格下カンボジアを3-0で下し、「当然勝ったことは評価されるべき。どんな相手だろうと簡単に勝つことはできない」と、ロシア・ワールドカップ予選の初勝利を喜んだ本田だが……。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 前半の本田は、まさに攻撃の起点だった。サイドに開いてタメを作り、周囲と上手く連動しながら、何度もチャンスに結びつけた。

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 最初の決定機は12分。右サイドを駆け上がった酒井宏を上手く使って右サイドを崩す。さらに、22分にはグラウンダーのクロスで長谷部の決定機を演出し、25分には再び酒井宏にスルーパスを通して香川の決定的なシュートにつなげた。

 そして迎えた28分、山口からのショートパスを受けた直後に左足を一閃。相手GKの手を弾く強烈な無回転ミドルで、守りを固めるカンボジアから先制点を奪った。

「あれは入るとは思っていなかった。だから、入ってホッとしたのと、リードできたので気持ちを切り替えて2点目を取りに行きたいという感じでしたね」

 その後は、直接的にゴールに絡むことはなかったものの、常に高い位置取りでカンボジアを押し込み、3-0の勝利に貢献した。格下相手のホームゲームできっちりと結果を出した本田は、「当然勝ったことは評価されるべき。どんな相手だろうと簡単に勝つことはできないのは分かっていたのでね」と、まずはロシア・ワールドカップ予選の初勝利を喜んだ。

 もっとも、内容に満足した様子はなかった。「どんな相手にも簡単に勝つことができない……」の後に続けたのが、次の言葉だ。

「一方でね。もう少し点が取れたと思うし、チャンスの作り方は、当然まだまだだなっていうのが、試合をやってみての率直な感想ですね」

 多くのチャンスを作りながらも、「3点しか取れなかったと見ていくべきかなと思う」。そう切り捨てた本田は、さらに日本代表の根本的な問題についても踏み込んでいった。
「チャンスの作り方が、あまり上手くないと思うんですよね。決定的にフリーの場面は、前半の(香川)真司くらいかな。もっとああいう形を作れたはずなので、崩しのところがね。もっと相手を左右に揺さぶって、最終的に完全に崩すのも我慢すればやれないチームではないと思っているので。
 
 でも、それは普段やっているサッカーと違う考え方で挑まないとできないんですよ。サッカーをやっている人にしか分からないと思うんですけど、まったく違うマインドなので。『行けそうやから行く』っていうマインドだと、まず引っかかる。それで実際に引っかかったのが、シンガポール戦でしたからね」
 
 このカンボジア戦前まで4戦勝ちなしだったとはいえ、日本は依然としてアジアレベルでは強豪だ。当然、相手は守備を固めてくる。そこに「ヨーロッパでプレーしている選手たちの所属チームは、そんなに攻め込めるチームではない」というメンバーが集まっても、相手を圧倒する立場に上手く適応できないのは理解できなくはない。
 
「結局、点が取りたいというオーラが出た時の日本代表は、特にこういった相手には、(クロスを)上げられる時には上げるとか、行けそうな時に行くっていうのが、一点張りになりつつある。要はいろんなことをやるっていうのが足りないところ。今日は何人かの選手を含めて、その辺の“ヒネリ”やタメや駆け引きはできていたけど、それでも物足りないですね」
 
 カンボジアのような格下が相手でも、一本調子で変化をつけられない。つまり、日本代表が常に得点力不足に悩まされてきたのは、単純にフィニッシュの精度の問題だけではないということだ。サイドチェンジのパス、SBのオーバーラップのタイミング、ボランチの3列目からの飛び出し――。そうしたすべての要素が少しずつ足りないことが積み重なって、ゴール前の精度不足につながっているのだろう。
 
「ヒネリやタメや駆け引き」のレベルアップは、一朝一夕でできるものではない。「なにもかも上手くいくわけがないのは分かっているけど、やっぱり理想は追求していかなきゃいけない」というエースの苦悩は、今後も続きそうだ。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)