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【石原壮一郎の名言に訊け】〜高田純次の巻

Q:今やっている仕事は、つまらないわけではないが、いまひとつ燃えるものが感じられない。このままの中途半端な気持ちで定年まで過ごすのかと考えると、絶望的な気持ちになる。悔いのない人生を過ごすためにも、どうせなら「これが自分の天職だ」と思える仕事に就きたい。しかし、どうすれば見つかるのだろうか。生き生きと働いている人たちは、どうやって「天職」と出合ったのだろうか。(北海道・28歳・食品)

A:何度も何度も転職を繰り返せば、やがて「天職」に……。というものでもありませんね。失礼しました。ちょうど今、ピッタリの人が、喫茶「いしはら」のカウンターでアイスコーヒーを飲んでいます。スナック「純」のマスターの純さんです。そろそろ還暦を迎えるらしいですが、毎日お客さん相手にテキトーなことばっかり言っていて、町内で彼ほど楽しそうに仕事をしている人はいません。「天職」についての相談、純さんはどう思いますか。

 えっ、俺に聞く? 転職ねえ。うーん、そうだ! 手に職をつければいいんじゃないかな。てにしょく……てんしょく、ってね。えっ、ダメ? とりあえず俺は、スナックのマスターが天職だと思ってるんだよね。だってほら、お店の仕事なわけでしょ。店の職でテンショク。間違いないよね。

 ごめん。マジメに答えるよ。あなたの気持ち、わかんないことはない。20代の頃って、迷うよね。自分にはあれもできるんじゃないか、これもできるんじゃないか、あれもやってみたい、これもやってみたいって。だけど、人間、そんなにたくさんのことはやれないんだよね。俺もほら、これだけの二枚目でしょ。昔は映画俳優が向いてんじゃないかって思ってたんだよなあ。いや、なるための努力はとくにしなかったけどさ。

「天職」っていえば、俺の心の師匠であり、人生の見本にさせてもらっている高田純次さんが、いいことを言ってるんだよ。ちょっと紹介するね。

「まあ何でもやればいいし、やってることを天職だって思い込むことも重要だと思うよ。その仕事がだめだったら、また次の仕事を天職だと思い込めばいいんだから。何でも思い込みだって」

 あなたが、今やっている仕事を「天職」と思い込める可能性があるのかどうか、それは俺にはわからない。ただ、最初から「俺の天職はどこだ〜」って探しに行っても見つかりっこないし、たまたまの「出合い」を期待するようなもんでもなさそうだよね。「天職」に出合っているように見える人は、どっかのタイミングで思い込んだんじゃないの。

 高田さんのこの言葉には、続きがあるんだ。「俺は世界一男前に生まれちゃって幸せだし、うちの女房は世界一きれい、俺の脚は日本一長いし、足の裏はバラの匂いがする。とにかく思い込む」だってさ。まさに高田節、シビレるよねー。俺の足の裏もジャスミンの匂いがするって、町内じゃ有名よ。あなたの足の裏だってラベンダーの匂いがするかもよ。あ、足の裏の話じゃないか。ともかく、探す努力じゃなくて、思い込む努力をしてみたらどうかな。

◆【今回の大人メソッド】「これが天職!」と思い込めばその瞬間に見つかる

 冒頭の小ネタを引っ張って恐縮ですが、転職を重ねたところで天職には出合えません。たしかに、思い込むことが容易な仕事もあれば、なかなか思い込めない仕事もありそうです。しかし、むしろ苦労して思い込んだほうが深く実感できるという一面もあるかも。もちろん、仕事と同様「天職」にも貴賤はありません。みんなでがんばって思い込みましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)