小中学校の2学期制は何のために、そして誰のために導入されるのだろうか。
前回触れたように、2学期制のメリットとしては、「授業時間が確保できること(年間で10−30時間増)」、「前期の途中に夏休みがあるので、体験学習や学び直しができること」、「学期が長期になるため、教育活動が無理なくできること」などがあげられている。

授業時間数は増える?

 まず、「授業時間が確保」という点である。たしかに、2学期制の導入で、始業式と終業式が1回ずつ減るので、その2日分の授業時間数が増える。学校教育法施行規則によると、年間授業時間数は小学校で782−945単位(1単位は45分)だから、2日分の授業で10−12単位(約1%)ほど増える計算になる。しかし、それは「インフルエンザで2日も学級閉鎖になればなくなってしまう」程度の数でもある。

 渋谷区教育委員会は区立小中学校の授業時間を増やしたいと考えている。そのためのひとつの方策が2学期制の導入であり、「週5日制」の採用で減った授業時間数を取り戻して、「学力低下を招いた」との批判を払拭したいというわけだ。区教育委員会の意向を受けて各学校は、2学期制の導入と同時に、長期休暇明けや直前期に行っていた短縮授業を止め、「これ以上増やせないところまで」授業を増やすことで対応しようとしている。猿楽小学校の相川哲也教頭は「休み明けにたくさん授業をしても集中できないと思うが、仕方がない」と苦笑いする。

学び直しの効果は?

 「学び直し」という点ではどうか。渋谷区立の全小中学校では05年度、休暇期間中の「学び直し」のために補習クラスを開く予定だという。04年度に試験的に2学期制が導入された4つの小中学校では、小学校低学年では約3分の2の児童が補習クラスに参加したが、塾通いの多い小学校高学年や中学校では参加率はぐっと下がったとのこと。強制的に補習クラスに参加させるわけにはいかないし、補習が必要な児童が必ず補習を受けるという保証もない。そして、補習がどの程度の学習効果を持つのかもまだ示されてはいない。

 さらに、「学期が長期になり、教育活動に無理がなくなる」という説明にも疑問符が付く。学期途中に夏休みがあるため、授業の流れが分断されてしまうという欠点もあるからだ。たしかに通知票は年2回に減るが、前期が夏休みで分断され、後期が正月休みで分断されるので、先生や児童・生徒からみれば「4学期制」にも見えるかもしれない。

「結局は大人の論理でしょうね」

 富谷小学校の河村久校長は「4年前の週休2日制導入の時は、行事などを減らすなどして苦労したが、今回の制度変更は区切りが変わるだけで、学校運営上それほど大変というわけではない」と話す。

 河村校長は3学期制の中学から2学期制の高校へ入学した経験があり、「別段、戸惑うことはなかった。子どもたちは別に気にしないでしょう」という。保護者への説明会を開いたときにも、成績評価の回数が減ることに不安の声が聞かれたが、家庭訪問や三者面談で個別に話をする機会が増えるという説明をしたところ、保護者たちは納得したという。

 なぜ2学期制なのかという記者の質問に対して、「結局は大人の論理でしょうね」とある校長は答えた。「制度を変更することで特別な不都合が生じるわけではないので、あえて反対しようとは思わない。」しかし、2学期制導入は、あきらかに「学力低下」や「ゆとり教育の弊害」への対応策だと考えられるからだ。

個人的な意見だとしたうえで、その校長は、学力低下の問題は、「区切りや制度の変更ではなく、個別の児童・生徒にどう対応していくかという学校運営と教師の意識で解決すべきだ」と話してくれた。大人の論理で子どもたちの教育制度をかってにいじくり回すようなことをしてはいけない、ということだろう。【了】

特集・小中学校の2学期制(上)