「レスターみたいなチームは、あまり勘違いしちゃいけないと感じました。もちろん、(好スタートを切って)勘違いしているということではなく、やっぱりチームとして自分たちのやれることをやらないと。相手は自信を持ってパスを回していた。でも、レスターは自分たちの癖で引いてしまう。がっつり相手にハメ込んでいったほうが、ボーンマスのようなチームなら焦ってボールを蹴るんじゃないか。そう思っていた」

 レスター移籍後、公式戦で初めて先発から外れた岡崎慎司は、ベンチで戦況を見つめながらそう分析していたという。

 岡崎の見解どおり、前半のレスターは大いに苦戦した。チームを率いるクラウディオ・ラニエリ監督は前節のトッテナム・ホットスパー戦での先発メンバーから日本代表FWを外し、代わりに攻撃的MFのエンゴロ・カンテを起用。「勝っているチームはいじらない」との格言があるように、「乗っているチームはいじらない」(※3戦無敗)のが鉄則であるように思えたが、ラニエリ監督は人選と布陣を変えてきた。だが、中盤を厚くした4−1−4−1でボールを支配しようとする指揮官のもくろみは、もろくも崩れ去った。

 対戦相手のボーンマスは、前線から積極的にプレスを仕掛けてきた。ボールホルダーに激しく寄せ、いったん奪えばサイドの味方を走らせる縦パスでチャンスを作る。するとレスターは、彼らの圧力に押されるようにして劣勢にまわり、良いところのないまま0−1で試合を折り返した。レスターのやりたいことを相手にやられてしまった──。そんな前半だった。

 試合の流れを変えたい。ラニエリ監督もそう感じたのだろう。ハーフタイムに入ると、岡崎はフィジカルコーチと1対1で強めのアップを開始。ベンチに置いてあった背番号20のユニホームを掴み、後半頭からピッチに立った。

 ここから、ようやく3戦無敗中のレスターが本来の姿を取り戻した。4−4−2の2トップの一角、セカンド・ストライカーの位置に入った岡崎は、全速力でパスコースを切りながら敵に寄せていく。パスコースが限定されたことで、中盤の守備は引き締まり、試合の流れも圧力で上回るレスターへと傾いていった。その証拠に、前半は腕を左右に動かし、何度もプレスの指示を送っていたラニエリも、後半に入るとその腕を振ることがほとんどなくなっていた。

 その岡崎の献身性が得点に結びついたのが85分。自陣で猛チャージをかけてボールを奪取すると、ショートカウンターにつなげ、前線を抜けたFWジェイミー・バーディーがPKを獲得。土壇場で同点に追いついた。

 前半は完全に孤立していたバーディーも、岡崎と良い距離感を保つことでポストプレー、ワンツーとプレーの幅が一気に広がった。守備ではアグレッシブなプレスで活力を与え、攻撃では前線と中盤をつなぐ潤滑油として機能することで、岡崎は勝ち点1の獲得に貢献したのである。彼は言う。

「そういうところでチームに貢献していることには自信を持っている。目に見えにくいところで、みんなの力になっていると。それがないと(あそこまで)走れないんで。たとえば後半にバーディーが見せていた良さは、前半ではあまり出せていなかった。だから僕が前線と中盤の境目に陣取り、セカンドボールだったり、守備だったりで頑張ることを意識した」

 ここ2試合は献身的な守備でチームを支えてきた岡崎だが、もちろんFWとしてゴールへの意識も失っていない。ただ、彼の狙いは得点だけでなく、もう少し高いところにある。

 マインツ時代は1トップとしてプレーし、相手DFラインの裏をとることに集中していた。その当時は、「常に裏を狙え」と指示を受けていたという。しかし今の役割は、2トップの一角のセカンド・ストライカー。マインツ時代よりも自然と守備の比重は高まり、同時に「結果」を残すことも追い求めているのだ。「ボールを奪われたら、自分が最初に反応して奪い返しに行くよう心がけている。味方が困っていたら、サポートにも行く」と語るように、レスターでのプレーは広範囲に及び、マインツの時とは「全然意識が違う」(岡崎)という。ここに、FWとしてゴールを挙げることの難しさがある。

 また、少し乱暴な言い方をすれば、ゴールは周囲との相互理解、連係が深まってこそ生まれる。「周囲に活かされる」タイプの岡崎なら、なおさらのことだろう。ボーンマス戦でも味方のクロスボールにバックステップで敵のマークを外したり、カウンター時に身体を急転換させてスペースへ突進したりと、ゴールへのトライは続けていた。しかし、周囲がその動き出しをまだ感じ取れていないシーンが目立つ。チームメイトとの連係を極めるには、もう少し時間がかかりそうだ。

 だが、岡崎に焦りはない。献身性や守備の持ち味で貢献し、そのなかで結果を追い求めていくプレーを続ければ、自身の評価につながると強く信じているからだ。

「ゴールというのは、僕があがいても何かが変わるわけじゃない。なので、僕が今やっていることを続けることのほうが大事。結果を出さないと評価されないと思われるかもしれないけど、今のプレーを続けたほうがいいと思う。続けることが今年のテーマ」(岡崎)

 入団会見時に「いろいろなものを捨ててやって来た。もう一度、いろんなことを取り入れたい」と語っていた岡崎。はたしてマインツ時代の1トップから、彼はどんなFWへと進化していくだろうか。

田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke