金曜日の午後11時30分からBS ジャパンで放送しているバラエティ「メンズ温泉」。メンズ5人がワイワイ温泉に入りハダカになるのをポーッと眺め、癒されていく番組です。「メンズ温泉」はどのようにして生まれたのか? テレビ東京の五箇公貴プロデューサーに聞いてきました。


BSの番組を見てもらうには、相当変なことをやらないといけない


──「メンズ温泉」の企画はどうやって生まれたのでしょうか。
五箇 偉い人に「BSのこの枠で、なにか企画を出してみない? DVDや配信といった、二次利用もできるもので」と声をかけられたのがきっかけです。そこで思い返したのは、以前松尾スズキさんと組んでやったBSのレギュラー番組「美しい男性!」。美男子を集めて芸人っぽいことをやるコント番組で、すごく面白いことをやっていたんですが……正直、こちらが思っていたよりも届いていない感じがしていて。
──狙っている層に届いてない、ということですか?
五箇 というよりも、やっていること自体を知らない人が多かった。すごく一生懸命やってるのに、あまり反響の声をきくことも少なくて、BSは視聴率も出ませんし。BSの番組は地上波と比べると、反響が本当に少ない。その中でまず「見てもらう」には、相当変なことをやらないといけない。さらに言うと、より広い層に向けて作る必要がありました。
──「メンズ温泉」のコンセプトは、「すべての女性に捧げる」癒し番組ですね。
五箇 とはいえ〈変わったことをする〉ということはある程度ターゲットを絞ることになる。そこで考えたときに、僕が得意とする〈サブカル〉といったエッジの効かせ方でなく、〈ターゲットを女性に限定する〉という絞り込み方を考えました。その上で、「すべての女性」というより広い層に向けて作ろうと思いました。僕の周りには、「旦那はかっこよくないし、会社の上司はパワハラがきついし、子育ては大変」と疲れている女性がけっこう多くて、そういった女性に見てもらえればと。僕の妻含めて(笑)。
──「すべての女性の癒し」が「男性のハダカ」につながったのはなぜですか?
五箇 去年、色々な男性アイドルのライブによく行ってたんですよ。そこでメンバーがハダカになった瞬間、女の子たちがみんな「キャー!!!!」って言うんですよね。「これだ!」と気づきました(笑)。でも、それを普通にやっても面白くないだろうなと思っていて。そこで考えたのが「温泉」です。
──アイドルとかが入るのはあっても「男が入る」のを推しポイントにするのはけっこう珍しい気がします。
五箇 そうですね。番組の1コーナーで「イケメンが温泉に入る!」というのはありますが、30分まるまるやってるのはありません。「これは発明かもしれない!」と企画書を出してみたら、BSジャパンの方々が「バカだね〜、お前!でもこういうのないよね」と面白がってくれた。


──てっきり「男のハダカなんて見て何が楽しいんだ?」って反応があったのかと思っていました。
五箇 実際そういう人もいました。でも企画書でも「女性に捧げる」と、あくまでも女性に向けたものと強調していたので、なんとかわかって頂けたようです。
──『男をこじらせる前に』の湯山玲子さんや、「ポツドール」「ブス会」のペヤンヌマキさんといった、濃い女性陣も参加しています。
五箇 湯山さんは、一緒にお茶してて「女性のための、男が行く温泉番組を今企画してるんだけど、湯山さんから見て面白いと思う?」と話をしたところ、「それ、超イイ!」と太鼓判を押してくれたんです。なので正式に企画が通って、一緒にやることになりました。ペヤンヌさんは、それこそ松尾スズキさんのメルマガで松尾さんと対談とかしていて、面白い人だなぁと思っていたんです。そこへ今回の制作を一緒にやっているテレコムスタッフのプロデューサー、田川さんから提案があり、是非にと。結果、〈サブカル〉感が漂ってますね。(笑)。もう病気……運命ですね!

最初は「この5人で大丈夫かな……」


──「メンズ温泉」は、オーディションで選ばれた5人が温泉に入る番組です。第3回以降は温泉ですが、第1回と第2回はオーディション回。
五箇 予算も少ない中で、田川プロデューサーからの提案もあって。視聴者に「私が選んだあの子が残って、レギュラーになった」みたいな、「育てる願望」を感じてもらえればいいな、と。それでオーディションを見せることになりました。そっちのほうがいろんな男の子の美しさも拝めますし(笑)。
──選ばれた5人は、クラさん(倉貫匡弘/俳優)、タケル(武尊/K-1ファイター)、ヤス(田中康寛/俳優)、タカ(加藤貴宏/俳優)、モリショー(大森翔太/作家志望のフリーター)。バランスがいいなと思いました。最終選考は、5人のバランスを考えたんですか?


