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2014年は、日本のインターネット広告費が初めて1兆円を超えた年となった。

日本の総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2014年 日本の広告費(2015年2月電通発表)」によると、総広告費は6兆1522億円と前年比102.9%となり、3年連続で前年実績を上回る結果に。この数字を押し上げたのが、媒体別で最も高い成長率を示したインターネット広告だ。スマートフォンや動画、新たなアドテクノロジーを駆使した広告が伸び、前年比112.1%の1兆519億円を記録している。

同じ年、モバイルを利用した広告コミュニケーション・マーケティング活動の普及を願い創設され、2002年から12回に渡って開催されてきた「モバイル広告大賞」が、「コードアワード」として生まれ変わった。

広告コミュニケーション・マーケティングの領域では、モバイルに限らず、あらゆるデジタルツールや技術を活用した施策の立案が標準化してきている。それらの取り組みを包括した賞に刷新されたといえるだろう。

同広告大賞を主催するD2C 代表取締役社長 宝珠山卓志氏に、モバイル広告大賞の創設からコードアワードへと刷新した狙い、広告賞から見えてくるトレンドを中心に話を伺った。

○「日本はモバイルマーケティング先進国」として認知された

宝珠山氏 :今でこそモバイル広告という用語は普通に使われていますが、2000年当時の日本は「モバイル広告って何?」みたいな世界だったんです。ちなみに、世界を見渡しても、モバイル広告賞は存在していませんでした。そんな時代において、弊社は大きく2つの目的があり、モバイル広告大賞を創設しました。

1つ目は、モバイル広告という産業の地位向上です。広告主も上長を一生懸命説得して、新しい形の広告を出稿しようと決めてくれたわけですし、広告代理店やプロダクションも、これまでにない新しい取り組みに挑戦してくれたわけですから、関わった人たちの名前が残るものを作りたかった。これが最初のきっかけですね。

2つ目は、メディアに取り上げてもらいやすくすることです。「新しい広告(枠)ができました」とアピールしても、広告商品の売り込みにしか見えないので、ニュースになりにくいんですよね。一方で、広告大賞なら注目を集め、記事化されやすいのではないかと思いました。

――― 前例のない広告大賞ということで、初回はご苦労されたのではないでしょうか。

第1回は応募作品を集めるのが大変でしたね。営業マン全員で、関わりのある広告代理店に対し「応募していただけませんか」と地道にお願いしてまわりました。結果、無事に開催できた上にかなり好評だったんです。

受賞作品のクライアントは自分たちのやってきたことが社内に認められ、広告代理店担当者は社内に対して良いPRになったみたいで。その後、モバイル広告大賞そのものも「世界のモバイルマーケティングにおける先端事例集」として、海外でも知名度を上げていきました。

それに伴い、モバイル広告大賞を主催する日本はモバイルマーケティングの先進国で、その流れを中心的に率いているのがD2Cだとグローバルに伝わっていく、うれしい効果もありましたね。

――― 受賞作品の傾向は、回を重ねる度にどう変遷していったのでしょう。

モバイル広告大賞は2002年〜2013年まで開催しました。この12年は新たなテクノロジーが次々と生まれる時代だったこともあり、それらを用いた作品が目立ちましたね。とくに通信速度が上がり始めてからは、できることが格段に広がりましたから。

たとえば、バナー広告はモノクロからカラーになり、モバイル広告は単なる広告ではなくマーケティングツールとしても活用されるようになりました。作品の質も内容も大きく変わっていきましたね。

とくに当時画期的だったのは、顧客接点の中心をモバイルに据えて、周辺に4マスメディアを置いて施策を行う会社が現れたこと。モバイルが普及してから、キャンペーンが劇的に進化していったんです。

2003年には、モバイルのみのキャンペーンでもオープン懸賞になることが認められ、モバイルを絡めるキャンペーンが急増しました。商品購入時に付いている8桁のデジタルコードを入力して、ハズれると待ち受け画像や着メロをもらえる、といった企画が流行っていた頃ですね。

○マルチデバイス時代のデジタルマーケティングを象徴する賞に

2014年に「コードアワード」として刷新してからは、アイデア勝負の受賞作品が増えたと感じています。制作には一般のWeb制作会社ではなく、クリエイティブブティックが携わっているケースが多く、作品のクリエイティビティが年々高まっている印象です。

モバイルの新技術は踊り場に来ていて、新しいものはなかなか出てきません。そんな制約のあるなかで、どうすれば面白い展開ができるか、別の視点から考える必要があります。昔は新技術を使えば勝てたのでしょうが、今はアイデアで勝負する時代になったのだといえるでしょう。

――― 刷新するに至った背景についても教えていただけますか?

世界的には今も、モバイルアドをはじめ「モバイル〇〇」と表現するのが一般的ですが、日本はモバイルという単語が先行した後に、スマホという別の単語が浸透しました。そのため、「モバイル=ガラケー」「スマホ=スマートフォン」といった、グローバルのそれとは異なる認知が広がったんですよね(笑)。

クライアント側の意識もモバイルを用いた施策をするのが普通になりましたし、スマホやタブレット、PCなど、あらゆるデバイスを含めて、デジタルのキャンペーンやマーケティングが成り立っているわけです。

ですので、モバイルという言葉でくくるのも今っぽくないですし、モバイル広告というと若干古くさい響きもありますよね。そこで、デジタル体験の創造性(Creativity Of Digital Experiences : CODE)の頭文字で、デジタルの世界を形成するソースコードにちなんで、賞の名称を「コードアワード」としました。

――― 賞の構成ではどのようなことを意識しましたか?

設定を細かく分けたことでしょうか。広告・マーケティング領域において、デジタルを用いたものが本流になっていますが、その中でも取り組みが実験的だったり、クリエイティブに特化していたり、効果が顕著に出ていたりと、エッジの立っている部分は作品によってさまざまですよね。

デジタル施策を行うにしても、その中の何で勝負するかはクライアントによって違います。審査員の先生方もデジタルの状況を理解しているので、すべての作品を同じ土俵で論じるべきではない、と感じているようです。

時代やトレンド、状況によって変わっていくかもしれませんが、今は「グランプリ」「キャンペーン」「イノベーション」「クラフト」「イフェクティブ」(グランプリ以外はベスト1作品、グッド2作品)と「パブリックベスト」の計6種類の賞を用意しています。

コードアワード2015 受賞作品一部
――― プロが選定・評価する賞が多いなか、一般人が参加できる賞(パブリックベスト)は珍しいですよね。

他の賞はデジタルの技術を理解した有識者が選びますが、パブリックベストは視点が違います。ある意味で一般の方の視点による、万人受けする賞といえるでしょう。

パブリックベストを作った理由は、デジタルマーケティングが企業と消費者との距離を近づけたと感じたからです。SNSが一般化した2008年以降、SNSを通じて情報が爆発的に拡散するようになりましたよね。

○企業と消費者の「ほぼ対等な関係性」を施策に落とし込み、共感させる

――― 確かに。面白いキャンペーンだと、消費者に支持されシェアされて、あっという間に伝播しますよね。

消費者に嫌われた瞬間にキャンペーンは失敗に終わります。一方で、消費者は神様ではありませんから、媚びるのもダメ。企業と消費者の関係はほぼ対等で、消費者のほうが若干強いかな、くらいのパワーバランスを意識して、消費者と接することが大事です。さじ加減はすごく難しいですよね。

また、SNSが登場したことで、消費者と企業の関係は変わってきました。マーケティングの概念自体が消費者への「売り込み」から、「共感」「エンゲージメント」へと移り変わっています。納得して満足してもらった後で、商品を買ってもらうといった形です。

さらに、通信のリアルタイム化と高速化で、チャットなどもほぼ時差なくできるようになりましたよね。結果、マーケティングのあり方も、変わらざるを得なかったのかもしれません。コミュニケーションツールを用いたデジタルマーケティング施策を提案する広告代理店も増えたと思います。

企業がコミュニケーションツールを使った取り組みを行うなら、専任者を何人もつけて本腰を入れなくてはダメで、中途半端に片手間でやるのが一番危険です。会社を代表して発信している、という意識を軽く考えてはいけません。

――― 最後に。これからの広告代理店に求められる姿勢、意識すべき課題とは何でしょうか。

メディアを売るのではなく、企業と消費者をつなぐという、根本的な発想に立ち返ってみることが大切です。企業と消費者がリアルタイムでコミュニケーションを図るのが当たり前になった時代に、自分たちがどうビジネスを作っていくか、時代の変化を読んでどう対策を変えていくのかが課題ですよね。

そこにデジタルツールは必要不可欠。リアルとの橋渡しにデジタルを用いて、企業と消費者とのコミュニケーションや関係性を正しく理解できる人が、消費者に共感されるものを創っていけるのだと思います。

(池田園子)