写真提供:マイナビニュース

写真拡大

8枚組の写真で競うのが写真甲子園のレギュレーションだが、審査委員長の立木義浩氏いわく、「8枚組の中において、1枚だけ突出した写真を見せてもらうのもこっちの楽しみ。驚きがある写真も出合えるのが嬉しい」。ということで、本稿では3日間の公開審査会で好評を得た写真をピックアップしてみたい。

○初日「完璧なフレーミングは"飽き"がくるんだよね」

大会初日は、いつもと違う北海道の環境、撮影の時間制限など写真甲子園のレギュレーションもあり、エンジンがかからず、実力を出し切れないチームが多かったようだ。そんな中、とくに印象に残ったのがこちらの3作品だ。

北海道岩見沢高等養護学校は初日、『私たちの視線』と題したモノクロの8枚組を提出した。その1枚目がこの作品だ。フォトテクニックデジタル編集長の藤井貴城氏は「視線が違うなと感動した。明日からもあなたたちの視線でいくといいと思う」と太鼓判。

立木氏は「なんだかよくわからないんだけど気になる写真。左は老人の手、右は部員の手、ここに"時間が写っている"」と評し、「この視線、まなざしを3日間を続けてもらいたい」と勇気づけた。

沖縄県立浦添工業高校の『仕立てる』からは、立木氏がこの8枚目について、「鏡に映った瞬間を撮ろうっていう思い切りがいい。フレーミングがゆるいのがいいよね。完璧なフレーミングは"飽き"がくるんだよね」と既成枠にはまらないセンスを評価。「明日も"安定から脱却する"という意識で撮ってくれるといいね」と期待を寄せた。

○2日目「昨日の凡庸なポートレートから、どうして今日こんなすごい写真が!」

大会2日目のテーマは「風景」、しかし天候は雨。そんな難しい条件での競技となったが、それでも被写体を見つける力を発揮し、審査委員を喜ばせた作品がいくつも出てきた。

香川県立坂出商業高校の作品『うつる』について、写真家の長倉洋海氏は、「5枚目のキノコ、光あてたのかな? それがよかった。プリントしたものは周辺(の光)が落ちていて、物語が始まる感じ」とコメント。8枚組全体としても「あなたたちの感性をきちっと写した、それが相手によく伝わった」と高く評価した。

立木氏も「キノコ、美しいですよね。後ろのボケ具合、グリーンもきれいに写っている。濃度の強さから、北海道のよさが伝わる」「昨日の凡庸なポートレートから、どうして今日こんなすごいのが撮れるの!」と感動した様子だ。

埼玉栄高校の『風化 〜時が描いた風景〜』は、廃墟となった農家の古い家屋を撮った作品。そのラストを飾ったのがこの猫の写真だ。審査委員からは8枚組として、テクニック、構成などあらゆる面でかなり高く評価された。立木氏も「最後にオチとして、『風化なんかしとらんわい』と猫が出てくるのもいい。とても素敵でした」と講評を結んだ。

○3日目「群を抜いてスゴい。これもう最高でしょ!」

大会を通じて急成長をみせるチームも現れる写真甲子園。最終日の作品は審査によるポイントが1.5倍になるため、最終結果を大きく左右する。優勝争いを意識するチームからも、自分たちのベストを尽くそうと踏ん張っているチームからも秀作が飛び出した。

優勝を決定づけた沖縄県立浦添工業高校の作品『日常』。その8枚組において、立木氏に「8枚の中でも群を抜いてスゴい。これもう最高でしょ!」と大絶賛されたのがこの写真だ。「子供たち本当にイヤイヤの顔でね。これが真実、リアリティです」とは立木氏。写真家の竹田津実氏は、「人物の配置、ちょっとした仕草をとらえる瞬間。独特なものを持っている」と沖縄の高校ならではの感性に脱帽していた。

「審査委員全員注目したのが8枚目」(藤井氏)と言わしめたのが、富山東高校『明日も、きっと』のラストを締めた1枚。「三者三様でとてもよい。偶然性も実力のうち。あらかじめ作戦を決めるとこういう写真は撮れない」(同)。「スナップショットの計算できない瞬間。真ん中の子の変顔と左側の笑顔の子を生かしているのは右端の子だよね。この真面目な顔がなければ、他の2人は生きないよね」とは立木氏の評。

和歌山県立神島高校は3日間の作品をすべてモノクロで押し通した。立木氏も「最初からモノクロで撮るっていう度胸、心意気がいいよね」とその姿勢を認めていた。この1枚については、「ホームステイ先の2階、利用できるものはすべて利用する。その厚かましさが成功のもと。引いてちゃ撮れない」と写真を撮る者に必要な心構えを伝えていた。

また、立木氏は「この写真とアップの写真を差し上げてくださいね。(人に)お願いして撮った写真は、できるだけ早いうちにプリントして差し上げるのが喜ばれる」とも。撮ったら撮りっぱなしになりがちなデジタルの時代において、ハッと気づかされる一言であった。

(阿部求己)