映像化権利発掘、How much!? :「ATARI GAME OVER」への道

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編集部より:この連載は1990年代以降ゲーム業界を渡り歩いた黒川文雄さんが往年の名ゲームメーカー、ATARIのゲームビジネスを検証するドキュメンタリー「ATARI GAME OVER」の日本語化に奔走する物語です。懐かしのゲーム機やゲームソフトだけでなく、アタリの創業者(正確には共同創業者)であるノーラン・ブッシュネル氏に突撃取材を敢行するなど、この連載だけでしか読めない内容を10回に分けてお届けします。今回は第3回。連載のまとめページはこちら。

皆さんは、一般的な洋画の権利買い付けの値段をご存知でしょうか。もちろんケースバイケース、ピンからキリまであります。

まず、その権利の中身ですが基本はオールライツと称して、劇場映画配給権、ビデオ化権(現在はDVD/BDのセル・アンド・レンタルを含みます)、テレビ放送(こちらは地上波/衛星波)、配信権(こちらはオンデマンド配信系で、有料の加入者向けSVOD、無料放送のFVOD)などがあります。この中で現在一般的に収益化が可能なものが劇場配給とビデオ化権でしょう。

一般的な洋画の権利料ですが、独立系の制作会社が製作した洋画で全国公開モノの規模で1ミリオンというクラスが多いのではないでしょうか。つまり1億円強という金額レンジです。

ただしキャストや監督によって大きく変動しますので、あくまでも目安です。メジャー系のユニバーサル、ワーナーブラザーズ、パラマウントなど日本にブランチ(支社)があるケースはケタ違いの作品ばかりですが、このあたりのものは除外しています。

ただ近年は邦画が完成度に関わらず持て囃される傾向にありますので、洋画の権利料は一般的にはダウントレンドと言われています。そして、気になる「ATARI GAME OVER」の権利料ですが......正確な金額はお教えできませんが、高くはありません。私個人としても購入できるレベルです。・・と言ってもわからないと思いますので、参考までに、給与の3~5ヵ月分くらいというヒントにしておきましょう。

ちなみに僕の給与はみなさんが思っているほど高くはありません。(苦笑)ご想像にお任せします。

さらに、今回は、老舗の映画会社・日活との共同買い付けで権利料を等分負担しています。当然ながらかかる費用や売り上げも等分です。小さい製作員会方式と言ってもいいでしょう。

コンテンツの権利購入ができたら、次は日本版DVDに向けてのパッケージ製作に取り掛かることになりました。実はこのあたりは権利購入前からイメージしていたものがありました。それはATARIのゲームのパッケージを模したものがいいのではないかということです。

極端に『E.T.』のゲームカートリッジ発掘モノという側面だけが取り上げられるのではなく、ひとりのクリエイター(ハワード・スコット・ウォーショウ氏)の人生のドキュメンタリーというコンセプトがありましたので、パッケージはできる限りシンプルでありながらも、ATARIマニアの気持ちをくすぐるようなものをイメージしていました。

使用したのはATARIのイメージカラーと言われた「赤」、DVDパッケージの基本デザインはATARI 2600の紙パッケージの雰囲気、使用したフォントは旧ATARIゲームで使用されていた丸みを帯びたものを使用しました。

しかし、この映像のまま日本語字幕をつけるだけでいいのか? というのが次の課題でした。自分だったら買うか? ということを自問自答し、やはり日本版ならではの特典を付けようと考えました。

そこで思いついたのが、アタリの創業者(正確には共同創業者)ノーラン・ブッシュネル氏にインタビューをしたいと思ったのです。アメリカのゲーム業界の創業第一世代です。日本でも第一世代が徐々に引退し始めています。

話を聞けるうちに聞いてみようと思ったのは必然です。しかし、どうやってブッシュネルさんにアプローチをしてアポイントを取るのか......それは、2015年1月のことでした。ブッシュネルさんへのアポ取り、なんとこれから4か月を要するとはその当時は想像すらしていませんでした。

(次回へ続く)

筆者より:「ATARI GAME OVER」特別上映会を9月5日に開催します。参加者募集中!

「ATARI GAME OVER」日本語版予告編 

黒川文雄(くろかわ・ふみお):1960年、東京都生まれ。音楽ビジネスやギャガにて映画・映像ビジネスを経て、セガ、デジキューブ、コナミデジタルエンタテインメントにてゲームソフトビジネス、デックス、NHNJapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどに携わり、エンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。顧問多数。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。株式会社ジェミニエンタテインメント 代表取締役「ANA747 FOREVER」「ATARI GAMEOVER」(映像作品)、「アルテイル」「円環のパンデミカ」他コンテンツプロデュース作多数。