデント」だった6月のシンガポール戦で目に付いたのも、シュート精度の低さだった。
 
 シンガポール代表のGKが好セーブを連発できた背景には、彼の守備範囲内にしかシュートを打てなかった日本の体たらくがあり、いわば日本の技術不足が招いたスコアレスドローだった。少なくとも、運に左右された結果ではなかっただろう。
 
 日本が攻め込み、カンボジアが引いて守る試合展開はシンガポール戦のそれと酷似しており、浮き彫りになった問題──オフェンスの質の低さも同じだった。これはすなわち、シンガポール戦からほとんど進歩していない事実を物語る。
 
 活動期間が少ない代表チームで急な進歩を求めるのは酷だが、はっきりとした攻撃の形、さらに明確なフィニッシュブローが見当たらなかったカンボジア戦で判断するかぎり、攻撃陣の再編に着手すべきだろうか。
 
 シンガポール戦も、カンボジア戦も、スタメン出場した前の4人はほぼ同じ顔ぶれ(前者は本田、岡崎、宇佐美、香川、後者は本田、岡崎、武藤、香川)。それで思うような結果を得られてないなら、例えば香川外しは現実的な選択肢かもしれない。
 
 実際のところ、近年の代表戦で香川は目立った活躍があまりない。1ゴールを決めたカンボジア戦でも強く印象に残ったのは、むしろ42分の決定機逸。普通に蹴り込めば得点になったところを、「慎重に行き過ぎて固くなってしまった」結果、GKに難なくキャッチされてしまったあの場面は失態以外の何物でもない。
 もちろん、攻撃陣の停滞は香川だけに責任があるわけではない。

 カンボジア戦では、無得点だった岡崎や武藤の出来も良くなかった。いずれにせよ、現行のメンバーで上手くオフェンスが機能しなかったのだから、次のアフガニスタン戦ではアウェーといえども違うユニットを試していいはずだ。
 
 日本にとって、ワールドカップ・アジア2次予選の山場はともにアウェーで臨む10月8日のシリア戦と11月12日のシンガポール戦。そこまでに解決策を見出す意味でも、アフガニスタン戦はチャレンジの場とすべきではないか。
 
 仮にチャレンジしてアフガニスタンに不覚を取れば、今の日本にはそこまでの実力しかなかったということだ。もしかすると、このあたりで黒星を喫して、チーム作りを一度見直したほうが将来を見据えるといいかもしれない。
 
 避けたいのは、攻撃面の課題をクリアせずに2次予選を突破してしまうことだ。アジアの強豪国が出揃う最終予選には、できればチームの完成形がある程度見えた形で臨みたい。
 
 今の日本は、いわば指揮者不在のオーケストラ。個々の能力でゴールをこじ開けているに過ぎず、重厚感溢れるアタックはほぼ皆無である。
 
 カンボジア戦のようにサイドからクロスを頻繁に上げるなら、例えば新潟の指宿(195センチ)のような大型CFを最前線に置く。単に欧州組を並べるのではなく、戦術にマッチした人材を起用するやり方で攻撃の形を作り出してもいいだろう。
 
 おそらく形さえ見えれば、チャンスは増えるだろうし、シュートの精度を問わないほどの決定機にも恵まれるはずだ。
 
 カンボジア戦後の会見で、ハリルホジッチ監督は「今後、どのような分野を伸ばさなければいけないかを、私は完璧に知っているつもりだ」と言った。どこかまったりとした日本代表の戦い方に“喝”を入れるためにも、有言実行を願いたい。
 
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)