写真提供:マイナビニュース

写真拡大

日立製作所と日本アキュレイは9月2日、日立メディコの柏事業所内に「日立高精度放射線治療研修センター」を開設した。

同研修センターは、放射線治療システム「トモセラピーシステム」のサポート体制の拡充ならびに両社の放射線治療システム事業の強化・拡大を目的とする。具体的には、米アキュレイが提供するトモセラピーシステムを設置し、放射線腫瘍医や診療放射線技師、医学物理士が実機に触れながら、操作や管理方法などの一連の研修プログラムを学ぶことができる施設となっている。

「トモセラピーシステム」は、CTスキャナと放射線治療システムを統合した医療機器で、治療前に患者の位置合わせを行うことにより、がんに対して高精度に放射線を照射することができる。また、放射線の強度を変化させて照射できるため、がんの形状に合わせた放射が可能だ。

○効果は手術と同等も普及に課題

同システムなどを用いる高精度放射線治療は、従来の放射線治療とは異なり、がんにピンポイントに照射することができるため、ほかの臓器へのダメージを抑えることができ、副作用を抑えることができるというメリットがある。また、その効果も手術と同程度であるとされ、欧米ではがん患者の約5割が放射線治療を受けているという。これに対し、国内で放射線治療を受けているがん患者は約3割にとどまり、日本での普及はまだこれからといった段階にある。

普及が進まない一方で、同研修センターの開所式に先立って講演を行った東京大学医学部付属病院 放射線科の中川恵一 准教授は国内における必要性の高さを次のように説明する。「生活習慣の変化によって日本人のがんの種類も"欧米化"しており、昔は胃がんが多かったが、現在は男性では前立腺がん、女性は乳がん、全体では大腸がんが増えている。胃は手術しやすいが大腸は奥にあるから手術しにくい」。がんが欧米化しているのであれば、治療法も欧米化する必要があるというわけだ。

また、「がん治療といえば手術」という図式が出来上がっていることも普及を阻害している。上述のように手術しやすい胃がんがこれまでは多かったことも一因だが、中川准教授は「日本ではドラマや漫画などの影響で『がん治療といえば手術』という思い込みがある。もっと学校でがんの治療法について教えることで、(一般の人が)治療法について正しい認識を持てば放射線治療がもっと普及する。」と語り、選択肢を認識することの重要性を強調した。

このほか、日本では4種の病態しか保険でカバーされていない(米国は18種)、機器がまだ高価かつ大規模になってしまい導入ハードルが高いといった課題もあり、高精度放射線治療の本格普及に向けて道のりは長い。しかし、患者に対して負担が少ないという同治療法の特長は、高齢化が進む日本ではメリットが大きく、ニーズはますます拡大すると予想されるだけに、「日立高精度放射線治療研修センター」は高精度放射線治療の浸透に向けた拠点のひとつとなることが期待される。

(神山翔)