欧州の新シーズンが始まった。情報はネットを通してさみだれ式に流れてくる。今季の香川の調子はよさそうだとか、日本人の海外組の情報も続々舞い込んでくる。いつものシーズンと同じように。

 一方で、9月3日に行われるW杯2次予選カンボジア戦のメンバーも発表された。顔ぶれはいたって普通。特段サプライズはなかった。

 世の中は通常と変わりなく、穏やかに流れている。0−0で引き分けたシンガポール戦、最下位に終わった東アジアカップを経ても、日本代表を取り巻く状況に、慌てている人は少なそうに見える。

 問題から目を反らそうとする傾向が、日本人にはあるのではないだろうか。報道を見ていると、そうした気持ちになる。

 今週の火曜日と水曜日、チャンピオンズリーグの本選出場を懸けたプレイオフ第2戦が、欧州各地で行われた。その結果、32チームすべての顔が出そろった。木曜日にモナコで抽選が行われた組み分けについての報道は、ネット等を通してそれなりに目に止まったが、日本人にとってチャンピオンズリーグにまつわる重大なニュースは、もっと他にあったはずだ。

 プレイオフで、バーゼルとスポルティングが、マッカビ・テルアビブとCSKAモスクワに、それぞれ敗れたことだ。柿谷が所属するバーゼル、田中順也が所属するスポルティング。両チームの中でこの2人が、重要な位置を占めているとは言い難い。このプレイオフでもベンチ外だったが、本大会に出場すれば、出場のチャンスはあったかもしれない。

 その可能性が一切、消えたわけだ。それは、今季のチャンピオンズリーグに出場する日本人が1人もいなくなったことを意味する。

 チャンピオンズリーガー0は、稲本が初のチャンピオンズリーガーに輝いた01〜02シーズン以降、これが3度目。05〜06シーズン以来、10シーズンぶりの出来事になる。出来事と言うより事件と言っていいと思う。

 だが、これを報じたメディアを確認することはできなかった。分かっているはずなのに、あえて目を伏せスルーした。その一方で、翌日の木曜日、ヨーロッパリーグのプレイオフ第2戦、ドルトムント対オッド戦の様子は、しっかり伝えている。
「香川2ゴール! 3試合連続だ!」と、満面の笑みを浮かべたくなるような華々しい見出しを立てている。

 そのことと、日本人のチャンピオンズリーガーが10年ぶりに誰もいなくなったことと、どちらの方が重大か。考えなくても分かる話だ。明るい話題は、さして重大な試合でなくてもせっせと報じ、片や、暗く落ち込みそうな話題は、いくら重大でも伝えない。世の中が上手くいっているように報じたがるメディアの姿が、そこにハッキリと見て取れる。

 チャンピオンズリーガー0は、日本代表にも大きく関わる問題だ。一昨シーズン調べたところ、チャンピオンズリーグの本選を戦った選手がいる国は67か国に及んだ。その中には、欧州以外の国も27か国含まれていた。

 そこからいま日本は、外れた場所に置かれている。それこそが、日本の現在地なのである。「ユーロリーグのプレイオフで香川がノルウェーの弱小チームから2ゴールを奪った!」と喜んでいる場合ではない。

 今季、たまたま何かの間違いで0になったというなら、いいだろう。来季、確実に何人か現れそうなら、そう悲観的にならなくてもいいが、可能性が低い場合は別。深刻な問題として捉えなくてはならない。ハリルジャパンの最近の戦績以上に、だ。

 確実な選手は誰もいない。香川でせいぜい50%。その他の選手は、10%〜20%だ。香川を含め、その大抵は横ばいか、下降線にある。売り出し中の武藤にしても、チャンピオンズリーガーに上り詰めるには、もう一回りも二回りも成長する必要がある。海外組になるのは時間の問題と見られている宇佐美もしかり。