五箇 いや、本当に何の作意もなく、得票順で決めました。最初は「この5人で大丈夫かな……」と心配でしたね(笑)。たとえば女性票1位だったヤスの魅力って、男からするとオーディションで見たくらいじゃわかりにくいんですよ。ヤスの「ほっとけないかわいらしさ」は、男から見ると「めんどくさいやつ」と映ってしまう。モリショーも「本当にコイツを入れて大丈夫?」と思ったけど、強烈に推す人もいました。
──本当に得票順だったとは……。バランスのよさは偶然なんですね。
五箇 必然的にそうなりました。ただ、この5人って、「完全なビジュアル担当」、戦隊で言うとハンサムでクールな「ブルー」のポジションがいないんですよ。クラさんは大人の色気、モリショーは文系オタク、タケルは肉体、ヤスはムードメイカー。タカはブルーにするには明るいキャラクター。……でも面白いことに、やっていくうちにタカにブルーのポジションが求められるようになって、タカもその自覚をしてきたんです。番組と合ったんでしょうね。

台本なし、「何もするな」のロケ


──「メンズ温泉」の5人は毎回自然体に見えますが、実際はやっぱり台本を渡されているんでしょうか?
五箇 ないですよ! 制作側に「これをやります」「ディレクターはこれを撮りたいです」といった指針はあるんですが、ロケをやる本人たちには一切見せない。「今から壁ドンいっとく!?」みたいな指示はしますけど、本人たちはどこで何をやるのかわかっていません。全部決めでなく、自主性も活かすので生っぽさがでるのかなと。
──生っぽさ。
五箇 はい。いつも伝えてるのは「何もするな」。台本を渡せば、彼らはたぶんちゃんとやるんですよ。でもこの番組では「レポートしよう」「面白がらせよう」「笑わせよう」というのは一切やめて、まずは温泉旅行を楽しんでもらいたいので。
──そうはいってもカメラが回っている前でタケルやモリショーも自然体なのは驚きです。モリショーは一般人ですよね?
五箇 コンビニ店員。彼は度胸があるんですよ。ふつう、言われても「メンズ温泉」のオーディションにはなかなか出ないでしょ。ロケでも嫌がらないでちゃんとやる。タケルもモリショーも、きっと野心があるんじゃないかな。
──タケルはK-1の選手で「有名になりたい」と夢を持っていますし、モリショーは小説家になりたいと公言しています。
五箇 「村上春樹みたいな小説を書きたい」って、そんな大きいことを言えちゃう。彼は完璧に素人なのに、どんどんキャラが立っている。「ふつうのコンビニバイトの男の子」じゃあそうはならないから、きっと何か持っているものがあるんだろうな。タケルもモリショーも文句言わずにやりますし、すごくがんばりますね。


変わっていく男たち


──最近、モリショーの肉体がどんどん変わっている疑惑を持っています。腹筋増えていませんか?
五箇 そうなんです! さすが! 第5回でタケルから筋トレを教えてもらって以降、律儀にやっているみたいです。もともとないから変化が目立つ。
──プロデューサーから見て、オーディションの時と比べて、5人の印象は変化しましたか?
五箇 キャラは回を追うごとにだんだん出てきますね。タカは屈託がなくてイケメンで肉体もよくて、魔性の女……というか、魔性の男というか。クラさんは年長で影がある大人の男で、「男も嫌いじゃないよ」とちょっとBLも受け入れそうな感じ(笑)。タケルはまんま、やんちゃな弟。ヤスはどっちかっていうとちょっと冷めている存在で、モリショーが乙女。
──彼らのキャラクターが影響してか、「メンズ温泉」は時折ドラマっぽくなっている部分がありますよね。
五箇 当初はもっと温泉番組のフォーマットを前に出していこうと思っていたんですが、ペヤンヌさんディレクターの第4回の伊東温泉くらいからみせ方がどんどんドラマっぽくなってますね。第7回の伊香保温泉では「男2人と女1人で温泉に行った三人組が、複雑な三角関係みたいになるんだけど、最後男の子同士が楽しそうに会話してるのを見て、嫉妬する女子」みたいにもとれるというか。最後タカとタケルが夕涼みしているのをモリショーがちょっと遠めから見ていようか、という話になったんですが、モリショーの表情が面白かったんで長めに使ったら、結果そんな感じになってしまいました(笑)。


──めちゃくちゃ複雑です! 男が1人、女性役をやってるということですよね。
五箇 そういう風に僕らのちょっとしたいたずら心が視聴者の皆さんに色々と妄想していただくきっかけになったら面白いね!と思いながらやっています。

「メンズ温泉とBL」「女性向けコンテンツのポイント」「これからのメンズ温泉」についてうかがった後編はコチラ。


「メンズ温泉」ダイジェストムービー公開中!
第1回 オーディション前編
第2回 オーディション後編

(青柳美帆子)