米紙支局長がツイートで紹介

写真拡大

日本経済新聞社は入場をお断りします」。東京駅前の日本一高いビル建設の発表会見場にこんな珍しい貼り紙があった、とツイッターで紹介されて話題になっている。どんな事情があったのだろうか。

超高層ビル建設計画については、日経が2015年8月29日付朝刊の1面で他社に先駆けて書いた。実際は390メートルだったが、「東京駅前に400メートル級ビル」という見出しで報じた。

三菱地所「遺憾に感じております」

これに対し、計画主の三菱地所は31日、ホームページ上で報道関係あてに、「当社が発表したものではありません」とするニュースリリースを出した。これは、報道内容を事実上認める場合に使われることが多いが、今回は、それに異例の説明書きが付け加えられていた。

公平・正確な情報開示のため発表まで待ってほしいと報道各社に言っていたのに、日経が憶測を交えて事前に記事化したとして、「遺憾に感じております」と述べたのだ。

そして、31日の会見直前に、ツイッター上で、日経の出席を拒否する内容の貼り紙が会見場に掲示されたことを示す画像がアップされた。これは、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙東京支局のピーター・ランダース支局長の投稿だった。ツイートでは、三菱地所が日経の報道に報復していると紹介されていた。

こうした動きが情報サイトなどで紹介されると、ネット上では、様々な意見が書き込まれた。

日経への批判としては、「ダメと言われてるのに何故やってしまうのか」「スクープのために信頼を失った」という指摘が出た。一方で、擁護する意見もあり、「メディアとしては抜け駆けは当然」「メディアが企業と談合とか、もういい加減にしろ」といった声もあった。

日経「編集判断はお答えしておりません」

会見場の貼り紙について、三菱地所の広報部では、自社の方針から出したことを取材に認めたうえで、次のように説明した。

「われわれからは、会見の1週間前には、その案内を各報道機関にしています。緊急会見をすると迷惑をかけますので、準備の段取りを踏むためです。そのときに、事前の取材や報道を控えてほしいとの要望も同時に出しています。守られない場合は、会見場への入場をお断りしますとも伝えていました。それにもかかわらず日経が報道したため、貼り紙を出したまでのことです」

他社からクレームがつく可能性があるため、日経の記事が出たその日のうちに報道各社にこうした内容を連絡していたともいう。

日経に先に書いてもらい、他社への配慮から形式的に会見出席拒否にしたのでは、という一部の見方に対しては、「そうではありません」と否定した。

では、なぜ日経が書いたかについては、広報部担当者が担当記者に事情を聴いたところ、「出席を拒否されることを承知の上で書いた」と説明を受けたという。書いた理由をどう答えたかについては、「それは日経側に聞いてほしい」と言っている。今後の会見出席なども拒否するかについては、「そうもいきません」という。

日本経済新聞社の広報室では、取材に対し、「編集判断についてのお問い合わせは、この件を含めお答えしておりません」とだけコメントした。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙東京支局のランダース支局長は、取材にこう話す。

「会見出席拒否の背景は、把握していないところが多いので、どちらが正しいのかなどはよく分からないのが正直なところです。一般論としては、企業と約束したことならば、うちとしてもそれは守ります。書かないことを条件に情報提供してもらうことは、アメリカでもよくあることです。こんな貼り紙を会見場で見たのは、初めてのことですね」