ドルトムントで好パフォーマンスを見せていた香川だったが、トップ下で満足なプレーを見せられず。彼自身に問題があるのか、それとも周囲が香川の能力を活かせないのだろうか。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 勝って当たり前の相手からホームでたった3点しか奪えない、フラストレーションの溜まる試合だったね。6月にシンガポールが、カンボジア相手にアウェーで4点を取っていることを考えても、素直に喜べない勝利だ。
 
【PHOTOギャラリー】W杯アジア2次予選 第2戦|日本 3-0 カンボジア

 試合前日の記者会見で、ハリルホジッチ監督は3か月前のシンガポール戦のドローがアクシデントだったと思わせたいと意気込んでいたけれど、34本ものシュートを放ちながらスコアが3-0では、それを実現できたとは言い難い。
 
 とにかく日本の攻撃は単調で、工夫のないものだった。
 
 長谷部と山口の2ボランチは、ただボールを左右に散らすだけで、相手の急所を突くようなスルーパスを通せなかったし、両サイドは余裕を持ってフリーで上がっていくけど、ピンポイントのクロスを送ることができない。特に右SBの酒井は、精度の低さが目立っていたね。この程度の相手にあのパフォーマンスでは、先が思いやられるよ。
 
 香川も1点を取ったとはいえ、ゴールを決めるべきシーンで決められなかった。ドルトムントではあれだけ輝いているのに、なぜ日本に帰ってくると、いつも決まって同じようにプレーできないんだろう。ドイツでは周囲の選手に上手く活かしてもらって、日本代表では活かしてもらっていないということなのかな。
 
 また、香川がCKを蹴るという状況も改善すべき点だ。ワールドカップ予選のような舞台では、時にセットプレーが勝負を左右する。彼のキック精度では、正直心許ないよ。
 
 4試合未勝利という状況のなかで、選手たちがこの試合に向けて「絶対に勝たなくてはいけない」と、いつも以上に気合が入っていたのは間違いないけど、カンボジア程度の相手なら、もう少し肩の力を抜いて、余裕を持ってゲームに臨んでもらいたいものだ。
 
 もっとも、チームのなかで一番余裕がないように見えたのは、ハリルホジッチ監督だけどね。
 
 彼はこの試合に臨むにあたり、招集した選手のコンディションを見極めて起用するようなことを言っていたけれど、結局スタメンの11人中8人を欧州組が占めていた。ヨーロッパのシーズンが開幕したばかりで、長距離移動と時差で疲労を溜め込んでいるのに、だ。カンボジア相手に彼らの技術と経験に頼らざるを得ないほど、ハリルホジッチ監督は追い込まれていたのだろう。
 
 でも、本田は前半こそ目立っていたけど後半はほとんど歩いていたし、岡崎だってプレーにいつものキレがなかった。彼らは明らかに疲れていたんだ。8月の東アジアカップの時、ギリギリのスケジュールを嘆き、Jリーグの日程に噛み付いていたのは誰だったかな? 
 本来、ワールドカップ・アジア2次予選という舞台は、結果を求めながらも、最終予選に向けて様々なテストを行なっていく場だ。6人まで交代できる親善試合と違って、3人しか代えられない公式戦で、いかにそうした作業を行なっていけるかに、指揮官の手腕は試されるものだけど、今のハリルホジッチ監督の采配には物足りなさしか感じないね。
 
 果たして、試合の流れを劇的に変えるようなジョーカーは、日本のベンチに座っていたのか? 1か月以上もゴールを奪っていない宇佐美が今回も呼ばれて、東アジアカップで2ゴールを決めた浦和の武藤雄樹が呼ばれていないのが、僕は不思議でならない。
 
 シンガポール戦とほぼ同じメンバーで戦って、試合内容があまり良くならなかったのだから、そこに問題があるのは間違いない。チームで結果を出していないのに、欧州組だから起用されるのでは未来はないよ。もう少し、チーム内で競争させることが必要だし、次のアフガニスタン戦では、東アジアカップのメンバーにもっとチャンスを与えてあげるべきだ。
 
 結局、今回のカンボジア戦を見ても、「ハリルホジッチ監督のサッカー」がどんなものなのかが、伝わってこない。彼はこのチームで、どういうサッカーをしたいのか。縦に速いわけでもなく、いつも同じリズムで横パスを回しているだけ。相手が自陣深くで待ち構えているところに、工夫もなくボールを入れては弾き返される。
 
 横綱相撲を取るべき日本が、どこかドタバタしている。スタメンの顔ぶれはブラジル・ワールドカップの頃とほとんど変わらないのに、なんだか貫禄だけがなくなってきた。
 
 ピッチサイドで何度も天を仰ぐ監督の姿に、違和感を覚えるのは僕だけだろうか? カンボジア相手の2次予選。本来であれば、日本代表を率いる指揮官はベンチに深く腰掛け、落ち着いて戦況を見守るべきゲームなんだよ。