俳人・堀本裕樹 × スポルティーバ編集部
【第1回 スポルティーバ句会】
スポーツ俳句への誘い(4)

 約2時間にわたって行なわれた第1回スポルティーバ句会。スポーツと俳句という新しい遭遇に、参加者たちのやりとりは尽きることなく、さまざまな意見が交換された。

 出句されたものは全部で25句。自由な発想、自由な手法で編まれた句は、スポーツ関係者ならではの独自の光を放ち、この句会を彩った。

堀本:みなさん初めてとなる句会をやってみましたが、感想を聞かせてもらえますか。

高森:講評では人によって見方が違うんだなと感じましたし、作者の抱いていた情景を改めて聞くと、よりその俳句が深く見えて、おもしろかったですね。また、スポーツとの関係性を見ると、"動き"というものを非常に感じました。例えば、市橋さんの『夏の空走りながらも陰探す』とか、スポーツならではというか、俳句が動いている感じがした。個人的に"試合後"の感覚ってとても好きなのですが、感情や情景も含めて落ち着いた風情があって、俳句ととても相性がいいのではないかと思いました。

堀本:確かに試合後という感覚は、俳句との相性はいいかもしれませんね。

市橋:今日、みなさんの俳句を拝見させていただいて、私はこれまで俳句に対して堅いイメージで接していた気がします。みなさんユーモアにあふれていたし、もっと気軽に触れてみたほうが楽しいのかなって。高森さんの『テニス部のあの子の汗はきっと甘い』は、選句されるとは思ってなかったですからね(笑)。

高森:えっ、そうだったんですか!(笑)

市橋:こんなかわいい句でもいいんだって、すごい新しい発見でしたよ。スポーツという部分で見ると、アスリートは試合に至るまで、いろんなドラマがあります。それを十七文字の短い文章で伝えることができるんだと感じられたのは収穫でしたし、深い世界だなと思いました。

杉山:スポーツライターとして思ったのは、スポーツの迫り方には、いろいろな角度があるわけですよ。しかし、どうしても結果に左右されがちなことを書かなければいけません。そういった意味で俳句というのは、勝敗に関係なくスポーツそのものの魅力について語ることができるものだということに気づかされました。通常のメディアのような俗世界と完全に違うゾーンにあるスポーツ表現という感じがしました。

高森:杉山さんの『凡戦やツバメがピッチを賑わせる』という句がありましたけど、これはどんなスポーツかも明確にされていないし、勝敗もわからないんだけど、確かにスポーツの本質的な魅力を感じ取れた作品でしたね。

堀本:スポーツを俳句にすると、人間の普遍的な営みのようなものが象徴的ににじみ出てくるような感じがしました。だからどんなスポーツであっても人間というものが見えてきて俳句としての魅力が立ち上がっていったような気がします。

杉山:こういった機会ならではのスポーツに関する話が聞けて新鮮でしたね。普段は目的を持ってアスリートに話を聞くので、それとは違いいろいろな意味で勉強になりました。

堀本:じゅんいちさんはどうですか?

じゅんいち:すごくおもしろかったですね。やったことがなかったので感覚だけで書いたんですけど、意外と大丈夫だったと。(ここから本田圭佑のモノマネで)細かい言い回しとか指摘されたところはテクニックの部分なので、今後伸びて行く部分。基本的には自分の感覚だけで、気軽にやれるんだなということがわかりましたし、伸びシロも感じられました。

堀本:その言葉を待っていました(笑)。ではここで、この句会を傍らで見ていたスポルティーバの内山編集長にご意見をいただきたいと思います。

内山:初めての試みでどうなるかと思っていたのですが、この短い時間で、みなさんの俳句に対する理解が深まったと感じられました。もし次の機会があれば、もう一段階レベルアップした俳句が詠めるのではないかと将来性を感じましたし、やはりスポーツという自分たちのフィールドで詠むことができたのが上手くいった要因でしょう。予感はしていましたが、スポーツと俳句というのは相性が良いなと。これを続けていけば、さらに良いものが生まれ、新しい世界が広がっていくような気がします。

堀本:おっしゃるように、『夏の空』『汗』というお題が、スポーツというフィルターを通すことで、これまでとは違う趣のある俳句になったと感じましたね。

内山:スポーツは季節と密接な関係にありますが、これが夏ではなく、秋や冬だとまた違った見方や感じになるのでしょうね。

堀本:ええ。例えば『秋の空』だったら、今回とはまったく違う情感が出てくるはずです。そこも含めて、今後も句会を楽しんでくれたらなと思っています。私自身、非常に楽しい句会でした。俳句はもちろん、プロのスポーツの現場にいる方々から普段は知り得ない話を聞いたりし、そこでまたグッと講評が深まりました。とても勉強になりましたし、また次回があることを願い、今日はどうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

高森:ところで、じゅんいちさんは、もっと本田選手に寄せてくると思ったんですけど、そうでもなかったですね。

じゅんいち:いや、それやっちゃうと選句のときにすぐバレちゃうから止めておいたんですよ。だって『伸びシロ』とか入れたらすぐわかっちゃうでしょ(笑)

 第1回スポルティーバ俳句はこれにて閉会。手探りで始まったが、参加者たちもそれぞれ手応えを感じたようで、次回も参加したいとの声が挙がった。読者の方々も、敷居が高く感じていた俳句が身近に感じられたのではなかろうか。スポルティーバでは今後も"スポーツ俳句"に注目していきたい。
(おわり)

【profile】
堀本裕樹(ほりもと・ゆうき)
「いるか句会」「たんぽぽ句会」主宰。創作の傍ら、老若男女幅広い層へ俳句の豊かさや楽しさを伝えることをテーマに活動中。近著は又吉直樹氏との共著で『芸人と俳人』(集英社)。又吉さんに俳句の基本を教える形で、2年にわたって対談した内容をまとめたもの

石塚 隆●文 text by Ishizuka Takashi