『日本のロック名盤ベスト100 (講談社現代新書)』川崎 大助 講談社

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「なぜ日本のロック音楽には、今までただのひとつも、ランキングされたオールタイム・ベストの名盤リストがないのだろうか?」という疑問から、本書『日本のロック名盤ベスト100』を執筆したというのは、作家として活躍する川崎大助さん。

 本書では、日本のロック名盤アルバム1位から100位までのランキング、そのそれぞれについてのレビューとともに、現在にいたるまで日本のロックが歩んできた歴史についても総覧していきます。

 川崎さんによるランキングの基準は、「ある種の音楽的一徹さ、研究熱心さ」「オリジナリティ」「革新性」「大衆性」「影響度」の5つ。

 なかでも最も重要視したというのは、影響度。同時代的に、あるいは後進に、どれほどの影響を肯定的な意味で与えることができたか、ファンやミュージシャンへの影響のみならず、社会的・文化風俗的に、その一枚が与えた影響を考慮したといいます。

 こうした指標に基づきランキングされた作品の数々。10位までを少し眺めてみると、1位から順に、はっぴいえんど『風街ろまん』(71年)、RCサクセション『ラプソディー』(80年)、ザ・ブルーハーツ『ザ・ブルーハーツ』(87年)、イエロー・マジック・オーケストラ『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』」(79年)、矢沢永吉『ゴールドラッシュ』(78年)、喜納昌吉&チャンプルーズ『喜納昌吉&チャンプルーズ』(77年)、大滝詠一『ロング・バケイション』(81年)、フィッシュマンズ『空中キャンプ』(96年)、サディスティック・ミカ・バンド『黒船』(74年)、コーネリアス『FANTASMA』(97年)。

 10位にあげられたコーネリアスは、一般的に渋谷系と評されることも多いですが、川崎さんは93年に自ら出資して創刊したというインディー雑誌『米国音楽』を通じて、この渋谷系のシーンに属する音楽家たちと関係をもったといいます。

 そこで本書では、まさに渦中にいたともいえる川崎さんがみた渋谷系についての考察も、当時のエピソードを交えながらなされます。そのなかで川崎さんは、渋谷系は80年代までのポップ文化のすべてを総括するような運動であり、日本のロックのひとつの総決算だったのではないかと分析。またその世代が65年〜70年生まれであることに注目し、戦後にロックの誕生を目撃した第一世代の子どもたちによって形作られたものだったのではないかと指摘します。

「渋谷系とは、『父の世代の影』を通して、戦争と戦後を、アメリカと日本の関係と冷戦を、そして『ロックンロールの誕生と発展』を透視することができた、最後の世代だったのではないだろうか」(本書より)

 自分ならば、どの作品を何位に選ぶだろうかと、思いを巡らせながら本書を読むのも楽しいかもしれません。