個性派俳優として人気を博する古舘寛治と深田晃司監督

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 俳優の古舘寛治と深田晃司監督が29日、大分県由布市で開催された第40回湯布院映画祭特別上映作品『歓待1.1』シンポジウムに出席。海外で注目を浴びた同作の背景について語った。

 本作は、世界50か国以上の映画祭で上映され、話題を集めた『歓待』(2010)のディレクターズカット版。「元の『歓待』も僕が編集をしているので、お遊びみたいなものなんですけどね」と笑いながら切り出した深田監督は、「台湾の映画祭で上映するために新しくならないかと映画祭側から提案されて。それならばと最初に編集で落としたシーンを増やして、さらに構成やテンポをよくしようと細かく刈り込んでいった。結果的に元の作品より数秒短いバージョンになってしまいました」と解説する。

 下町で印刷所を営む小林家のもとに、突如フラリと現れ、住み着いてしまったうさんくさい訪問者・加川(古舘)。彼によってかりそめの平和をかき乱された小林家の物語が、やがて外国人移民の問題へと変貌していく……。この流れについて「2007年頃、ある社会活動家から、在特会(『在日特権を許さない市民の会』)によるヘイトスピーチの抗議デモをやるから、その様子を撮影してほしいと頼まれた」ことがきっかけで外国人排斥問題に興味を持つようになったという深田監督。

 しかしこの日、観客からは「外国人移民が集合体でしか描かれておらず、描き方が浅いのではないか」という指摘も。しかし深田監督は、「確信犯的にそうしています」と力強く返答。「たいてい排除される側の移民というのは、かわいらしい女の子だったり、もしくは人柄がいい人物だったりが描かれることが多い。しかし、個性によって選別されることがいいのか。いい外国人だったら助けるのか、ということが疑問だった。だから、本作ではあえて外国人の個性を描かないことにしました」と説明する。

 しかし異邦人を抽象化したことによって、古舘は外国人の友人から「逆に人種差別的な描写じゃないか」と言われたこともあったという。深田監督も「異邦人を抽象化したことで、ヨーロッパでの反響が大きかったんです。ちょうど2010年ごろというのが、ヨーロッパの右傾化が進んでいて、外国人に排他的な時期で。だからヨーロッパの映画祭などにも多く呼んでもらえた」と『歓待』が外国で注目を集めた背景にも言及した。(取材・文:壬生智裕)