体の痛みは"大事なサイン" vantherra/PIXTA(ピクスタ)

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 「特定健診」、いわゆる「メタボ健診」は、生活習慣病などの予防を目的に2008年から始まった。40歳以上の人が、年に1度無料で受診できる。気になる数値を見るのが怖くて、敬遠気味の人はいないだろうか。

 メタボリックシンドロームは、さまざまな病気を引き起こす。最も怖いのは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心臓疾患。直接命に関わる病気だ。

 日本人の死亡原因の3大疾患のひとつで、平成25年には19万6547人が心疾患で亡くなっており、死因の割合の15.5%を占めている(平成25年人口動態統計年報の概況/厚生労働省)。

 男女別に見ると、急性心筋梗塞の死亡数は、男性23497、女性19132(「死因簡単分類別にみた性別死亡数」人口10万対/平成22年人口動態統計年報)だ。中高年男性が比較的多く発症し、女性は75歳以降にぐっと増える。

 では、メタボでもなく危険な年齢に達していない女性なら無縁なのか。そうとはいえないのだ。

実録! 突然死を覚悟した瞬間

 ひとつ年上の夫、愛犬2匹とともに東京の郊外で暮らすNさんは、小柄でスリムな57歳の主婦。毎日の家事や犬の散歩のほか、フランス語やフラワーアレンジメントを習ったり、スポーツジムに通ったり、活動的な日々を送っていた。

 ある休日、突然、胸と背中にこれまでに経験のない痛みが襲った。直感的に「循環器系の痛みかも」と頭をよぎったが、鎮痛薬のロキソニンテープを背中に貼って横になると痛みが和らいだ。1時間ほど休んだ後は、いつもと変わりなく一日が過ぎた。

 翌朝、まだ胸の奥には、痛がゆいような違和感があったが、予定があったのでそのまま外出した。だが、電車内でバッグを持つのもつらくなり、最寄り駅まで戻って総合病院へ直行したが、循環器科がその日は休診だった。やむなく、タクシーで循環器科のある別の病院に向い、受付して順番を待った。

急変して緊急手術に!

 30分ほどで名前を呼ばれ、診察室へ。脈と血圧を測った医師は「いずれも正常」と診断したが、念のためレントゲンと心電図の検査を行うことに。心電図を撮った直後、スタッフの顔色が変わった。

 「冠動脈が1本完全に詰まっている。このまま手術室に移動します」と告げ、慌ただしく準備を始めた。Nさんはストレッチャーに乗せられて運ばれた手術準備室から、とりあえず状況を夫に電話連絡。あとは、医師に任せるほかない。

 すぐに手術室でカテーテル処置を開始。ところが、造影剤を入れても詰まった血管が映らない。医師同士で、あれこれ話しながら閉塞した血管を探しているが、どうしても見つからない。

 すでに処置が始まってから2時間近く経過。Nさんは「時間切れでこのまま死んでしまうかも......」とぼんやり思ったという。幸いにも、梗塞している箇所が判明し、カテーテルでステントを設置した瞬間、血流が一気に込み、痛みが消えた。

 一命を取り留めたNさんは2週間後、無事に退院した。

女性は痛みを我慢する傾向にある

 心筋梗塞のリスクファクターは、肥満や高血圧、高コレステロール、喫煙、飲酒、家族歴などだ。確かにメタボの中高年男性の発症率は高い。だが、Nさんのように、該当しない人でも発症することがあるのだ。

 宝塚出身の女優・天海祐希も一昨年、心筋梗塞を患った。あんなにスリムで40代なのに。Nさんの主治医は「ストレスが引き金になることもある」と話し、Nさんは直前に夫婦喧嘩をしたことを思い出した。

 男性に比べて、女性は痛みに強いといわれる。少々のことは我慢して、大切な"体からのサイン"を見逃すことがある。Nさんは、まさにそのケースだ。受診したのも、発作の翌日だ。

 主治医によると「男性なら最初の発作で救急車を呼んだだろう」と言われたほど。心筋梗塞になった女性は、男性よりも予後が悪いケースが多いそうだ。

 その後、Nさんは薬物治療と並行して毎週リハビリを行い、半年後に再度カテーテル検査を受けた。血管の閉塞は他にも見られたが緊急性はなく、定期検査で状態を見ながら治療することになった。Nさんは、この病と一生つき合っていく覚悟だ。

 くれぐれも、それまでに経験のない痛みは放置せず、すみやかに医療機関を受診することをお勧めする。
(文=編集部)