「チャンスが入らなかった時に、決めなければいけない雰囲気になって悪循環になるのが今までの流れ。前回の反省を生かして、そこで一つひねったようなプレーとか、わざとテンポを変えるようなプレーもやりたい。もちろん前半で(ゴールが)入れば、そのテンポのままで行く可能性もあります。そこは状況に応じてなんで」

 本田が一足早く話していたとおり、ピッチ内に求められるのは臨機応変さ。仮に再びシンガポール戦のような展開になるとしても、「必ずしも監督が言っていることが当てはまらないケースもある」とも触れている。スカウティングや監督の狙いを踏まえた上で、ピッチ内での判断と意識共有が重要になることは当然のこととしていた。

 ゴールへ直結する素早いプレーを最優先に考えるのは従前のとおり。最終ラインの裏にスペースがあれば、GKの間にボールを入れていけばいい。サイドから切れ込んで相手を食いつかせれば、次は裏が空いて後方からのオーバーラップが生きるかもしれない。一方のサイドでボールを回して相手を寄せれば、サイドチェンジが狙えるはずだ。くさびのパスを打ち込めばマークが動くし、ドリブルで仕掛けて一人をはがせば、次の選手が寄ってきてマークがずれるだろう。選手間に生まれるギャップ=小さなスペースに走り込んで人とボールが動く形でのダイレクトプレーを織り交ぜれば、マークのズレとスペースメイクが期待できる。ダイアゴナル(斜め方向)のパスと相手の背後を狙うパターンを使い分ければ、相手の混乱を呼び起こせる。ワンタッチで素早くボールをポゼッションする中でボール保持者への寄せが甘ければミドルシュートを狙えばいい。そこで相手が前へ出てきたら、マーカーが動いたスペースを使うまでだ。どんどんペナルティエリアに入っていけば、PK獲得の可能性が高まるのは言うまでもない。

 ハリルホジッチ監督も「ソリューションに関しては選手でも監督でもなく、試合の状況が決める」としている。相手の出方次第で選手たちがどう判断するか。個の力で打開できることもあれば、連動した攻撃を仕掛けることも必要となる。考え方や狙いは非常にシンプルなものばかり。カギは意思共有を含めたコンビネーションにある。

 この要求は以前から変わらない部分だ。キャプテンの長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)は監督の狙いについて「ピッチの中でやるのはキミたちなんだから、そこは臨機応変にやれと常に言われてきた。シンガポール戦ではそこを選手が発揮できなかった。自分を含めて経験ある選手がやっていかなければいけないところだと思う」としており、自戒の念を込めてカンボジア戦のピッチに立つことになる。

 当然ながら攻撃ばかりを考えていればいいわけではない。合宿初日に監督とマンツーマンで短い縦パスからの飛び出しとミドルシュートの居残り練習に取り組んでいた山口蛍(セレッソ大阪)は、「得点力やミドルシュートの意識は今以上にどん欲にならなければいけないし、攻撃には絡んでいきたい。勝ちに対してはすごく飢えている」としながら、「ただ、カウンターには気をつけなければいけない。相手GKがキャッチした瞬間を含めて、攻守の切り替えに関しては、攻撃よりも徹底したほうがいい。その一つ目を自分がうまく防げれば」と気持ちを引き締めていた。

 今はとにかくゴール、そして勝利という結果が欲しい日本代表だが、まずは平常心で臨み、冷静にピッチ内の状況を判断して、様々な形で焦らずに相手を崩しに掛かってほしい。当然ながらハリルホジッチ監督が求めるものだけを表現していても結果は得られないし、もちろん指揮官も決してそれを求めているわけではない。選手たちの成長を促している部分もあるはずだ。

 出航したばかりのロシア行きの船がこんなところで座礁するわけにはいかない。目指すべき高みに向かうための最初の試練。実力的には勝って当然の相手かもしれないが、選手たちが手にするべき臨機応変さは、必ずや未来につながるもの。本田は練習初日から「結果を出せていないことに対しての危機感はあります。それをいい結果に結び付けたい。日本代表は結果を残し続けないといけない。監督の要求は先を見据えてのものなので、そこは目指していきたい」とも話していた。ハリルホジッチ監督の求めるところは、当然ながらもっと高いところにある。

 ハリルの戦略と勝利への強い意思を持って臨む9月シリーズ。今合宿を通じて「とにかく勝利しかない。確固たる決意を持ってゴールを、そして勝利を目指そう」と伝え続けてきた指揮官の下、日本代表が自らの力で“ゼロの呪縛”を解き放ち、新たな一歩を踏み出す。