日本人の死因、第4位の脳卒中。死亡率こそ治療の進歩で低下しているが、患者数は相変わらず多い。くも膜下出血など脳出血は激減したが、逆に血管が詰まる脳梗塞は増加している。

 脳梗塞の危険因子は高血圧などの生活習慣病と喫煙、飲酒、そして加齢。脳梗塞のタイプによっては主要な血管が詰まり、脳の広い範囲が障害され死亡率も高い。また運よく回復したとしても、言語障害や運動機能障害が残る。

 先日、米国心臓病協会、米国脳卒中協会による脳卒中治療ガイドラインが発表された。発症直後の脳梗塞に対する治療の第1選択として、従来の血栓溶解療法(t-PA治療)と、血管内の血栓をワイヤ状の機具で絡め取る「ステント型血栓回収機器」を使った血栓除去治療の併用が推奨されることになったのだ。

 つまり、詰まった血栓を点滴薬で溶かす治療の後に、間髪を入れずカテーテルを足の付け根から挿入し、脳血管内に溶け残った血栓を根こそぎ除去するというもの。

 t-PA治療とステント型血栓回収機器を使った血栓除去治療の有効性と安全性を検討した五つの大規模試験では、いずれもt-PA治療群より併用群で脳血流の再開率が高く、安全性も優れていた。

 何より、マヒや言語障害といった脳梗塞後の後遺症が少なく、併用群では治療後の生活自立度が高かった点が評価され、今回の推奨に至ったと思われる。

 脳梗塞治療を成功させる鍵は、一にも二にも時短。発症から全ての治療が終了するまでの時間が短いほど、発症前の状態に戻れる可能性が高い。当然、併用法でもt-PA治療から血栓除去治療に移行する際のタイムラグをいかに減らすかがポイントだ。

 日本でステント型血栓回収機器が保険適応されたのは昨年の7月。まだ普及途上で治療ができる施設も医師数も少ない。現在、一部の地域ではt-PA治療中の患者を救急車で血栓除去治療が可能な施設に転送し、直ちに血栓回収を行う試みが始まっている。搬送中の急変時への対応など課題はあるが、急性期脳梗塞の治療は確実に新しい時代に入った。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)