チーム3点目のゴールにも笑顔はなかった。香川自身も納得できる内容ではなかったのだろう。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 思わず、ゴールポストに蹴りを見舞う。

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 触れれば決まるような決定機を外した香川は、苛立ちを隠せなかった。
「慎重に行き過ぎて固くなってしまった。あってはいけないミスだった」
 
 この試合の立ち上がり、香川の動きは総じて悪くなかった。中央の限られたスペースでパスを引き出し、チャンスへの道筋を描いた。サイドに流れて細かいステップで相手をかわし、中距離のクロスを放つなど得意の形も作った。6月のシンガポール戦に比べれば、ゴールの匂いを漂わせる。
 
 そして30分、41分、42分と立て続けにビッグチャンスを迎えた。酒井宏のマイナスのクロスをニアで合わせ、山口とのワンツーを受けて右足を振り抜き、武藤の折り返しを押し込む。しかし、そのすべてを外した。冒頭の苛立ちは、42分のシュート直後のシーンだ。
 
 なんでもない横パスがタッチラインを割るようなレベルの相手に対し、崩しに関わったくらいでは評価できない。大事なのは、しっかりとゴールを奪い切ること。それは、香川本人も十分に承知している。
 
 61分には、そのゴールも決めた。今年1月のアジアカップ・ヨルダン戦以来の代表での得点。それでも、さほど喜びは沸いてこない。ミックスゾーンでの香川は、しきりに反省の言葉を並べた。
 
「チャンスはいっぱいありましたし、僕のは必ず決めなきゃいけないチャンス」
「決められるチャンスを外したことに対する課題は、尽きないと思う」
 
 煮え切らない――。そんな香川を見るのは、これが初めてではない。むしろ残念ながら、日本代表での見慣れた風景になってしまってもいる。
 ただ、この日の煮え切らなさは、決定機を外したことだけが原因ではないだろう。香川は後半、居心地の良いはずのトップ下で居場所を失っていたように見えたからだ。
 
 どこか自信なさそうに、ボールサイドから離れていく。中央でボールをもらう回数が減っていく。もちろん、味方のためにスペースを作っていたとも考えられる。香川本人が言うように、「真ん中はスペースが少なく、短いパスで崩せなかったので、それよりはシンプルに(クロスを)上げることを意識した」からでもあるだろう。
 
 ただ実際に、55分にはハリルホジッチ監督の指示を受け、武藤と入れ替わって左サイドにポジションを移す。そして皮肉にも、自身のゴールはポジションチェンジ後に生まれた。
 
「(左サイドは)練習でもやっていない。特に指示はなかったけど、張って起点を作るようには意識しました。戸惑いは特になかった。やることはチームで常に分かっているつもりなので」
 
 コメントから察するに、ゴールを奪う意識はトップ下でのそれのほうが強かったはずだ。本職で結果が出ない、そして最低限出した結果は思わぬ形――。背番号10のジレンマは続く。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)