昨年のUSオープン(全米OP)で、アジア人初の準優勝に輝いた錦織圭は、自己最高のATPランキング4位になって、ニューヨークへ帰って来た。そして今大会、グランドスラムで日本人選手最高の第4シードを獲得した。

「(第4シードは)あんまり考えてなかったですね。今言われてふと思い出しましたけど、やる相手は、最終的には変わらないし、トップ4の2人、3人は倒さないと優勝はできないので、それが決勝でやるか、その前にやるかの違いだと思う。そんなに僕自身は、シードについて考えたことはなかったです」

 開幕前に、マイケル・チャンコーチは「圭は練習もトレーニングもハードにこなして、とてもいい状態です。フィーリングもいい」と語っていたが、1回戦の対戦相手であるベノワ・ペール(フランス・41位)については「クロスマッチになるだろう」と警戒した。

 また、ダンテ・ボッティーニコーチは、昨年の準優勝により錦織に注目が集まることを心配した。

「周囲の期待が高まるのは、当然のことです。圭はそれにうまく対処していく必要があります。毎日、そして試合ごとに集中して、ラケットを扱っていかないといけない」

 過去の対戦で、ペールに2勝していた錦織は、ペールのバックハンドストロークについて、自分の中では五本の指に入ると高く評価していた。スピードの速いラリーでは、ペールがウィナーを打ち込む場面が多く見られた。さらに、身長196センチから打ち下ろされる高速サーブが、錦織にリズムをつかませなかった。

 だが錦織は、苦戦しながらもセットカウント2−1、第4セットのタイブレークで2回のマッチポイントをつかむが、いずれも錦織のミスによって逃した。

「4セット目のタイブレークを、頭で引きずっていた。彼をどう崩すか、頭に入っていなかった。自分のテニスが悪かったというよりも、彼の好きなテニスをさせてしまった」(錦織)

 昨年の左ひざのけがから復活したペールは、試合中にアップダウンのある選手で、集中力が持続しないことが多かったが、今回は最後まで崩れることなく、21本のサービスエースを打ち込んだ。結局、錦織は、4−6、6−3、6−4、6−7(6)、4−6で敗れ、昨年準優勝のランキングポイント1200点を守ることができなかった。全米後、錦織のランキングは7位前後に落ちる予定だ。

「多くのポイントを守ることは簡単なことではないから、たぶん圭はナーバスになったんじゃないかな。自分のキャリアの中で最も大きな勝利です」。錦織から初めて勝利を挙げたペールは、興奮気味に試合を振り返った。錦織にとって、1回戦にしては、タフな対戦相手ではあったものの、まさかの敗戦で記者会見での彼の表情は終始硬かった。実は、2015年シーズンでの錦織の1回戦負けは、今回の全米が初めてのことだった。

「やっぱり悔しいですね。久しぶりの1回戦負けなので。特にこういった大きな大会で、負けるのも久しい。まっ、しょうがないとしか言いようがないので、次の準備をして、練習したいと思います」

「第4シード」といったような肩書きで勝てる保証はどこにもなく、約11ヵ月に及ぶワールドテニスツアーでは、今回のような手痛い敗戦は、いつでも起こり得る。それがグランドスラム、全米オープンで起こってしまったのは非常に残念だ。だが、選手にとっては敗戦から学ぶことも多い。この敗戦を糧にして、錦織はトッププレーヤーとしてのさらなる成長を遂げなければならない。

 そして、これからも大舞台で、錦織がステップを一段ずつ上がっていくためには、チャンコーチのサポートは必要不可欠だ。

「多くの人からの圭への期待は、たしかに大きくなっています。彼はより良くなっていますし、今年さらにステップアップできればいいですね。でも、焦りは禁物です。1試合1試合できることをやっていくだけです」

 こう語ったチャンは、時には厳しく、時には温かく、そして冷静に錦織をこれからも見守っていく。

「ロンドンを目指したい」と話す錦織は、年間成績上位8人しか出場できないATPワールドツアーファイナルズに2年連続で出場できるよう、シーズン終盤に向けてスパートをかける。

神仁司●文・写真 text by Ko Hitoshi