堂々と昼寝をするのは抵抗がある人もいるかもしれないが

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午後イチの会議やデスクワークの最中に、「いけない」と思いつつ気がつくと舟をこいでいた、という経験はないだろうか。傍目には怠けているように見える「居眠り」だが、効果的に昼寝をするには、もっとも有効な手段かもしれない。

昼寝で感情コントロール

過去の研究から、昼寝にはリフレッシュや疲労回復効果だけでなく、学習能力や記憶力を向上したり、創造性を高めたりする効果があり、勉強や仕事のパフォーマンス向上に役立つことがわかっている。また、心臓疾患のリスクが低下する可能性も示唆され、昼寝は健康にもよいと考えられている。これらに加え、最近、昼寝の新たな効用が明らかになった。

米ミシガン大学心理学部の研究チームは、18歳から50歳までの男女40人を対象に、昼寝が感情のコントロールに与える影響について調査した。参加者は3日間、一貫した睡眠スケジュールに従って睡眠をとり、実験に臨んだ。当日は室内でコンピューターを使った課題と、眠気や気分、衝動性に関する質問に回答。途中で60分間、仮眠をとるグループとビデオ視聴をするグループに分かれた。その後、それぞれ作業を再開し、完了するまで続けた。その結果、昼寝をしたグループは課題解決まで時間をかけて取り組むことができたのに対し、ビデオを視聴していたグループは最後まで忍耐力が続かない傾向が見られた。また、昼寝をした人はより衝動をコントロールすることができたという。

研究者らはこの結果について、「長時間眠らずにいるとネガティブな感情をコントロールすることが困難になる。昼寝は長時間、難しい課題やストレスがたまる仕事に取り組む人にとって、有益な介入になりうることが分かった」とコメントしている。論文は2015年6月24日、「Personality and Individual Differences」オンライン版に掲載された。

仮眠室では「昼寝」にならない

今回の実験では昼寝の時間は60分間だったが、現実的には夜勤でもない限り1時間も昼寝ができる職場はめったにないだろう。また、30分を過ぎると熟睡モードに入ってしまい、かえって頭がぼーっとしたり、夜間の睡眠に支障が出たりするので、昼寝の時間は20〜30分が適当という意見も多い。

米国では30分以内の昼寝を「パワーナップ(power-nap、napは昼寝の意)」と呼び、アップルやナイキ、グーグルなどの大企業も仮眠室や「スリーピング・ポッド」という昼寝用のカプセルを導入し、デスクを離れてパワーナップをとることを推奨している。一方で、昼寝制度を導入したところ、かえって生産性が下がったケースもある。カナダのIT企業、アスク・フォー・タスク・ドットコム社では、ときに週70時間以上の長時間労働をすることもあるウェブ開発者のために、日中15分程度のパワーナップがとれるよう仮眠室を設置した。ところが、長時間眠ってしまう社員が続出。覚醒するまでに時間がかかり、生産性が3割も減少したという。あまり居心地の良すぎる仮眠室も考えものだ。

日本で昼寝を公認している数少ない企業のひとつ、住宅リフォーム会社のOKUTAでは、社員はデスクに突っ伏して仮眠をとっている。制限時間などのルールはないが、20分程度で起き、仕事を再開する人がほとんど。同社ではこうした自席での「居眠り」を容認したことで、個人の能率だけでなく、会社全体の活性化につながったという。

人前で眠る習慣のない外国人には抵抗があるかもしれないが、電車の中でも公園のベンチでも、国会の審議中でさえ公然と居眠りできる日本人には、短時間の昼寝ならデスクで十分。むしろ人目があるからこそ寝過ごすことを避けられる。居眠り公認の企業が増えれば、日本の生産性は向上するかもしれない。[監修:浜中聡子 AACクリニック銀座院長]

参考論文
Napping to modulate frustration and impulsivity: A pilot study.
DOI:10.1016/j.paid.2015.06.013

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